雪が降っている日の空が、薄ら明るく、雪が降り積もる「音」のすることを
雪国以外で育った人に話すと、けっこう驚かれる。
雪が降る様子を最初にしんしん、と表現したひとは素敵。
本当にそうとしか言いようのない音なのだ。
それは、心が休まるような音つきの静けさ。
雪の降る朝、カーテンが閉まっていても雪の気配が窓際に漂っていて
私はやっぱり嬉しくて、カーテンを開ける瞬間をもったいなく感じるほど。
そうしてまっ白なことを確認するとき、「空白」が目の前をしばらく漂って
自分だけの神さまと対話するような気持ちになる。
雪国の暮らしはなんて不自由なんだろうと、思わなかったわけではない。
毎日のようにびしょびしょになる足元。
当時「長靴で行きなさい」と何度言われても絶対にローファーで登校していた
ミニスカートの分からず屋な高校生だった私は、毎日手と足が凍傷になりかけていた。
暮らした町の空は、一年を通して通常モードが曇天で
まるでロンドンの空模様だ、
なんて行ったこともないのにひとり零す日々。
上京してからの冬はほとんどが晴天で、足元を気にしなくていい生活に心から気が楽になった。
もうあんな風に凍えることはない。
なのに、いまだ冬の厳しい寒さと雪の降る景色は私をつよく魅了する。
すべてが万事休すで滞り、「じゃ、家にいるしかないね」となるとき
冬のあいだ冬眠する動物たちと肩を並べるようで「圧倒的に正しい」気がする。
次に会うのは雪解けの春のころに、
なんて家族や友達に宣言できたらどんなにか解き放たれるだろう。
– – – – – – – キ リ ト リ – – – – – – – –
親愛なる さま
本格的な寒さを迎え、
とうとう今年も冬籠りの季節となりました。
どんぐりやクルミ乾燥きのこも十分にありますし
なにより今年はB&Oのポータブルオーディオも買いましたので
心地よく部屋のなかで春を待とうと思います。
秋に頂いたお茶葉、とても気に入っています。
満月という名前でしたね。
今度は月夜に飲んでみます。
さんもどうぞ春まで、お元気で。
さいこうさぎ より
– – – – – – – キ リ ト リ – – – – – – –
冬の暮らしのことを思うと、今でもうっとりしてしまう。
元来ナマケモノの私はすべてが滞る冬に憧れながら、
一年中歩みを止めない東京に暮らしてもうすぐ10年が経つ。
雪国に帰ることは、もうない。
たぶん、生まれてから同じ場所でずっと暮らしたわけではない私にとって
雪のある景色こそ故郷なんでしょう。
そして私の持っている時間の感覚は、雪の降り積もるスピードと無関係じゃない。
雪景色の「白」自体の持つ意味合いも、私にとってそれは「無」というより
圧倒的な存在感で満ちている。手に負えない美しい圧迫感を伴って。
生きてる限りひとりきりだ、と雪のなかに立つ時ほど感じることはない。
清々しいほどハッキリと知らされるので、私はほとんど安心してしまう。
雪の降る音を聞いた日、窓の外はただただまっ白を積み重ねていく。
軽いもののはずなのに、夜が深まれば深まるほど雪の積もる様子は重みを増していく。
雪に育てられたのだと思う。
雪のもつ白に、明るさに、軽やかさと圧迫感に。
朝になったら雪のなかでアイスクリームをつくってみようか。
昔読んだ絵本、「ゆきのひのアイスクリーム」みたいに。
雪の降る空のもとに暮らす人にも
眠らない都市の頬を切るような寒空のもとに暮らすわたしたちにも
「メリークリスマス」。
もうプレゼントはくれなくてもいいけれど、
雪の音を知ることで、少しでも動物たちの正しさに近づきますように。
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≪雪の日のアイスクリームのつくりかた≫
砂糖 カップ2分の1
牛乳 カップ1
生クリーム カップ1
卵の黄身 2個分
バニラエッセンス 2滴
①材料をすべて密閉容器にいれて、ガシャガシャと振ります。
②振る時にする音が変わってきたら、雪のなかに埋めます。
③凍って固まるまで待ちます。
④できあがり!
『朝起きて、雪がつもっているのを見て、ふゆちゃんはアイスクリームを作ることにしました。
ふゆちゃんが庭で、お砂糖と牛乳と卵の黄身を入れた缶をゆすっていると
雪だるまと雪うさぎもきました。
アイスクリームが固まるように、
跳んだりはねたりころがったりしながら、アイスクリームを作ります。
できたアイスクリームのおいしかったこと!
(出版社の内容紹介より)』