あのころ持ち歩いていた正義、インターネットから断絶された世界で寒いねぇって伸ばされた手を躊躇いなく掴む。何かひとつだけ残していってくださいって、抜け落ちた髪の毛を拾い集めた。恋の香りさえも知らない少年たちが空を堕ちながら死んでいく。爪の先まで愛してるなんて、好意と暴力は紙一重で憎らしいほどに大切だった。
わたしが死んだら骨を食べてください。
あなたの口からあなたの体の中に置いといてください。生命を残さないことが生産性のない無意味なものだというのならば、わたしの骨を無駄にしないでください。牛乳やチーズと同じカルシウムです。あなたの栄養に、生きていくちからの片隅に居させてください。
そばにいるよって抱きしめられても、わたしとあなたは解け合わない。人間がアイスクリームくらいやわらかな生き物だったら良かったのに。終わらないとめどない流れのなかわたしたちは生きている、生かされている。綴じられた歴史のなかにわたしとあなたの名前が居なくても。
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恋の中にいると「なぜ、わたしとこの人は他人なんだろう。」と不思議に思ってしまうときがあります。
なぜ、あなたとわたし、血の繋がりが無いんだろうか。
ふたりのあいだに何か、確実なもの。それは子どもとか家庭とか第三者を介入した関係ではなく、たったふたりだけの結びつき、例えばわたしがあなたを産んでいたり、兄妹だったり、遺伝子のどこかに同じ記号が隠れていたり、そんなこと。
母性本能というものをさほど信じてはいないので、(だって、女であることの自意識なんてかなり曖昧な意識で出来上がっている。)これはたぶん、関係や存在が失われたとしても無くならないものを求めているのではないかと勝手に納得しています。
ひとは、わたしは、なぜ恋をするんだろう。
脳内のバグだという人もいるし、そんなもの一過性の幻想でしかないという人もいます。体験したことのない人からしたら妄想の産物かもしれない。なんなのか本当のところは誰もわかっていないのかもしれない。
わからないまま、お互いを認め合い、生きていこうとする。
それは永遠に続かないことかもしれないけれど、とても尊いものであってほしい。
恋が絶対だとも思わないけれど、友情もパートナーも選択したすべての関係性が、奪うものでも、傷つけあうものでもなく、大切なものであってほしいなと思います。
どうか温かで穏やかな日々が続きますように。