――今、大切なものはありますか?
大切なもの?
――はい。
うーん。まあ家族と友だちと彼氏は大事だよね。そのくらい。ほかはいまは思いつかない。
――あなたにとって大切とは、どういうことですか?
なくなったらぜったいに嫌だし、なくなったら超困ること、かな。
――じゃあ、「大切」と「好き」は何が違いますか?
難しいなー。でも、好きなものは好きだけど、大切なものとか人っていつも好きとは限らないかもね。喧嘩したら家族だろうと彼氏だろうとふざけんなって思うし、顔も見たくないってなるし。でも、好きなものってそういうふうに思うことはないから。基本的にプラスの感情しかない。
――「好き」は、なくなってもそこまで困らない、と。
あー、まあ困るんだけど、困り度が違う。あると人生ハッピーだなーっていうのが「好き」で、ないとぜったい無理だなっていうか、なかったらここまでの人生生きてこられなかったなっていうのが「大切」、かなあ。「好き」は付箋の紙みたいにいっぱいくっついたりとれたりするんだけど、大切はあたしを作ってるそのものって感じがする。
――先ほど挙げてくれた人たちを大切にするために、あなたは何を大切にしていますか?
どういうこと?
――別の言い方をすると、「それをどうやって大切にしているか」ということです。たとえば、感謝を伝えるようにしているとか、とか。
あー、うーん、なんだろーね。まあ、すごい単純だけど、嘘つかないこと。嘘つくとバレたとき気まずいし、っていうかだいたい嘘ってバレるし。嘘ついちゃうときって、だいたい自分のこと守りたいときだと思うんだよね。相手のためを思ってつく嘘ってほとんどない。相手のためを思って、一旦何かを言わないってことはあっても。
――相手のため、というのが大事なんですね。
そう。で、あたしは大切な人は基本的に自分より大切。もちろん自分も大切なんだけど。自分を守るために大切な人を悲しませたり傷つけたりしたくない。嘘つかないって超当たり前のことっぽいんだけど、でも、実はけっこー大事よ。自分よりその人、っていう順番をいつも守って、逆にしないってことだから。
――「嘘をつかないルール」が「大切にすること」とつながったのは、どうして?
あたし、大切にしてるって人に「大切です」とか伝えるのめっちゃ下手なのね。ありがとうとかもあんまり言えないし。恥ずかしいわけ。で、言葉でうまく言えないから、人としての礼儀っていうか、最低限誰にでも当たり前にできるけど実は真剣にやろうとしたら実際めっちゃムズい、みたいなことをちゃんとやってるほうがなんかいいなって思うんだよね。本当に大切にしてるって感じがする。
――言葉で語るよりも、態度で表したほうが良いと思っている、と。
うん。ていうか、態度とか行動のほうが伝わることもあると思うんだよね。だって、いくら「大切です」って言っても、それって本当かどうか相手にはどうしてもわかんないじゃん。だし、マジでガチで100%ですっていう気持ちで言っても、あたしの大切さ加減が伝わらなかったら悲しくなっちゃう。でも、たとえば自分が困ってたらいつも助けてしようとしてくれるとか、なんかあったらすぐ駆けつけてくれるとか、そういうのって大切じゃないとできないわけ。でも、あたしはぶっちゃけそういうのもいつでも対応できる自信ってしょーじきなとこなくて、だから、めっちゃ身近だし誰でもぜったいできるけど超ムズい「嘘つかない」を守るの。
――実際、それは実践してみてどうですか? ちゃんと守れていますか?
いやー、超ムズいよ。だって嘘つかないんだよ。フツーにムズい。だってさー、都合悪いこととか言いたくないけど言わなきゃなってこととか、当たり前のよーにけっこう発生するわけ。特に彼氏とか。ここで嘘ついちゃイカンって気持ちで、言いたくないことでも言うのけっこーしんどいよ?
――それでもそのルールを守り続けるんですね。
まあそうね。嘘つきたくないからコミュニケーションすること自体やめちゃうっていうのだけは絶対にしない。ていうかできない。フツーに喋りたくなっちゃうから(笑)。で、何回も何回もそーゆー「言いたくないけどここは言わなきゃ」っていうのにぶち当たると、自然とちょっとずつうまくなるっていうか、自分もしんどくないし言われた相手もそこまでダメージくらわない言い方がね、見えてくるんだよね。それってすごい良いことだなーって思うし、付き合いが長くなればなっただけオトクっていうか、やりやすくなるの。だから最初はしんどいけど、ちょっとずつ楽になってくの。生まれた瞬間から死ぬまで縁が切れない家族とか、大事な友だちとか、超好きな彼氏とか、そういう人たちとはさ、長くやってくわけよ。いつまでかわかんないけど。だったら、長くやってくとどんどん良くなってくほうが、みんなにとっていいよね。