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2F/当番ノート

映し出されたもの

当番ノート 第55期

偶然起きた出来事に、無駄に喜んでみたり、そこから思い出したことを、あれこれと繋ぎ合わせてみるのが好きだ。パズルも楽しかったけれど、少しでも形が合わないとつながらないのが、子どもながらに納得いかなかった。

この紙にこういうモノを描いたら面白いんじゃないか、破ってみたら面白いんじゃないか、そうやってあれこれわたしにいたずらされるものたち。自分の役割とは違って、納得がいかないかもしれない。それでもわたしが「何か」をしたことで、いつも着ない服を着てみた時みたいな、少し違う感じが、素材にもわたしにも、見てくれる誰かにも、何かを映し出すといいなと思う。

マスブチ ミナコ

マスブチ ミナコ

現代アーティスト。生きづらい自分が死を選ばないような工夫をや思考を重ねて、過去も含めた人生を作り直しています。自分の欲しいものは世界のどこにもないので自分で作ると決めました。

幼い頃から好奇心が強く、やりたいことが次から次へと増えていました。覚えている限り最初に抱いた夢は「ピアニストと獣医師(兼業)」。蓋を開けてみると、Webデザイナー、イラストレーターなど興味を持てばとにかくやってみるようになり、見たことのない景色を見るために「深める」「広げる」にこだわらず波乗りできるアーティストに転向しました。

Reviewed by
かみはら えみ

真っ白な紙やノートが好き。カラフルな色鉛筆も、ちょっと自慢したくなるようなカッコ良いペンも好き。
でも、わたしは何かをかきはじめるまでに、相当な時間がかかる。真っ白なそのページを、後戻りできない姿に変えてしまうことが怖いのだ。

ビビりなわたしのくせに、マスブチさんのレビューをかくことが楽しかった。それはまるで、透かし絵の向こう側を覗くみたいな感覚だった。何気なく目にしているモノゴトが、いつもと違ってみえて、純粋に楽しかったのだ。もう思い出すこともなかったであろう、小さな気持ちや思い出が引っ張り出されて、痛快だったのだ。

……ここで『透かし絵』という表現が、わたしの抱くイメージとズレていないか不安になり、調べてみた。
“透かし絵とは、明るい方に透かすと見える絵や模様”ですって。
日も長くなってきた、春の2ヶ月間。「できたよ」「楽しみですね」と交わし合った、やわらかい光景に、しっくり、ときた。なんだ、ぴったりじゃないか。

わたしがマスブチさんを通し、みて、つかまえて、アパートメントの真っ白な掲示板に、言葉を思い切り残せたように。ここに訪れる誰かも、その心に何かを写し、残していくのでしょう。そしてまた、新しい一歩に繋がっていくのでしょう。

ここはやっぱり、面白い角度の光が注ぐ、アパートメントですね。

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