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2F/当番ノート

リリック

当番ノート 第55期

小学生の時に水栽培で育てた球根を見かけて、懐かしく手にとったことがあった。水の中で根を伸ばす姿を見てワクワクしていたことを思い出す。でも、撒いた種が重い土を持ち上げるときだって、ちゃんとワクワクしていたはずなんだ。

自分が土の上にいるのか下にいるのかもわからない、そんなときでも、繋がりたいものがある。不安定でいい、湧き上がっているから、それはきっときっとメロディになる。

マスブチ ミナコ

マスブチ ミナコ

現代アーティスト。生きづらい自分が死を選ばないような工夫をや思考を重ねて、過去も含めた人生を作り直しています。自分の欲しいものは世界のどこにもないので自分で作ると決めました。

幼い頃から好奇心が強く、やりたいことが次から次へと増えていました。覚えている限り最初に抱いた夢は「ピアニストと獣医師(兼業)」。蓋を開けてみると、Webデザイナー、イラストレーターなど興味を持てばとにかくやってみるようになり、見たことのない景色を見るために「深める」「広げる」にこだわらず波乗りできるアーティストに転向しました。

Reviewed by
かみはら えみ

夏。
100円ショップで寂しげにしていたサボテンを、我が家に招いた。
こいつはあまりに小さく、丁度いいポットも手元になく、無駄に蓄えていた瓶を土台に水耕栽培下で生きてもらうことにした。
調べてみると、どうも水に合う根を新たに伸ばしてもらうため、土の下で伸ばした根を切る必要があるらしい。
土をはらって露わになった細い根は、「チョキチョキ」なんて安い音で、簡単に切れてしまう。小さなこいつが重ねた日々を思うと少し胸が痛む。本当に土から離れさせて大丈夫だろうか、大切な根を“切らせてもらって”良かったのだろうか。切り落とした根をみて、取り返しのつかない不安を感じた。

あれから半年程が経つ。
サボテンは、白く可憐な花を咲かせている。控えめだけど美しい花。日々の光に合わせ、開いたり閉じたり。「元気にやれてるぞ」といわんばかりに、新しい環境でも生きれることをみせて教えてくれる。
こいつはなんて凛々しく、わたしはなんて弱々しいのだろう。

わたしは今週も、できる限りマメに、水を替えようと思う。

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