今日の満月は雲の向こうに蒼く見えている。
あんなに高いところにある雲は、氷の粒だろう。
うっすら透けた月は甲殻類の背中みたいだ。
月にはうさぎがいるというけれど、そこには何が書いてあるのか。
昔のひとはその模様を読み取って、未来のことを占ったのではなかったか。
いや、それは亀だったかもしれない。
夜気を拭い取るように、ギャラリーの扉を開けた。
〈前回までの展示〉
『縫い目』
『つむじ』
『鏡』
『耳鳴り』
『植物園』
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「刺繍」
絵: 古林希望
文: カマウチヒデキ
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共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け合わせていく企画「ギャラリー・カラバコ」。
次の満月の日をお楽しみに。
:Exposition Past :Exposition Upcoming
:01 桟橋 :Getting Ready….
:02 物差し
:03 帯
:04 時化
:05 吃り
:06 影絵
:07 隠者
:08 ウミネコ
:09 うぶすな
:10 蟹
:「ギャラリー・カラバコ」あとがき対談 2017