当番ノート 第46期
家賃3万円、ワンルームのアパートに暮らしていた。週4〜5日街頭でチラシ配布のバイトをしながら生活費を稼ぎ、大学院に通い、演劇コンクールに応募して、作品を立ち上げる。貯金はなく、もやし炒めとサバ缶、コンビニで買えるひじきや切り干し大根をローテションしながら、奨学金返済に怯えていた。 それでも、世に突きつけたい問いを演劇作品として立ち上げながら、コンテンポラリーダンスに向き合っている彼女と理想の稽古場…
当番ノート 第46期
わたしは大ぶりのキラキラ輝くピアスが好きだ。自分を格上げしてくれる気がする。格上げって何なんだとも思うけれど、確実に気分は上がる。 でも、たまに大ぶりなアクセサリーが急にダサく見え、華奢なアクセサリーが似合う上品な人に憧れたりもする。気取りすぎない、さりげなさに。 毎日毎日つけていたピアスが、急にしっくり来なくなった気がして使わなくなる。こう書き記してみると、それはなんだか悲しいことのように思える…
当番ノート 第46期
2回目の投稿です。「トルコで出会った女性たち」シリーズ第2弾です。トルコで出会った印象的な女性たちとそれにまつわる私の記憶を書いています。前回の投稿「ハティジェ」の冒頭にてこのシリーズの説明を詳しく書いておりますので、一体何について書かれているのか混乱された方はどうぞそちらをご確認ください。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…
当番ノート 第46期
1軒目の酔いがいくらか覚めてきた頃、わたしは友人ふたりと新宿のどこか(覚えていない)にあるスナックのカウンター席に座っていた。 わたしたちの他に、お客さんは5組程度だった。人生で数回目のスナックだけど、見知らぬお客さん同士が狭い空間のなかでカラオケをしたり、女の子がお酒を注いたりする光景というのは、なんというか、異世界だ。 自分がいる場所よりも、1メートルくらい上の方から見下ろしている気分になって…
当番ノート 第46期
大学時代の友人たちに会った。 しばらくお昼休みはどうしてる 残業はどのくらいだとか 髪切ろうか迷っててだれそれとどうなったとか 学生の時とは少し違うようで 大体同じような近況報告をした後ふときかれる。 「みほ。本当に仕事しているの?」と。 会ってからさっきまで 散々その話をしていたじゃないか!と苦笑してしまう。 でもそれだけ友人たちには私がまともに「会社勤め」をしていることが信じられないらしい。 …
当番ノート 第46期
惹きつけられる書き出しを探して、動く親指は油断ならない。自分が味わっていない出来事について、ぽちぽちと打ち、なんだか生活と向き合った気になってしまう。 Uver Eatsの手数料が無料だったとき、マクドナルドをよく食べた。グランベーコンチーズを頼み、口に流し込んだ。 「厚みのある100%ビーフに、2種類のチェダーチーズとスモーキーなベーコンを組み合わせた、リッチな味わいの一品」と商品紹介ページに書…
当番ノート 第46期
わたしは文章を書くことが苦手なのかもしれない。というと、研究者として執筆を普段から行なっているのに、何を言うと思うだろう。 正確に言うと、自分のことについてじっくりと書き記すことが苦手だと思うのだ。SNS時代、自分の経験を語り、自分にある種のブランド性を付与していく人が影響力を持つ。それを羨ましいとも思いながらも、積極的にできない(と思っている)。 とは言えど、インターネット上には自撮り写真もメン…
当番ノート 第46期
こんにちは、どるこです。今回から2ヶ月間こちらで投稿させていただける機会をいただきました。1番初めの投稿ですので、私が何について投稿していくのか、及び投稿に関しての設定というか、前提を説明させていただきます。 まず、何について投稿していくかですが、何かテーマを決めると書きやすいといったアドバイスをいただき、私もそれなら面白くできそうだなと思いましたので、この2ヶ月間の投稿は1つのテーマに沿…
当番ノート 第46期
2019年8月4日日曜日 晴れ。従兄弟の結婚式に参列した。 * 12時00分(挙式開始30分前)。 「信じられない! お父さん、この靴で参列するの!?」と、母が突然声を荒げた。(いつも通り)無遠慮な母の物言いに勃然としていた父の足元を見てみると、グレーのスリッポンスニーカーのようなものを履いている(念のため書いておくと、父は、ちょっとだけ……結婚式の知識がないだけだ)。 「30分あるし、一緒に靴を…
当番ノート 第46期
8月に入りずっと、肌がぺたぺたとしている。 空気は水を孕んでのろのろと重いし、 日差しは強く体の中も暑く このまま蛙にでもなってしまうんじゃないかと思う。 水族館に行くのが好きだった。 薄暗く長いエスカレーターを降りていくと 空気が徐々にひんやりとしていくのがわかる。 同時に少し生っぽい、潮の匂いを舌に感じる。 家族旅行で行ったちゅらうみ水族館の大きなガラスの水槽や 佐賀のうみたまごの色とりどりの…
当番ノート 第46期
まだ私は、他人と向き合う準備ができていない。だから誰にも会いたくない。それは目やにがついているからでも、鼻毛が出ているからでも、自分の息が臭いからという理由でもない。 朝、外に出て、呼吸のしづらい暑さに朦朧としながら、仕事に向かう。電車が来る直前に自販機で割高なお茶を買ってしまう。電車にしばらく揺られると寒暖差がつらくて目をつむる。 マンションの一室にあるオフィスに着き、いくつかmtgに参加する。…
当番ノート 第45期
絵を描いていると、テーマはなんですか、と聞かれることがたまにあるのですが、一貫したテーマはあまりなく、描くことによってなにかを目指すというよりは、描くことを続けていくことで自分とまわりとの関係をあぶり出しているようなところがあります。 美術系の大学にいっていたときに、とりあえず真面目な美大生だったし、内から湧き出るものはあるから、わーってなってつくってて、でも、わーっていうのを微妙にセンス良くなん…