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当番ノート 第39期
こんにちは。 今年の夏は去年と比べ物にならないくらい暑いですね。この記事を書いているのは夜の22時なのですが、未だ気温は30度です。ノートパソコンのHDDが発する熱がいっそう手を汗ばませます。ここ数日は水道をひねっても冷たい水がいっこうに出てこなくて、お湯みたいな水で手を洗っています。まだまだ暑い日が続きそうですね。 今日でこの連載もおしまいです。2ヶ月というと長いようで、意外とあっという間でした…
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当番ノート 第39期
久しぶり。 今はどこにいるのかな? こう聞くのもいつもどこか僕の知らない場所にいて、 一つにとどまることがないからね。 どこかで目を輝かせながら、 毎日過ごしているところを 想像しています。 僕はといえば、酷暑の東京にある自宅で、 フィッシュマンズを聴きながら、 この手紙を書いています。 東京の夏は過去に類を見ないほど毎日暑くて、 「命に関わるほどの暑さ」とも言われてるよ。 この間ソフトクリームを…
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当番ノート 第39期
抱きしめられるのが、恐ろしく下手だった。 下手ぶりを説明しようにもサンプルが異様に少ない人生なわけだが、とりあえず初めての恋人から「第1回・抱擁」をしかけられたときも、私は非常に緊張していた。 どのくらい緊張していたかというと、向こうが私のあまりのガチゴチぶりに、腕を離して「ウーン、こんなに固くなってる人は初めて見た……」と唸っていたほどであった。 私の記憶では、交際から2、3ヶ月経っても…
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当番ノート 第39期
「魂に触れる」 谷川俊太郎 軽いやわらかい毛布の下に 恋人のあたたかいからだがあって ふたりは手をつないで仰向けに横たわっている ふたりの目は白い天井に向けられていて どこにも焦点をむすんでいない モーツァルトのケッヘル六二二のクラリネット協奏曲 第二楽章アダージョが聞こえている初秋の午後 若い彼らは完璧な幸せがもたらす悲しみに それと気づかずに浸っている 「昨日またサリエリに会ったよ」と男が言う…
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当番ノート 第39期
「いや、ほんとにあんな好青年は見たことがない」とサー・ジョンがくり返した。「去年のクリスマスに、うちで小さな舞踏会を開いたときも、午後八時から午前四時まで踊って一度も腰をおろさなかったんだ」 「えっ、ほんとに?」マリアンが目を輝かせて言った。「最後まで優雅に元気よく?」 「もちろん。しかも朝八時に起きて、馬で狩猟に出かけたんです」 「私、そういうの大好きよ」とマリアンが言った。「若い男性はそうでな…
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当番ノート 第39期
あとわずかの高校生活、残るイベントもあとは卒業式だけになった頃、東京の大学に合格が決まった。 その晩、突然母が髪の毛を染めてほしいのだけどしてもらえない?と言った。髪の毛を加工することが嫌いな母は、これまで美容院に行ってもカット以外ほとんどすることがなかった。そんな母が髪の毛を染めるなんて一体どうしたのかと尋ねると、前々から白髪が目立つようになってきてな、と言った。母はずっと黒くて丈夫な髪の毛が自…
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当番ノート 第39期
ハロー。 僕は今、香港に来ています。 香港は20歳になる時に来て以来、2回目になる。 近くて遠い、いつも特別で憧れがある。 王家衛の映画の影響が強いんだろうと思う。 僕の場合は「天使の涙」がとても好きで。 この映画のラストシーンは最高だよ。 香港は大きく分けて二つの島、 九龍と香港にに分かれていて、 僕は香港側に滞在しています。 日中はそれはもうとても暑くて、少し歩くだけで熱気と湿気で息苦しくなる…
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当番ノート 第39期
タンゴのレッスンに通うようになって3ヶ月ほどが経つ。 まだ3ヶ月なのに、もうタンゴ無しの生活が考えられない。家でも毎日のように練習しているし、音楽も聴き続けている。最近レッスン仲間もできて、教室に行くのが毎回楽しい。本当に、道中スキップしてしまいそうに楽しい。なのに教室のあるビルに入るその瞬間には、まるで面接を受けるときのように緊張して憂鬱にもなる。先生に姿勢を注意されてはうなだれ、褒められて…
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当番ノート 第39期
多分、世界は美しいもので満ち満ちている。 それは心地よいものだけじゃなく、目を背けたくなるようなものも含めて。 それを絶えず見つけ続けること、そして人に伝わる形で残していくこと。 そのために自分と世界をむすぶフィルターをしっかりと保つこと。 18歳の時に自分とした約束だ。 写真の面白いところは、見返すたびに新しい気づきがあること。 撮った時の新鮮な感覚や記憶は徐々に失われていく。その分、撮った直後…
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当番ノート 第39期
いま私は、生涯でいちばん頻繁に男性と抱き合っている。 ふとそう思いついたのは、5回めか6回めのレッスンを受けたあたりのことだっただろうか。 その発見に、夕暮れ近づく大通りを歩きながら吹き出してしまった。 毎週、何人もの男性とかわるがわる抱きしめあっている自分……。 こんな自分の姿は、今まで一度も想像したことがなかった。 改めて引いた目で見てみると、やっぱりちょっとおもしろい。 *…
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当番ノート 第39期
早いものでこの連載も折り返しを過ぎました。 徐々に温めていくということがなく、初めからアクセル全開だったので、続けて読んでくださっている方は少し息切れがしてくる頃かもしれません。今回と次回は少し気分を変えて、「写真」について扱ってみようと思います。 どんなことを書こうか、ずいぶん悩みました。 でも、なるべく先入観をなくして見てもらいたいと思うので、今回は写真をメインにして、文章はあんまり書かないで…
