当番ノート 第5期
二度三度抱き寄せられる腕枕 吾が埋もれるほどの肩の広さよ 抱きすくめぽんぽん我をあやしつつ 先に眠りにつく男を撫でる あのあとの記憶がないと先手打つ 男ってやつぁいつもこうだ この花を千切ったところでなにもかも 変わると思えぬ夜が明けて 戯れて じゃれて乱れて我に返る 「虚しい」という字に よく似ている
当番ノート 第5期
シリーズ「ELEMENT」より 2011 シリーズ「ELEMENT」より 2011 このシリーズは「山」の前作にあたるもので、このシリーズの発展させたものが「山」となります。このシリーズは地球を一つの生命体と捉え、地球を構成する要素としての自然物や人工物を撮影し、それらの写真で構成しています。 数年前、北海道に行った時にアイヌの方とお会いし、一週間程その方のところに滞在させてもらいました。そこには…
当番ノート 第5期
自分、という人間について、それぞれの人間がどれほどまでに興味を持っているのかは、僕は僕以外であった記憶がないのでわからない。 少なくとも僕は、相当自分に対して興味を持っているのではないかなぁ、と思う。 寧ろ、自分にしか興味がないのかも知れない。 昔は自分の外側にばかり興味を持っているのだと思い込んでいた。 兎に角自分嫌いで、自分に価値があるとすれば、価値のないことを解っているというところくらいなも…
当番ノート 第5期
「カメラ買って正解でしたね。」 その人は、私にそう言ったのだ。 2001年、秋。 私はここ、カフェACHOで友人とお茶をしていた。 人生初となる『占い』へ行ったのは、一ヶ月ほど前のことだった。 私はこの日、2度目を終えて、初めて行った友人2人とここへ寄った。 占いに行き、自分を診てもらおうと思ったきっかけは、 職場で知り合った同い年のウエダくんが、その場所へ行ったこと。 とにかくすごいから、行って…
当番ノート 第5期
石工だった父親の仕事場で子供の頃はよく遊んでいたが、 父や他の職人達が使い込んでいた道具は なぜかとても魅力的で、 時々、使い方もわからないままに、 欲しいとねだって、そのおっさんたちに笑われた。 また、墓石なんかの欠けた部分を修繕する時に、 父がその辺に転がっている木片を拾い上げ、 それをコテのように使って、膠(?)と石の粉を手際よく混ぜていたが、 その、ただの木片がコテと言う「道具」に昇格する…
当番ノート 第5期
水曜日か。伝えたい事は特にないな。 ガツガツと写真を撮りたいとも思わない。 書きたい事もない。 人生が充足している気がする。 女と暮らし、馬鹿な話をし、時に威張り、時に褒められ、寝る。 これ以上の何かを求めているのかというと、全く求めていない。 酒が飲めればいい。たまにセックス。 あとは好きなミズヒキの花が年中咲いていればいいのだが、 それは叶わない。友人は、近所の猫で充分だ。 酒を飲んで、テレビ…
当番ノート 第5期
色づいた銀杏の樹を見上げて歩く秋乃。 僕はゆっくりと歩調を緩める。 そのまま離れてゆく秋乃。 そして、後ろを振り返る。 ぽつんと立つ秋乃。 僕は静かにファインダーを覗く。 秋乃が少しはにかむ。 一瞬の静寂が訪れる。 いつものように光を閉じこめた僕は、 秋乃のもとへ駆け寄る。 そうして再びゆっくりと歩き出す。 秋の風が吹き抜ける。 (写真:2011年11月 昭和記念公園)
当番ノート 第5期
夜のはざまにひとりの女 ビルのすきまにひとりの女 角をまがればひとりの女 女 女 ひとりの女 背中をみせてひとりの女よ 喘いでみせてひとりの女よ 産毛を逆撫でちくちくするよ 膝まづかせてひとりの女よ よく笑いよく泣きおおいに食べ 時に狂い時に沈みそして浮かびあがる やわらかなその腰つき しなだれるそのうなじ か細く力強い手首と視線 ふり返ればひとりの女 あおぎ見ればひとりの女 嗚呼 女 女どもよ …
当番ノート 第5期
シリーズ「山」より 2012 シリーズ「山」より 2012 「星霜連関」という民俗芸能を撮影したシリーズの他に伊勢へ来て撮影しているものに「山」があります。このシリーズは伊勢神宮の鬼門の方角を守護すると言われている朝熊山という山で撮影した写真で構成しています。昔から「お伊勢まいらば朝熊(あさま)をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭で唄われるように、参宮を終えた人々は、朝熊山に参詣するのが一般的…
当番ノート 第5期
最近、わたしはめっきり自信というモノをなくしてしまっている。 これまで、無意識に持っていた価値観みたいなものが、もの凄い勢いで音を立てて崩壊していくのを感じている。 これまでゆっくりとそれに対して考えを持つ機会を持ったことのないものが、どんどん情報として文字(言葉)というもので入ってきて、まだ自分がそれに対して何の考えも持たない無防備な状態の時に、わたしの中で芽を出し、根を張ってゆく。 しかもそれ…
当番ノート 第5期
無花果(イチジク)。 私がこの果物を食べるようになったのは、大人になってから。 それもごく最近のことで、4人目を授かったこの夏のこと。 市内にある実家へはしょっちゅう足を運んでいる。 娘たちの習い事が実家の近くで行われるため、それを口実に。 週に一度は長女と次女をピアノの先生のお宅へ預け、 三女と私はそのまま実家へ向かい、一時間ほど過ごして帰ることもあれば、 ふたりを迎えに行き、再び戻り、夕飯をい…
当番ノート 第5期
木を見て森を見ず、という言葉がある。 森を見て木を見ず、ということも言えるだろう。 以前、ある若いダンサーにこんな事を話した。 多くのダンサーは、自分の(要素や機能や人生の)一部として「ダンス」を考えているように思う。 それはそれで全く普通の事だが、でも、こんな考え方も出来るんじゃないだろうか。 「ダンス」というものの一部として、自分がダンサーとして含まれている、と。 「ダンス」のイデア的集合のよ…