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かさねのせかい はざまのものたち

かさねのせかい はざまのものたち

かさなりのはざまをいきかうものたちのこえに耳をすませてみる
このものたちは コトに成らなかった ヒトの「もしも」を好んで食って靄となるので
いつかのあなたの涙を知っているかもしれない
古林 希望

古林 希望

絵描き

私が作品を制作するあたって 
もっとも意識しているのは「重なり」の作業です。

鉛筆で点を打ったモノクロの世界、意識と無意識の間で滲み 撥ね 広がっていく色彩の世界、破いて捲った和紙の穴が膨らみ交差する世界、上辺を金色の連なりが交差し 漂う それぞれテクスチャの違う世界が表からも裏からも幾重にも重なり、層となり、ひとつの作品を形作っています。

私たちはみんな同じひとつの人間という「もの」であるにすぎず、表面から見えるものはさほどの違いはありません。
「個」の存在に導くのは 私たちひとりひとりが経験してきた数え切れない「こと」を「あいだ」がつなぎ 内包し 重なりあうことで「個」の存在が導かれるのだと思います。

私の作品は一本の木のようなものです。
ただし木の幹の太さや 生い茂る緑 そこに集う鳥たちを見てほしいのではありません。その木の年輪を、木の内側の重なりを感じて欲しいのです。

Reviewed by
マスブチ ミナコ

鮮やかな黄色い点が目に飛び込んできて、ミモザの花みたいだと思った。
よく見ると連なりかたも様々。黄色い点が「主役」のようでも「脇役」のようでもある。

他にもたくさんの要素がある中、黄色い点だけ挙げても、人によって湧き起こるものは違うだろう。
「ミモザの花」のように言葉にならないかもしれない。
9枚並んだ中から自分のお気に入りを探す人もいるかもしれないし、
人の数だけ感じることがあり、違うことがあるのだと思う。

少し窓を開けて、古林さんのこの作品を見ながら「自分」を味わってみませんか。

「人は違って当たり前」と言われながら、どうにもそれが難しく、
生きづらさを感じる人が多いように感じる今の社会。
納得がいかなくても、なんだかよくわからない流れに呑まれることも多いと思うのです。
それでも、この1枚の絵を前で、わたしたちはただの「人間」でいられる。

ただ思ったこと、思ったけど言葉にできないことも味わってみたい。
「Aに見えるけど、Bにも見える」って矛盾みたいなものも感じるかもしれない。
だけどそれも、テストの解答みたいに絶対的なものなんてきっとない。
「答え」を出すだけでなく、「わからない」も楽しめたらいいですよね。


改めまして、これから古林さんの連載のお供をする、アーティストのマスブチミナコです。
元々はわたし自身、「答え」を探すことが大事だと言い聞かせながら、もっと自由に振る舞いたいという葛藤がありました。
古林さんの「重なり」にわたしの人生を重ねると、思い起こされることがたくさんあります。
どんなに重なり合わないように見えるものでも、見かけだけではなくて重ねることができるのがアートだと思っています。
古林さんの作品に何を添えるでもなく、ただそこに「人間」としていられたら、と思っています。

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