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2F/当番ノート

言葉の拡張 #2夜色【言葉/信号/音】

当番ノート 第47期

以前から、わたしは「モールス信号」というものが気になっていた。
元来は可変長符号化された文字コード。単音だけ、あるいは光の明滅のみで言葉を伝える手段。SOSを伝えるために使われたりもするという、言葉の形を持たない言葉。

日本の平成の時代に生まれたわたしには、これまで一度もモールス信号との接点はない。けれど、その普遍性のようなものにひどく心惹かれる自分がいた。
国を超えて、時を超えて、その単調な調で通じ合うひとたちがこの惑星のどこかにいる。途方もないロマンだ。
想像すると、広い宇宙の中でぽつんと明滅する小さな灯なんかを思う。それと同時に、谷川俊太郎作詩の『20億光年の孤独』を思い出す。

東京のネオン。
深夜の孤独。
みんなみんな宇宙人みたいに、
わかりあえない生き物どうしで
のっぺらぼうの会話をしながら
知らない誰かに抱かれて眠る。

思い出の海は宇宙の深淵に似て
今日もまたわたしたちを孤独にし、
そのなかにぽつんと宿る光の信号が
それだけが
広い世界のあなたを教えてくれるのだ。

どうか、孤独の中でも息をしていて
小さな信号を絶やさずにいて

そうすればいつか いつか
夜色を泳ぐようにして
瞬きみたいな応えを返せる時がくるのだから

宇宙人みたいなわたしたちには、
言葉なんて要らなくて、
ただ温もりと存在だけがあればいいという夜がある。

人間になるのは、朝になったら。
今日は信号を送って、この夜のどこかの光を信じて、おやすみなさい。

▼ 言葉の拡張 #2 夜色
【 言葉 / 信号 / 音 】
「言葉の拡張」では、さまざまな表現手法を行き来しながら、
言葉というものの拡張を実験的に試みていこうと思います。
第二弾は、言葉と、記号と、音。
人生で初めてモールス信号を打ちながら、途中わたしにはその単音が言葉に思える瞬間がありました。
伸ばさなくちゃいけないところを単音にしてしまったとき、かつての人たちはどうやってとりもどしていたんだろう。
今回はミスもそのまま突っ走っています。あえて、分割録りをせずに一発録りにしました。
どうぞイヤホンをつけて画面を追いながら、
ふしぎな言葉を味わってみてください。

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(このよるにあいはあるのだろうか)

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(あいしてる)

・・-・・ 
(と)

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(きみがささやくよるに)

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(こうふくよりもかなしみがみちることを)

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(きみはまだしらないんだろう)

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(わすれられないあなたのことをおもいだしながら)

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(もうにどとあんなよるはこないのだと)

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(あたたかなうでのなかで)

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(かみしめて)

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(それでも)

-・-・・ ・・-・- ・・-- --・-- ・- ・-・・ ・・ 
(きみのあいが)

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(このよるには)

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(わたしのあいなのだ)

中西須瑞化(藤宮ニア)

中西須瑞化(藤宮ニア)

1991年兵庫県生まれ。立命館大学卒業。
「生きる選択肢を示せる大人」になるため、フリーランスとしてさまざまな活動を試みる。PRもする文筆家・物語る人。
藤宮ニアの名前で小説執筆活動などもおこなう。

どんなに小さな声でも、何者でもない誰かでも、必ずその「想い」には意味がある。言葉の力で、人を生かすひとであり続けたい。

Reviewed by
藻(mo)

モールス信号は、言葉の形を持たない言葉。

ツーツートンツーツーの単調な音も、
言葉を込めて、誰かの指が押している。

「今日は信号を送って、この夜のどこかの光を信じて、おやすみなさい。」

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