当番ノート 第22期
ある日わたしは一週間のロシア旅行を終えてトーキョーに戻ってくる。トーキョーはロシアのモスクワから飛行機でだいたい10時間、愛媛の伊予三島から高速バスでだいたい10時間の距離にあります。愛媛とトーキョーをつなぐバスの10時間以上をわたしはほとんど眠ってすごすのだけれど、モスクワからの10時間についてはぼんやり窓の外を見てすごしました。空のきれいなグラデーションを見た。飛行機がぐんぐん夜明けに飲み込…
当番ノート 第22期
バラが100本送られてきたけれど、その人が別の人に101本贈っているのを知っているので素直に喜ぶことが出来ない。 というのはフィクションであり、今のところバラが100本送られるようなロマンチックな人生ではないようだ。 兎角、私の喜びは私の経験上でのみ完結するものではなくなってしまった。初めて得た一等賞であってもみんな仲良く一等賞と知ったなら、勿論そんなものに意味は無い。金色のメダルが欲しいのではな…
当番ノート 第22期
#4 音とイメージ(1) 眠れないときは羊を数えなさい、と言われる。子供の頃は頑張って数えたが、飽きて目が冴えるばかりで効果があったような気はしない。羊を数える習慣が元はイギリスから来たもので、羊のフワフワしたイメージやのどかな光景、繰り返しによる催眠効果の他に、英語ならではの仕掛けがあると知ったのは大人になってからのことだった。sleepとsheepはよく似た発音のため、one sheep, t…
当番ノート 第22期
夏も終わりに近づき、夜も少し涼しくなりましたね。皆様、元気にお過ごしでしょうか? 僕はというと、ここ数日食中毒で寝込んでしまいました。いや〜、えらい目にあいました。 第4回となる本日は僕のもう一つの活動である、絵と音と言葉のユニット「repair」についてご紹介させていただけたらと思います。 「repair」は先に言った通り、「絵」と「音」と「言葉」を使った「芸術活動」を目的としたユニットです。メ…
当番ノート 第22期
「何をやってもうまくいかない時は、神様がくれた長いお休みだと思う。」 昔ヒットした「ロングバケーション」というドラマに、こんなセリフがありました。 早稲田を中退し、フリーターをしながら漫画家を目指していたころの僕は、まさにロングバケーション真っ只中で、何をやってもうまくいかず、どうしようもない日々を過ごしていました。 エロビデオ屋のバイトをしながら、妖怪がでてくる漫画を描いていました。 講談社のち…
当番ノート 第22期
こんばんは。 杉田廣貴です。 今回は、前回の続きではなく、今出張先である東北にて出会った1人の職人との学びを紹介します。 今、私が主宰する言葉ギフト.comの個人的な宣伝やトークセミナーのため東北にいます。将来的に、こちらでも言葉ギフト展をおこなうつもりでもあります。 震災があったから、東北の方を元気づけようとか、そういった気持ちではなくて。 ただただご縁があって、そのご縁を大切にしていたいから、…
当番ノート 第22期
Vin:ワイン。男性名詞。 バッカスに祝福された飲み物。 フランスのワインは、多くの銘柄および畑が男性名詞。ぶどうの品種も、また然り。女性名詞のロマネ・コンティやラ・ターシュなどは珍しい部類です。 それでも、人々は、ワインを女性に例えることが多い。ロマネ・コンティの初代醸造長、ノブレ氏は、ワインは女性そのものだと言っていた。 「愛情の注ぎ方、愛情の量によって育ち方に違いが出る。非常に繊細で多彩な性…
当番ノート 第22期
トーキョーにはミンミンゼミがふつうにいるので最初の夏はわりと驚いた。それまで住んだことのある土地はアブラゼミとクマゼミばっかりで、ミンミンゼミがいるとすれば山奥の涼しいところ、そうでなければミンミンゼミの声なんてテレビのなかの「夏の演出」にきくばかりだったから。だからトーキョーに夏が来ると、ミンミンゼミをきくと、フィクションにいるような気持ちになります。 都会の夏についてのフィクションなら前に…
当番ノート 第22期
500点以上作品が展示されていたはずなのに、1200万円の値札がついた三角形のことしか覚えていない。 LondonにあるRoyal Academy of Artsで開催されているSummer Exhibitionでは、12000作品の応募の中から選ばれた500作品が展示されている。そういう展覧会には、日本にいる時から久しく足を運んでいなかった。 知り尽くした現実と永久に未知の真実、理解不能な評価と…
当番ノート 第22期
#3 不滅のイメージ(後) 不滅のイメージは聖と俗のせめぎ合いだ。 死のもたらす距離は故人を誰彼構わず尊い存在にしてしまい、美化を押し進めていく。遠く遠く、向こう側からもこちら側からも力が届かない土地へ行ってしまい、そうしてあらゆる力が無効になって初めてこちら側が一方的に結ぶことができる協定がある。もはやペンも剣も持たず、脅威を失った存在は無条件に理想化されていく。 ところで一方では俗へと引き込も…
当番ノート 第22期
一週間って24時間しかないんじゃないかと錯覚するぐらい、時間が経つのが年々早く感じてきた今日この頃です。 3回目の本日は、僕の作品にはかかせない印刷について。 仕事で絵を描く場合、大抵は大量生産が前提にあります。デジタルの場合、スキャニングの手間が省けたり、修正も比較的しやすいので、仕事とするにはアナログに比べて有利な面があるかなと思うのですが、1点ものの「芸術作品」という観点からすると、やはり一…
当番ノート 第22期
1999年の春、 三浪二仮面浪人して、23歳で早稲田大学に入った目的は二つありました。 面白い人にあうことと、 夢を見つけることです。 僕は昔から漫画家になりたいと漠然と思っていたので、 漫画サークルに入ることにしました。 早稲田はとにかくサークル数が多く、1000以上あると言われているのですが、漫画サークルだけでも6つありました。 その中でも弘兼憲史や、やくみつるが出身で、有名な漫画研究会の新歓…