当番ノート 第37期
私は今、家の近所の小さな公園の、大きな桜の木の下のブランコに座って、カツサンドコッペパンを食べながら、この文章を書いている。風が吹くと、落ちた花びらたちが踊るみたいにころころと走るのが、綺麗。 食べているカツサンドは、さっき、住んでいるアパートのすぐ裏の通りにあるちっちゃなパン屋さんで買った。本当にすぐ近所なのだけれど、初めてパン屋さんがあることに気がついた。いつも何時からやっているんですか?と何…
当番ノート 第37期
3月5日(月) 業務委託先のオフィスに行って作業をする。今日中に提出しておきたい原稿と企画書の仕上げ、それから担当している動画の進行管理で、指先が爆速で動いて頭の中がグラグラと煮えた。 苦手なことややるべきことはサッサと終わらせて、残った時間で好きなことをする、というのは、うちのお母さんの教育方針で、わたしにもそれが染みついている。月曜日と火曜日に睡眠時間を削って仕事を終わらせててでも、水曜日から…
当番ノート 第37期
(※本稿は公の場であるいうことを考慮した記述を含みます) さて、この当番ノートも残すところ2稿となった。 読み返してみて、ここ’アパートメント’の’一つの部屋’としてどうだろう、と考えてみると、 特徴的な机とか本棚とかはあるのだけど、床とか壁とか、そもそも広さとかが伝わってこないなと感じた。 いや、もしかしたら感じてくれる人もいるのかもしれないけれど…
当番ノート 第37期
大切な場所がある。 大阪駅から歩いて15分ほどの場所にある、iTohen(いとへん)という場所。 2006年から4年ほどアルバイトをさせてもらっていた。 大学を卒業して、もう一度他大学に入学することになり、求人誌を見ながら「いろんな人に出会える場所で働きたいな」と思い、ふと、頭に浮かんだ場所がiTohenだった。 大学在学中、他学部の学部棟に行き、気に入ったフライヤーを集め、ギャラリーやイベントを…
当番ノート 第37期
入院中祖父は宝箱の話をした。 それは、よくあるプラスチックの、書類や小物を入れるような引き出しだった。 そこには、若い頃に2年だけ入隊したという、警察予備隊時代の写真と、その頃を思い出して書いた日記と、その頃に友人からもらった手紙と、父が上京してから祖父に送った手紙と、昔祖母に買った指輪と、いつの間に撮ったのか、遺影用の写真が入っていた。 祖父が亡くなって、私たちはその宝箱を開けた。85年の人生で…
当番ノート 第37期
2月26日(月) 朝起こしてもらうと、もう7時半になっていた。飛行機が飛ぶの、9時15分なのに! 朝ごはんをかきこんで歯を磨いて荷物をまとめる。名残惜しむ暇もない。 お母さんが車で送ってくれることになって、わたしとお母さんが先に車に乗りこむ。恋人さんだけお父さんに呼び止められて、お父さんは恋人さんに戸籍謄本を渡して、何かを言いながら恋人さんの手を強く握っていた。 恋人さんも車に乗り、お父さんに手を…
当番ノート 第37期
(いつか伊勢参りに行ったときの写真です) 本稿では、私にとっての青春を共にした人、さとしさんとの再会について書いていく。 前稿の最後に記したように、私はとかく怖かった。 ここ数年間、たびたび去来していた「大切な’何か’を失ったのではないか」という 感覚への答えを、さとしさんは持っていると思っていたからだ。 私は、さとしさんからどう見えるのだろう。 再会を経て、私は、人と人と…
当番ノート 第37期
2010年10月から2011年9月まで、夫と一緒に、ドイツのベルリンに住んだ。 2度目の大学を卒業する頃「海外で活動したい」という思いが強くなり、卒業した年にワーキングホリデービザを取り渡独。 スタジオを借りて稽古したりレッスンを受けたり、美術館やギャラリー、舞台を鑑賞したり、ドイツ以外の国に旅をした。 友人のFranziskaと街中を走り回って、夫に写真を撮ってもらったり。 Miss Hecke…
当番ノート 第37期
雨の日の夜に、喫茶店に来る。 雨の日の喫茶店は、とても好き。 雨に濡れない安全なところにいることを感じられるし、元気でいなくても、罪悪感がないから。 喫茶店て少し不思議な場所だなと思う。 それぞれが1人の時間を過ごしに、人がいる場所に来る。一人一人観察したいけれど、あんまりじっとも見られないから、横目にちょっとずつ見る。 カフェオレボウルに入ったたっぷりのカフェオレが運ばれて来る。嬉しい。 喫茶店…
当番ノート 第37期
2月19日(月) エロデューサーの佐伯ポインティと、ツドイの今井さんと一緒に某たのしい企画の下見で湯河原へ。朝早く起きたのだけど、恋人さんが気持ちよさそうに眠っていたので(と、人のせいにして)5度寝くらいしたら、11時になっていて、化粧もそこそこに駅まで走る。こんなことなら、もっと早く起きればよかったといつも思う。でも気持ちよく眠っていたのだから、それはそれでいいことにする。 駅に着いて乗れる電車…
当番ノート 第37期
(品川の好きな景色 たまに行ってぼーっとします) 皆さんは’青春’と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。 それは、景色かもしれないし、音楽かもしれないし、部活動かもしれないし、誰かとの出会いかもしれない。 いやいや、齢五十を超え今まさに青春!答えはまだ先だ!なんて場合もあるだろう。 私が今手にした青春は、18歳から20歳の間の2年間であった。 ——…
当番ノート 第37期
小学5年生の時、私は学校に行っていなかった。 いわゆる不登校である。 時間の感覚って不思議なもので(大人になって小学校の時の机や椅子を見て、すごく小さく感じるように)、今となっては一体どれくらい学校に行っていなかったのかも思い出せない。 担任の先生が家に来てくれたこと。 母とハンバーガーを買って公園に行ったこと。 塾の先生達が本当に面白い人たちで、いつも応援してくれていたこと。 踊るのが楽しくて仕…