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2F/当番ノート

はじまりの心地よい距離感:ある土曜日のこと08

当番ノート 第50期

「お店でカレーつくらせてくれませんか?」

レイくんがそんなことを言い出した時、前のめりな所がアンドサタデーの真帆さんに似ているなと思った。

それが確か2年半前くらいだったと思う。レイくんは都内の企業で働きながら、暮らしの拠点を逗子に置いていた人。今はちょっと都内に戻っているけど。

普段の仕事が目に見えにくい大勢を相手にする仕事なので、カレーを通して目の前の一人一人と接することをしたいと言っていた。

そうして今や、やんちゃカリーという屋号で広がった彼のカレー活動は、たくさんのイベントから引き合いがあるという。

彼の人柄と推進力が、多くの人を惹きつけていく。これからどんな風に大きくなっていくだろう。

自分の人生以外に、一喜一憂できる誰かの人生が身近にあると、その分毎日が楽しくなる。アンドサタデーの2人にとってそんな存在が、レイくんなんだなと思う。

「それいいっすね」と、今日もレイくんは前を見て笑っている。



「2人の話を聞かせてくれませんか?」

セキグチさんがそんなことを言い出した時、真帆さんが小躍りしていたことを覚えている。

それが確か2年半前くらいだったと思う。セキグチさんは街の人なら誰もが知っている紙媒体のメディアで、編集長を務める人。

今でこそたくさんのメディアに取材していただけるようになったけれど、その最初がセキグチさんだった気がする。

物凄く丁寧で筆が早くて、すごい編集者だなと思った。

雑誌逗子というガイドブックをつくったり、よむ料理店という企画をしたり、何かにつけてご一緒させていただいている。

逗子と葉山の街にとっても欠かせない人だ。

自分の人生以外に、自分の人生を信頼してくれる人が身近にいてくれると、その分毎日が心地よくなる。アンドサタデーの2人にとってそんな存在が、セキグチさんなんだなと思う。

「それいいですね」と、今日もセキグチさんは前を見て笑っている。


そんな2人は、自然と出会うことになる。

「この前コンビニでiriちゃん見ましたよ」

音楽の趣味が近いとかで仲良くなっていき、2人でスタバのテラスで可愛く打ち合わせをしている姿を見かけた。

「葉山で音楽フェスをやろうと思ってるんです」

そして去年には、あれよあれよと宣言通り開催してしまう。土曜日だったので行けなかったが大盛況だったようで、またひとつこの街にカルチャーをつくってくれた。

Barefoot beats
https://note.com/reisaito/n/n4051f4fb6787

一人では出来ないことがあっても、想いを共感できる人が二人集まれば、だいたい何とかなってしまう。そんな大切な誰かと出会えるご縁は、自分が何者で何をしたいか声をあげないと近づいてこない。

アンドサタデーがそうだったように、自分たちの表現を発信していれば、そこに心地よさを感じてくれる、こんな素敵な人たちと出会えてしまうんだ。

そして今でも、アンドサタデーと2人は多くの企画を一緒に進めている。

その出会い方は違ったとしても、この街、この場所では、はじまりの距離感が近い。東京では着ていた服を脱いで、その人自身と出会うことが出来る。

自分を大きく見せる必要も存在しない。

ここでは仕事なんてその人をつくる一つの要素でしか無くて、何をしている時が心地よいとか、これからどんなことをしたいとか、みんな感性みたいな部分でつながっていく。

名刺なんて破り捨ててよいんだ。

はじまりの心地よい距離感があるからこそ、それが口だけで終わるのではなくて、最後までポジティブに進んで実を結んでいく。

そして意外と、仕事関係なく出会って好きになった人の方が、いつの間にか仕事も一緒にしている、そんなものなのだろう。

そんな心地よさが、僕たちがこの街で暮らし続ける理由のひとつなんだと思う。


「よい土曜日を。」

今日も逗子の土曜日は、心地よい風が吹き抜ける。

この場所で、新しい出会いを心待ちにして、珈琲を入れながら誰かを待っている。

kengo.shoji

kengo.shoji

逗子・葉山を拠点に活動している夫婦が営む編集社「アンドサタデー」共同代表。土曜日のようにゆるやかなイラストレーション、写真、デザイン、場づくりという表現を通した編集で、誰かの想いを叶えるお手伝いをしたり、自分たちの想いを形にしています。土曜日だけ開店する「アンドサタデー珈琲店」に、ぜひ遊びに来てください。

Reviewed by
ヨシモトモモエ

逗子の、土曜日だけの珈琲店。なぜだろう、土曜日が来るたび、着実に逗子に住みたくなっている。この夏は逗子でカレーと珈琲と音楽と文章を楽しむと決めた。

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