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当番ノート 第39期
ハロー。 今はもう夜中の2時。部屋の明かりを落として、小さな音でFMをかけながらこの手紙を書いています。僕の住んでいるところは夜がふけるにつれて周りの音がしんとして、こうして夜中まで起きていると、僕とこのラジオのパーソナリティだけが存在しているような、そんな気持ちになる。近くに大きな川があり、緑に囲まれた渓谷もあって、自然に囲まれている。とても満足しているよ。君の住むところもとてもいいところだよね…
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当番ノート 第39期
正直であることは雄弁と徳業との秘訣であり、正直であることには道徳的な影響がある。真実は雄弁と美徳の秘訣であり、倫理的根拠の基礎であり、美術と人生の極地である。(フレデリック・アミエル) その日は、レッスン生が私ひとりだった。 まだ通いはじめて間もないころのレッスン日だ。普段は3~4人はいるはずのレッスン生たちが、その日は誰も他に来なかったのである。 まだ親しんでいるとはいえない先生二…
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当番ノート 第39期
大学生の時、飲み屋で働いていた。大学近くのJR中央線の駅から歩いて数分のところにあり、都心から離れていることもあって、その辺りに住んでいる人や近くで勤めている人も多かった。みんなよくこの辺りのことを知っていた。どちらかというとお客さんに若い人はあんまりおらず、大人の男性客が1人で来るようなお店だった。 家族経営の小さなお店で、そこにアルバイトとして女の子が1人、交代で入っていた。自宅最寄りを通る最…
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当番ノート 第39期
一歩、二歩、三歩。 男の歩幅に合わせて後ろ向きに歩く。三歩めで、左足を右足の上に重ねる。 すると、男の手が私の背中をゆっくり引き寄せる。 『前に出て』 その要求に私は応える。左足の下の右足を旋回させ、左足を軸にななめに一歩前進。 だが進んだ先で、ふたたび彼の両手に体を引き寄せられる。 『正面に戻ってこい』 男の手が告げ、私の背中が伝える声。 私はすぐさま従う。 彼の伝言を理解できる…
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当番ノート 第39期
「海」 寝苦しくて真夜中に目が覚めた 外を見ると高層ビルの光が揺れていた そうじゃなくて 窓の外を見たらイカ釣り漁船が ぽつりと浮かんでいるのが良いよ あの場所へと私を連れて行って コンクリートジャングルの中でも私は瞼の中に映し出す 目を閉じると轟きが聴こえる ・ ・ ・ 人がほとんどいない浜に絶えず白波が打ち寄せる。冬になると、まるで空と同化したかのように辺り一面灰色になる。 私にとって、長らく…
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当番ノート 第39期
久しぶりだね。 君に初めて会ったのは小学生の低学年のころ。その頃の僕は、犬を飼えることが嬉しすぎて、毎日犬種図鑑を読んでいて。今でも日本にいるほとんどの犬種は言えるよ。犬の図鑑を見ているだけで、甘い果汁の海の中でボートを浮かべているような幸せな気持ちになっていた。君には言っていなかったけど、君に会うまでは、脚が短くて耳の立った犬、コーギーを飼ってもらおうと思ってた。何度もお店に見に行ってたんだけど…
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当番ノート 第39期
アルゼンチンタンゴの古い名曲に「Loca(ロカ)」という曲がある。初めて聴いたとき、切なくも華やかで、一抹の滑稽さもあるこの音楽のことをとても美しいと思った。「ロカ」という音がかわいいこともあって、私のこの曲へのイメージはどことなく「少女」じみていた。 しかしその後、曲名の意味を調べてみてへえっと思った。 Locaとは、「狂った女性」という意味だったのである。 * 狂っている、という言葉…
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当番ノート 第39期
だれかを失った場合、われわれはその亡き人、いなくなった人が実体のない想像上の存在になってしまったことを悲しむ。 しかしわれわれがその存在をなつかしむ気持ちは架空のものではない。自分自身の奥底まで降りて行こう。・・・その不在はまさしく現実である。その人が死んでからは、不在がその人のあらわれかたになる。(シモーヌ・ヴェイユ 『重力と恩寵』 春秋社) ・ ・ ・ ・ ・ 19歳から21歳くらい…
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当番ノート 第39期
アルゼンチンタンゴにハマっている。聴くのと踊るのと両方だ。週に1回か2回はレッスンに行き、家でも毎日30分から1時間は練習をする。朝起きたらタンゴのCDかコンサートのDVDを流す。 いったいなぜ? きっかけは? その質問に対して、端的に答えるならこれしかない。「嘔吐です」だ。サルトルの書いた小説のことではない。リアルな、肉体的行為としての嘔吐である。 * ほんの3ヶ月ばかり前のことだ…
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当番ノート 第39期
はじめまして、モクです。 これから2ヶ月間、ここで連載をさせていただくことになりました。 平成6年生まれ、現在23歳です。 親の仕事の関係で小さい頃から引っ越しが多く、幼稚園を2校、小学校は3校通いました。 同じ県内でしたがそれぞれの学校にカラーがあって、そこにいる生徒や先生もちょっとずつ雰囲気が違っていました。 上京するまでの最後の7年間は、新潟市の小さな海辺の街で暮らしました。 家の裏には防…
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当番ノート 第39期
ご無沙汰しています。 お元気ですか? 最後に会ったのは、今年の頭。2017年を無事に終えた感謝とこれから始まる2018年を祈願するために、天狗で有名な神社に行ったのが最後かな。広々とした境内、太く長い杉の木に囲まれていて、大きな門の入り口を抜けて歩いていくたびに「囲まれている」という感覚になった。しばらく会えていなかったから、最近のこと、家族や仕事のこと、好きなことや好きじゃないことを話したような…