バスを待っている時に、家の方を見るとマルが見えます。
マルの方も私が見えているようで、こちらを見ています。
それだけなのですが、バスが来るまでのこの時間がとても好きです。
田んぼを一つはさんでバス停から見るマルはとても小さく、遠くにいるのが珍しくてしげしげと眺めてしまいます。
そのうち「おまえ、なんでそこにいるんだ?」とマルが不思議そうに吠えだします。
そしてひとしきり吠えると、マルもじっと見つめてきます。
繋いでいる鎖からマルが離れてしまったことが何回かあって、バス停からのマルの姿はその時のことを思い出させます。
逃げ出したマルは、姿が見える範囲をうろうろするのに、近づくとさっと遠ざかって捕まえるのにとても苦労しました。
バス停にいると私がマルから離れているのに、ときどきマルの方が離れていっているような感覚になります。
「早く捕まえにいかないと」と思いそうになります。
野に放つ いずれ戻って来るまでの犬の姿は指で隠せる 久石ソナ『北大短歌創刊号』