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2F/当番ノート

はじまりのおわり おわりのはじまり

当番ノート 第7期

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日日すうすうとあふれてはこぼれ落ちる ことばのかずかず
ふつふつと現れてははじけて散っていく つぶやきのひびき

生まれてはいつのまにか消えていく 
忘れてしまう まぼろしだったかのように

それが 生きているっていうことなのかもしれないけれど

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それは違うとおもう 
やっぱりそれはちがうとおもう

でもきっとわからない
 
じゃあそれは
それで正しかったっていうこと

それが ただしかった っていうこと

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〈1/2〉
傷を受けたのは自分だけではなく
苦しみは必要で
怒りは長く続くものではないけれど
悲しみを忘れることはない。

不条理で身勝手で
捨てたり無くしたり失ったりしながら選び続け
幾ばくかの希望で心を支える。
しかしまたそれも永遠ではなく。

頭の中で反芻を続けた言葉はやがて自分を縛り付け
放出すればたちまち砕かれるだろう。

憤りを押し潰して沈黙を守り続けることが出来れば
頭上にうねる雲は
雷でこれ以上身を裂く事はしないけれど
それが正しいとは限らない。

私が思う朱色とは群青の事だとしたら
世の中の昼夜は逆転していて
夕暮れは清清しく朝日は切なく
私の思考の全てはひっくり返っている。

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〈2/2〉
それでも
またたきのあちら側では

花が咲き
子供が笑い
大道芸人が駒を回し
大人が宴に興じる傍らで
猫達は午睡し
川は変わらず流れ続けて
その全てを見下ろしながら
飛行船は時を止めて静かに横切る。

喜びが確かにそこに在ることを留め確かめるように。

心を揺り動かされる事はそこいら中に溢れていて
思っているよりもずっと世界は輝いて眩しく美しい。

相反するものは共に存在しなければ
お互いの意義を失うように
喜びの下で苦しみはそれを支えている。
恐れず流されず抗わず漂うようにして
水面下では行き先を見定め
必死に水掻きでもってかき続けるんだ。

いつかその波紋が広がり
あたたかいものを伝える大きな波に変わることを信じて。

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しあわせなゆめをみたあとは
なんだかほんのちょっぴり
さみしくなりますな

私のまわりををひゅるりひゅるりとまわっていたけど 
春のつむじ風に つつまれて
またたきする間に 去っていったよ
あれは なんだったんだろ

ナマエ、なんて野暮なものを知りたいのではなく
ただ感じることが出来ていればいいの、ね

またね

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古林
希望

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冬のおわりから春のはじまりまでお世話になりました。

アパートメント管理者のみなさん、滞在者のみなさん、
そして読んでくださったみなさん、本当にありがとうございました。

古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

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