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絵を描いている時見ている時に、途中の状態、描きかけの絵がすごくいいなって思うことがあります。
逆に完成すると、途中の方が良かったなということも多いです。
なんで描きかけの絵って、あんなにいいんだろう。
ぼくは何となくだけど、それは「ひとけ」なのではと感じています。
技術的な方法論はもちろん至らないことの方が多いですが、
自分が絵というものを選択するにあたって、よく考えることのひとつが
絵とはなんだろうということです。
描きかけの絵には、完成した絵に比べて
人がその絵を完成させようとしている時間が、画面の中に溢れています。
何にしてもモチーフと作品の間には人が介しているものだけれど
絵というのは現実や夢があって、それに想いを馳せて人が時間をかけて再び書き起こすことなんだろうなと
描きかけの絵を見ると、記憶とか記録とか、そういう人間の時間を感じて
温かい気持ちになるんだろうなと、そう考えるようになりました。
写真以前の歴史的な背景もありますが、
文字のように記憶したり、記録したり、伝達したりすることが
人が絵を描くようになった動機で、遺伝子が持っている絵の記憶なんじゃないかなと。
ぼくの絵は文字に似ているねって感想を貰うこともしばしばあるのですが、
きっと絵と字というのは元々同じところにあったものかもしれません。