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2F/当番ノート

紙、それは作り続けるもの

当番ノート 第59期

 無事退職し、3カ月の無職期間を過ごした後は、家族経営している会社に入った。編集とは全く程遠い業種だ。
 しばらくは何もしないでいよう、と思っていたが、わたしの友人でも適応障害になる人や心を病む人が増えてきた。何か発信して、元気づけたい。わたしもつらかったけど、なんとかなったと伝えたい。あと普通に前職の愚痴も言いたい。病んでいるヤツが何を言っているんだ、という感じだが、じっとしていられなかった。

 今まで本名で活動していたが、身バレを防ぐために「北枕ふか子」と名前を変えてラジオやブログ、メルマガを始めた。「どうせなんかやるならラジオもやってよ!ゲストに出たいからさ!」と友人のAV監督に言われたのでラジオをはじめ、有名人がよく配信しているのに憧れてメルマガも始めた(メルマガは2018年に終了、北枕ふか子のサイトにて公開中。ラジオは休み休み更新中!)。

 フリーペーパーももちろん作った。デザイナーの友人と作る「ミッドナイト」
 とにかく全力でふざけよう、ということだけを決めて作った。内容はなく、嘘しか載ってない。デザイナーの友人は「仕事で作りたいけど作れないデザインをやりたい」、わたしは「思い切りふざけたい」という2つの願望だけで作った。

「midnight」創刊号。A4、オールカラー。特集は「豆腐」。
「midnight」2号。B5サイズ。特集「お布団が好き!」。
midnight」2号。B5サイズ。特集「ファッション・イズ・フリーダム!」。

 このころになるとフリーペーパーを通じて仲良くなった人達も、活動の場を広げていた。フリーペーパーが書籍化(雑誌が書籍化、というのも意味不明だが、商業化されて本屋に並ぶこと)する人も増え、ラジオやテレビなどのメディアで取り上げられる人も増えていく。
 めでたいことではあるが、どんどん先を越されている感覚がある。集まりに行くと、それを引け目に感じるようになった。思わず自虐してしまうと、「フォロワー少ないもんね」「もっと過激なことしたらいいのに」と揶揄されることも増え、その冗談も「婚姻届に判を押して配布したら」「水着写真毎日更新したら」と日に日にキツくなっていく。大丈夫と思って笑って過ごしていたが、集まりから抜けると涙が止まらなくなり、メンタルクリニックに駆け込んだ。精神安定剤と睡眠薬を処方され、飲み始める。「会社以外で活動するなら大丈夫」と思っていたが、全然ダメだった。

 薬のせいで頭がぐわんぐわんとするので、何もできず、またしばらく何も作らずに過ごしていた。極力、誰とも関わらないようにし、薬をなるべく飲まないように静かに暮らす。すると、半年ほどするとまたむくむくと作りたい衝動が来る。だが、フリーペーパーを作る元気はない。印刷して配布する元気がない。そこでネットプリントを始めた。

 「北枕新聞」というもの。ネットに書くほどじゃないことを書いた。このころはTwitterでツイートすることもつらかったので、ネットプリントになら書けそう!と思って書いた。

「北枕新聞」4号まで発行。すべて手書き。白黒。3号まではA3サイズで、4号からはA4サイズに。

 あと本も作って販売した。今までは「本を買ってもらうなんて申し訳ない、わたくしめの作ったものなんか無料で十分でござァます」と思っていたが、「お金、もらってもいいのかもしれないな?」と考え始め、ちゃんとした本を作って売ることにした。それが「nikki」

「nikki」。家族性地中海熱&適応障害になるまでの日記。絶賛販売中!

 tumblrで書いていた日記をまとめて本にした。家族性地中海熱と適応障害になるまでの話が書いてある。フリーペーパーの感覚で作って「50冊じゃ足りないかな!?80冊にしよう!」と思って印刷したら今もめちゃくちゃ余ってる。ウケる。興味ある方はぜひ買ってください……!(文学フリマや「北枕ふか子のお店」で販売しています)

 そのほかにも「novel」、「北枕ふか子はじめてBOOK」、タオルなど、フリーペーパー以外のものも作り続けている。

「novel」。今まで書いた小説を載せた作品。こちらも絶賛販売中。
「北枕ふか子はじめてBOOK」。活動をわかりやすくまとめた本。ステッカーと北枕新聞のセットで販売中。
つい出来心で作った「北枕ふか子タオル」。ふかふかで使いやすいと評判が良い。こちらも絶賛販売中。

 という感じで、今も「ミッドナイト」をはじめいろんなフリーペーパーや本を作り続けている。やめようやめようと思っても、思わず作ってしまうのは、きっとそれが自分に合っているからなんだろうし、極端に言えば、ただ「作りたいから」やっているんだろう。

 フリーペーパーの良さは、どう作ってもいいこと。誰かに怒られることもない。作りたい明確な理由や意味なんてなくてもいい。「やりたいからやった」で許される。

 根本は10年前、大学受験の頃から変わっていないように思う。とにかくフリーペーパーが作りたい、面白いことがしたい、いろいろやってみたい。今、「あなたはどんなフリーペーパーを作りたいの」と聞かれたら、やっぱりわたしはしどろもどろになりながら当たり障りのないことを答えてしまうだろう。わたしはずっと、衝動だけでフリーペーパーを作り続けているのだ。
 明確なビジョンや目標なんかない。だけど、高校時代の先生の言う通り、わたしはこれからもたくさんの本を作っていくんだろう。たぶん。

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