当番ノート 第25期
ニューヨークで暮らし始めて7か月。日々どこかで、思いっきり笑っている人、びっくりするぐらい泣いている人、何があったの?と聞きたくなるぐらい怒っている人、なんだかよくわからないけど楽しそうな人、とにかくエモーショナルな人々をよく見かける。 かっこいい靴を履いている人を見かければ“それどこで売ってるの?最高にクールだね!”と話しかけ、困ってそうな人がいれば声をかけ、当たり前に手を差し伸べる。と同時に、…
当番ノート 第25期
今日も西のはずれにある海岸へ来て、手頃な細さの流木を探した。 冬の海は濃い藍を湛えていて、海岸を歩くひとは私以外いなかった。天は鈍いろの雲が垂れ込め、砂浜は実にさまざまな漂着物であふれている。古い空き壜、硝子の浮き玉、ケルプ、小型の冷蔵庫、潰れたホヤ、靴、箒。 漂着したごみを数えながら貝殻を拾っては、そっと耳に当てた。昆布を踏んだ拍子にぐに、と気持ち悪い感触がした。 しばらくぼうっと歩…
当番ノート 第25期
「あんどろまらけの歌」2011年、インクジェット、手製本 写真家になるにはどうしたらいいんだろうとぼんやり考えていた。学生時、地方に在る余白のようなものが気になり休みを使っては青春18切符や夜行バスで各地方へ足を運び撮影していた。車窓に流れ込む平原や集落、濡れた浜辺に肥大する植物群。それを重ね手製の写真集を作ることが好きでいつかは自分の写真集をと思い描く学生だった。卒業のリミットがちらつき、自分の…
当番ノート 第25期
鏡を見ている ちがうか 鏡にうつってる私をみている そういう観点からいくと私も、あの人にとっては鏡みたいなものなのかもしれない あの人は私を見ているようで、私を見ていないんじゃないかと思うことがある あのひとはあのひとを見ているんだ 目ん玉が、ひっくりかえったらいいのに それでも私は、まぬけにも化粧をしている ほんとうはもっと質…
当番ノート 第25期
昨年の春、夢を追い求めニューヨークに引っ越してきました。現在は、ブルックリンのアパートで陽気なルームメイト2人と楽しく生活しています。初めての海外暮らし、不安で胸がいっぱい、、、なんてことは来る前も来た後も一切なく。生き心地は抜群にいいけれど、生きていくにはなかなかの気合いが必要なこの街で、日々切磋琢磨しながらも、のびのびと生きています。 不安はないけれど、驚くようなことは山ほどあります。多様な人…
当番ノート 第25期
その夜は今年一番の冷え込みだった。 氷のように冷たい雨は夕暮れどきからみぞれになり、夜半過ぎには雪へと変わった。 凍て玻璃の外は群青いろではなく、こっくりと塗り込めた漆黒の闇だった。その墨いろの中を、羽で撫でるように軽やかな白雪が舞うのだった。 こんな夜は雪が音を吸い込んで、自分以外の生き物が滅んでしまったような錯覚に陥る。 魔女はしんと静まりかえった雪の夜が好きではないらしかった。 …
当番ノート 第25期
[男1は動きをとめる] いまね、ぜんぜん違うこと考えてる がまんしてんの? うん ははっ、 なに考えてんの? え? なんだろ、ウクライナ情勢 なにそれー? なるべく関係ないこと考えないとダメっぽいんだもん 社会派じゃん こういうの社会派って言うんだっけ たぶんね この分だと朝になるころには、どっかのコメンテーターくらいにはなってるぜきっと かもねー &nb…
当番ノート 第25期
はじめて文章を書いて本という形で世に出そうとしたときに相談に行った人は、開口一番「やめておいたほうがいいよ」と言った。「ひとたび書いた文章が世に出ると、あなたの記憶も固定されてしまう。書かなかったことは、自分の記憶からもこぼれ落ちていくよ」と。 その忠告に反して私がはじめての本を書いたのは、私が旅先で再会した友人たちの言葉を届けたかった人がいたからだ。それは「10年後、ともに会いに」という本になっ…
当番ノート 第25期
これからどうしようかなぁと、考えています。 このアパートメントの話です。 1月上旬、アパートメントの管理人である鈴木悠平君からFacebookのメッセンジャーでこの連載の話をもらいました。あのアパートメントの話しが私の元に!なんとも嬉しいお話。しかしまあ毎週書けるだろうかとか、書くのは得意ではないなー、でもやってみようかなとか、いろいろな想いが頭の中を駆け巡ったもののすぐに一周して、悠平君が今私に…