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2F/当番ノート

質問と私。

当番ノート 第36期

常に自分に課題を課す漢、それは私。

かれこれ3年間にわたり、毎日、1日1問の質問をし、答える。そんな課題を自分に課すと言う遊びをしている。

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事の発端は「質問」と言う1冊の本との出会いだった。2014年の晩秋だった。
この本、開くと1ページに1つの質問だけが書いてあって、全部で365ページある。つまり365の質問が書いてある。答えはない、質問だけの本。とても潔い本である。

ちょうど年末に差し掛かってた時期だった事もあり、
1日1ページ1問に答えて、2015年の1年をかけて1冊読む。そんな読書をすることにした。
せっかくなので新潮文庫の「マイブック」に質問を書き込み、答えも書き残すことにしてみた。
1日1問がある生活はなかなか楽しいものであった。

そんな質問のある生活をおくっていたなかで、「ソーシャルリーディング」なる概念を知った。「ソーシャルリーディング」とはSNSやKindleなどの電子書籍端末で読書体験を色んな人と共有する事。
具体的にはKindleのハイライト(紙の本で重要な所にマーカーを引く、アレと同じ)の共有機能がある。

今までは前所有者の書き込みのある古本上でしか、出会えなかった、その本に対する他人のアテンション。それがリアルタイムで出会えて、更には更新されていく。同じ本を読んでるのに、注意を向ける箇所がバラバラ、これが私にはとても面白く思えた。

改めて、人間は個々別々である事。
同じものを見ているのに、見ていないと言う事を知った。

これぞ、個性の呪い、個性によるバイアス。
どうしようもなく違ってしまう、私やあなたや彼、彼女。嗚呼、悲しくも面白き呪いなり。
そんな面白さに震えつつ、質問生活をつつがなく終えようとしていた、2015年末。

「あ、質問をすれば同じ事が出来るではないか」

と気付いた。
同じ質問、つまり同じ入力を人間なるブラックボックスにした時にその答え、出力には如何なる違いがあるのか、と言う実験。または他人にかけられた呪いの確認、確認のしあいっこ。
面白いに決まっている。

また同じ質問に答えるのは嫌だから、自分で365個の質問を考えた。なかなかタフな作業であった。そうして迎えた2016年の元日、私個人のFacebookに毎朝7時30分頃に「本日の質問」と題して質問を投じた。
こうして私の質問のある日々は継続された。

さて、私がどんな質問を無責任に世間に放っているか。愚問揃いではあるが少し以下に記してみよう。

・完全な不完全とはどんなものでしょうか?

・ガンジーが殴ってくる程の酷い仕打ちとはどんなものでしょうか?

・ドーナッツの穴の味を表現して頂けますか?

・働かなくてよい位のベーシックインカムが導入されたら、あなたは何をして働きますか?

・何かが絶滅したら困りますか?

…という具合の質問をしている。ありがたい事にFacebookの友人達はチラホラ回答してくれている。
しかし、人間とは非常に罪深く欲深い。私はFacebook以外での反応もみたくなってしまった。

その様なわけで、「愚問愚答の会」という会合をしてみることにした。リアルの場で、今までなされてきた質問をクジにしてランダムに答えていくという会である。

私の質問が無責任なように、答えもまた無責任にしていいという決まりだ。愚問にはやはり愚答をもってして応える。愚問と愚答の果てない応酬、これがまた私には面白かった。すごく深淵な答えがあったり、唸る回答、くだらなさすぎる回答…強炭酸のごとく刺激的な体験が出来た。しかし、会が終わると「ハテ我々は何を話していたのだったか?」とその体験は炭酸の泡のごとく身に残らない。少し残ってもゲップしてすぐに排出されてしまう。

意味があるような、全くないような時間がそこには流れている。時間を無駄にしていると言うか、バカにしている。愉快だ。

さて、そんな「本日の質問」は2018年もしつこく、しぶとく続いている。飽きられるとか、そんなの関係ねー、誰かの為にやってねー、全ては己のため。
だから、飽きるまでやる所存である。

ところで、この原稿を書いているのは2018年1月2日(連載日前日!!)にも当然質問している↓

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「I hate you.」を夏目漱石はどう訳しましたか?

質問のある生活はなかなか良いものである。
さて、質問はありますか?

杣Books(細井岳)

杣Books(細井岳)

だいたい杣(林業)、ときどき本屋。
心の本業は釣り人。
やっている事は九割がたが冗談。

Reviewed by
佐藤 友理

「人間は個々別々である事。同じものを見ているのに、見ていないと言う事を知った。」
「どうしようもなく違ってしまう、私やあなたや彼、彼女。嗚呼、悲しくも面白き呪いなり。」

細井さんが毎日SNSで投げかける「本日の質問」と、不定期で主催する「愚問愚答の会」。

他人と自分の同じ部分を探るんじゃなく、
埋められない違いを発見する面白さ、
が動機で始まったところがすごく良い。

新年からほんとうに良い記事です。

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