当番ノート 第39期
「海」 寝苦しくて真夜中に目が覚めた 外を見ると高層ビルの光が揺れていた そうじゃなくて 窓の外を見たらイカ釣り漁船が ぽつりと浮かんでいるのが良いよ あの場所へと私を連れて行って コンクリートジャングルの中でも私は瞼の中に映し出す 目を閉じると轟きが聴こえる ・ ・ ・ 人がほとんどいない浜に絶えず白波が打ち寄せる。冬になると、まるで空と同化したかのように辺り一面灰色になる。 私にとって、長らく…
当番ノート 第39期
久しぶりだね。 君に初めて会ったのは小学生の低学年のころ。その頃の僕は、犬を飼えることが嬉しすぎて、毎日犬種図鑑を読んでいて。今でも日本にいるほとんどの犬種は言えるよ。犬の図鑑を見ているだけで、甘い果汁の海の中でボートを浮かべているような幸せな気持ちになっていた。君には言っていなかったけど、君に会うまでは、脚が短くて耳の立った犬、コーギーを飼ってもらおうと思ってた。何度もお店に見に行ってたんだけど…
当番ノート 第39期
アルゼンチンタンゴの古い名曲に「Loca(ロカ)」という曲がある。初めて聴いたとき、切なくも華やかで、一抹の滑稽さもあるこの音楽のことをとても美しいと思った。「ロカ」という音がかわいいこともあって、私のこの曲へのイメージはどことなく「少女」じみていた。 しかしその後、曲名の意味を調べてみてへえっと思った。 Locaとは、「狂った女性」という意味だったのである。 * 狂っている、という言葉…
当番ノート 第39期
だれかを失った場合、われわれはその亡き人、いなくなった人が実体のない想像上の存在になってしまったことを悲しむ。 しかしわれわれがその存在をなつかしむ気持ちは架空のものではない。自分自身の奥底まで降りて行こう。・・・その不在はまさしく現実である。その人が死んでからは、不在がその人のあらわれかたになる。(シモーヌ・ヴェイユ 『重力と恩寵』 春秋社) ・ ・ ・ ・ ・ 19歳から21歳くらい…
当番ノート 第39期
アルゼンチンタンゴにハマっている。聴くのと踊るのと両方だ。週に1回か2回はレッスンに行き、家でも毎日30分から1時間は練習をする。朝起きたらタンゴのCDかコンサートのDVDを流す。 いったいなぜ? きっかけは? その質問に対して、端的に答えるならこれしかない。「嘔吐です」だ。サルトルの書いた小説のことではない。リアルな、肉体的行為としての嘔吐である。 * ほんの3ヶ月ばかり前のことだ…
当番ノート 第39期
はじめまして、モクです。 これから2ヶ月間、ここで連載をさせていただくことになりました。 平成6年生まれ、現在23歳です。 親の仕事の関係で小さい頃から引っ越しが多く、幼稚園を2校、小学校は3校通いました。 同じ県内でしたがそれぞれの学校にカラーがあって、そこにいる生徒や先生もちょっとずつ雰囲気が違っていました。 上京するまでの最後の7年間は、新潟市の小さな海辺の街で暮らしました。 家の裏には防…
当番ノート 第39期
ご無沙汰しています。 お元気ですか? 最後に会ったのは、今年の頭。2017年を無事に終えた感謝とこれから始まる2018年を祈願するために、天狗で有名な神社に行ったのが最後かな。広々とした境内、太く長い杉の木に囲まれていて、大きな門の入り口を抜けて歩いていくたびに「囲まれている」という感覚になった。しばらく会えていなかったから、最近のこと、家族や仕事のこと、好きなことや好きじゃないことを話したような…
当番ノート 第38期
これで私の投稿は最後になります。 あっという間でした。このような自己表現の場所があるなんて、とても有り難い機会でした。感謝します。 私は(描く才能)を貰って産まれてきたのだと思います。 幼少期の事を思い出しても、社会人になって振り返っても、自然と周りに絵を描いている人がおり、絵といつもそばにいました。(絵を描け)というメッセージだったのだと今、そう捉えるようにしています。 (描く)努力はこれからも…
当番ノート 第38期
散歩 ただ歩く そのことで世界が変わる 自分の頭で考えてもどうしようもないこと 外に出るといろんなものが助けてくれる 風が吹き 人がいて 空が青い アイスクリームを買いにいく ヨーロッパの夕方は長い 一日が全て終わって まだ 外が明るい
当番ノート 第38期
ゴールデンウィーク最後の日、私は困っていた。5月の月曜日が5回あることに気づいたのだ。全8回だと思っていたアパートメントの連載が、9回ある。 「なんで最初に確認しておかないんだ……」と過去の自分を責めた。いつもそうだ。大事なところで必ず抜けている。カフェで第7回目の記事を書いている途中なのに、私の頭の中は9回目でいっぱいだった。 そうは言ってもあるものはあるんだし、残り1記事何を書こうかと、冷めた…
当番ノート 第38期
嘘をつく自分がそこにいる。 相手に嫌われまいと、ここで働き続けるためだと言って。いつしか僕の中のNoとYesの境界が曖昧になってゆく。そして、嘘をつくたび、僕は自分を見失っていく。浴びせられる暴言を、笑顔で、意にも介さないふりをして受け流してみる。開きなおるんじゃないよ、と言われる。どうして君たちは気が付かないのだろう。張り付けた仮面の内側に渦巻く、ほんとの僕に。 普段から嘘をつき続けるライターの…
当番ノート 第38期
2016年の6月に、ペルーへ行って先住民の儀式に参加しました。その経緯を書いてみます。 ・大いなる存在 目の前の途方もなく偉大な存在から目をそらすことができないまま、私はその場に座り込んでいた。 エジプトの壁画に描かれている半人半獣のような姿形をしたその人は、私の事に気づいていないはずはないのに、じっと前を見定めたままだ。 この姿はおそらく、私の主観によって作り上げられた神さま的なもののイメージな…