当番ノート 第50期
回転していなかったかざぐるま。よく動く普段とはまた違った姿をみれた。風力発電には風車が地面に対して垂直にまわる水平軸風車と風車地面に対して並行横に回転する垂直軸風車の2種類がある。今回出会ったのは主力の水平軸風車。より細かくなると、揚力型のプロペラ式で日本では多数の風力発電のフォームがこれである。この横浜に1台ある風車は横浜市風力発電事業の一環で別名ハマウィングというらしい。いつか真下から眺めてみ…
当番ノート 第50期
春夏秋冬というが、冬から春に明確に変わったなと思える日が好きだ。そう、一つネジが動いたなという感じで嬉しい。2020年春。あまり春が好きと感じたことはないのだが(どちらかといえば新緑の美しい5月の方が記憶に残っている)私の誕生日は4月。人生のネジもこの月に動く(正直このネジは動いて欲しくないなと思える年齢に達してしまった)。地球の時点のスピードは少しずつ遅くなっているみたいだが、宇宙レベルの変化に…
当番ノート 第50期
踊り疲れて眠ってしまう。踊りきったね.という自分への労いなどする暇もなく、ただ気がつけば。 曲は一時停止。別の世界線に放り込まれる。 寝たくて寝たくて仕方がないというわけではなくて、気づけば寝入っていた。窓から燦々と日が差している。まだカーテンのない我が家、家の奥のほうに入ると暗くなっているスペースが現れる。そこに布団を移動させる。その日は、アパートから歩いて5秒の所にあるパン屋さんでパンを買って…
当番ノート 第50期
アブドゥッラーさんという友人がいる。30代前半のヨルダン人、男性。難民支援を行うNGOの職員で、ヨルダン国内でシリア難民の支援を行っている。 2011年のはじまり、「アラブの春」が中東全域に広がり、シリア国内でも反政府デモが始まった。同年5月にはシリアからヨルダンへの避難民が報告された。11月にアラブ連盟がシリアの加盟資格停止を決定すると、ヨルダン政府はシリアからの避難民を「難民」として認定するよ…
当番ノート 第50期
命日には、父が好きだった奥穂高に登って頂上で線香をさそうと思ったのに、なかなか旅行もしがたい。 仕方ないので、近場で空が開けた高い場所を探し、線香をさす真似事をしようと思う。家にはチャンダン(インドのお香)しかないのだけど、やはりダメだろうか。 実家の墓も東京も、きっと同じ空の下。 — 父の旅立った翌々日、父をよく知るお坊さんから、高級な線香をもらった。「いい匂いがするから、やってくれ…
当番ノート 第50期
「可愛いお店、テーブルの下の青いタイル好きです」 自分のお店とか場を持ちたいと思う人は多いようで、今日も話を聞きたいと都内の大学に通う女の子が、土曜日に遊びに来てくれている。白い光が差し込む店内を、珈琲を飲みながら興味深そうに見渡していた。 「この棚なんかも自分たちでつくられたんですか?」 隙間に3列の黒板が埋め込まれた棚には、「Coffee Wrights」の豆や、台湾の作家「Rainy」に逗子…
当番ノート 第50期
2019年5月。自主制作MVのロケハンで訪れた横浜。元町・中華街駅へと降り立つと、潮の香りが広がっていた。 道に迷いながら、マリンタワーを目印に徐々に空が開けてくると、海に面した山下公園へと入っていった。日本郵便氷川丸の鎖にはカモメがびっしりと並んでいた。辺りの人よりも多くいたと思う。後日、横浜にいる友人に聞いたら、カモメのたまり場であると巷ではよく知られているみたいだ。また対面するであろうカモメ…
当番ノート 第50期
光合成。高校の時に通っていた河合塾で我慢比べのように西日をずーっと浴びていたのを思い出す。あれが光合成(日向ぼっこ)初体験だったかな。直射日光はなにか挑みかかりたくなる感じがした。当時鬱屈しまくっていた自分にとってあの光と熱に挑みかかりながら血が沸騰して、最後にはのぼせたように熱と一体化する感覚が好きだった。あれからだいたい20年くらい経ち、最近の光合成は午前中になっている。それは今住んでいる家に…
当番ノート 第50期
脱いだ靴がバラバラになる。 授業の開始時間が数分遅れる。 気がつけば買ったじゃがいもは芽を生やしている。 お酒を道の真ん中と電車で飲んでいる。 脱いだ服は床に散らばるばかり。 (気が向いて、脱いだパジャマを畳んだいつしか昔には母親から「今日自殺するんじゃないかと思った」と驚かれる。) アパートメントで書きませんかというお話を頂いてから、書くテーマを考えていた。ヨガと演劇と療育、これが自分の生活の多…
当番ノート 第50期
ヨルダン北西部の古代遺跡「ウンム・カイス」を訪れた。 ローマ帝国の軍事基地として栄えたこの地からは、パレスチナとイスラエル、そしてシリアとの国境が見渡せる。国境を巡って争っている場所と言った方が正しいかもしれない。 ウンム・カイスから北の方角を見て撮影した写真。正面に見えるのがチベリアス湖。その右側にはゴラン高原が広がり、イスラエルとシリアが主権を争っている。 雲一つない快晴。ゴラン高原の奥にはう…
当番ノート 第50期
桜も見頃を過ぎた4月、父の一周忌を迎える。 本当はたくさん人を呼んで悼みたかったが、高齢者ばかりの親戚で集わない方が賢明だろうということになり、家族だけのほんの小さな集まりになった。 —– 昨年の今頃、父は闘病のすえに、旅立っていった。 最初は半身麻痺から始まって、徐々に体のコントロールが効かなくなり、できないことが増えていった。 良くなる方と悪くなる方の岐路があったとき、…
当番ノート 第50期
「なんで逗子を選んだんですか?」 「そうですね、肌が合ったとしか」 東京から1時間、海を見に来たという20代半ばの黒髪ショートボブが似合う女性は、暮らす街を選ぶ理由について期待した答えを得られず、すすっと珈琲をすする。 逗子で編集者夫婦により土曜日だけ開店する「アンドサタデー珈琲店」で、何百回と交わされては一度もスイングしたことがないこの会話。 どうして自分たちはこの街で暮らすことを選んだんだろう…