20時を過ぎた頃、道の駅で寝ようとしていた。
新月の夜は暗く自転車で走るのはもう危険だった。
建物の影に寝袋を広げて寝ようとしたところで少し離れたところで花火をする若者の集団の中のひとりと目が合った、気がした。
急いで寝袋を仕舞いその場を離れる。
どうも道を間違えたらしくバイパスへ続く道しかない。
しばらくあたりを走り左手に抜け道を見つける。
砂利道の向こうに自販機がふたつ煌煌と光っているだけで他には何の明かりもない。
工事現場のような雰囲気で進むと次第になにも見えなくなった。
なにも、見えなくなった。
左手から荒れた波の音が聞こえる。
こんなに海に近かったのかと気付きすぐに怖くなる。
原始時代では夜の海は恐怖の対象だったのではないかと遠い過去を思う。
闇の中から海鳴りだけが聞こえる。
右後方からは大型トラックのエンジン音が迫ってくる。
国道1号線の下なのだ。
ヘッドライトの光すら見えないのに今にも轢かれそうな気持ちになる。
携帯電話のわずかな光で足下を照らしながら進んだ。
夜の闇はなにより深い
目の前にあるはずの自分の手すら溶けてなくなってしまうほどに。
——————————————–
去年の6月24日、ママチャリで横浜から名古屋まで旅にでました。
その1日目の夜の記憶です。