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2F/当番ノート

旅する音楽 Vol.3

当番ノート 第24期

いよいよ年末感出てきました今日この頃。ちょうど一昨年前のこの時期、「都市と自然」をテーマにゲストディレクター坂本 龍一氏を迎えて開催された<札幌国際芸術祭2014>のプレイベントでゲスト講師としてフィールド・レコーディングを用いたサウンドデザインのワークショップをやってきました。(もう札幌は雪が降っていましたっ)札幌のサウンドアーティストJunichi OGUROさんと共に坂本龍一氏が審査する国際コンペ「都市空間のサウンドコンペティション」へ向けた、都市の音を楽しみながら、都市の音環境についてのアイデアを発見していく、そんな催しでした。『SIAF2014 プレイベント第3弾 サウンドプロジェクトワークショップ』

というわけで今回は自分が携わったフィールド・レコーディング関連のプロジェクトを紹介してみようと思います。

『THE ACOUSTIC CITY』
地理学/都市計画学者のMatthew Gandyと池田亮司やFenneszなどの作品をリリースするイギリスの〈touch〉レーベルのサウンド・アーティストBJ Nilsenによる、都市のサウンドスケープについて建築/都市デザインなど多様な観点から都市生活における音の機能と役割、場所と音の関係性など音環境についての重要なテーマを探る革新的なエッセイ集『THE ACOUSTIC CITY』。付属のCDには世界各国のサウンド・アーティストによる都市の音を使用した作品が収録。建築、カルチュラル・スタディーズ、地理学、音楽学や都市社会学を含む広範囲にわたる分野から、一連 の重要なテーマとなっている都市の音の多様性を探求する一冊。

ちなみに今回直接ご依頼してくれたBJ Nilsenは今年のアカデミー賞で主演男優賞受賞の映画『博士と彼女のセオリー』で第72回ゴールデングローブ賞作曲賞を受賞したJóhann Jóhannssonとのコラボレーションなども行う多才なサウンド・アーティスト。

『foundsoundscape』
Brian Eno等と共にインスタレーション『Self Storage』の制作に関わり、1997年に発表した『Tri-phonic Turntable』ではギネスを獲得したロンドンを拠点に活動するサウンド・アーティストJanek Schaeferによる新プロジェクト『foundsoundscape』。Brian EnoやTaylor Dupree、William Basinski、Bibio、Stephan Mathieuの他、日本からはyui onoderaやchihei hatakeyamaなど100人のアーティストが参加。

下記はJanek Schaeferの2005年に生まれた娘と、1942年に第二次世界大戦の戦時下のワルシャワで生まれた彼の母の比較にインスパイアされたというサウンドインスタレーション『Extended Play』。ギャラリー内を移動するオーディエンスに反応するように改良された9台のターンテーブルから、チェロ/ピアノ/ヴァイオリンのEPがさまざまな回転数で再生させる。CD作品もLINEからリリースされています。https://lineimprint.bandcamp.com/album/extended-play

0年代以降、各楽器メーカーからハンディレコーダーが発売されフィールドレコーディングもずいぶん身近なものになりました。もう10年以上も前ですが環境を使用した作曲を始めた頃はSONYのMDレコーダーに外部マイクを装備して湖や山、都市の音を採集していました。一般化され手軽になった今ではなかなかそれに熱心に時間を掛けるということも少なくなってきてしまいましたが、それでも出来るだけレコーダーと一緒に出掛けるようにしています。そんなこんなで媒体の性質上、専門的にディープな内容までは踏み込めませんでしたが、ちょうどフィールドレコーディングをテーマにした対談が最近公開されました。もし興味を持たれた方はチェックしてみてくださいっ。
『自分と世界を再発見する、フィールドレコーディングの楽しみ方』
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yui onodera

yui onodera

音楽家。音楽と建築を学び建築音響設計を経て、サウンドプロダクションCRITICAL PATHにて国内外の広告メディア、プロダクト/インターフェイスのための楽曲提供・サウンドデザインを手掛ける。国内外のサウンドアートレーベルより先鋭的な電子音楽作品を発表。英『Wire』誌や英『BBC』など国営公共放送局含む各国メディアにて高い評価を受ける。Brian Eno等との『foundsoundscape』などその活動は多岐に渡る。

Reviewed by
佐藤 研吾

フィールドレコーディングから生まれる音楽とはつまりは作家のフィルターを通して限りなく粒子化した新たな風景の創出といったものであろうか。新たなという言葉は間違っているかもしれない、その音楽は全くもって世界のどこかに散らばる音のフラグメントの集積でしかないのであるから。けれどもそれはコルビュジェがサントリーニに散らばる無数の造形を模倣し建築をつくりだした如くの、極めて建築的な創作のあり方であると思う。建築がそうであるように、フィールドレコーディングとその編集によって生まれた音楽が、また世界の音の風景の一つを担うことを期待してみたいと思っている。
12月18日

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