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3F/長期滞在者&more

家日記 2020年10月

長期滞在者

未来が明るいものだと信じて生きたわけでは決してないけれど、だからといってやさぐれた気持ちで生きてきたわけでもない。

ただ今月は、どんどん視野が狭くなっていくような気持ちがして怖くなるときが何度かあった。

どうにもならない、逃げ場のない感覚。

友人と会って、能を鑑賞して、食事をしながらなんとなしに喋る時間があると、その薄暗い感覚が和らいでいくようだった。

やっぱり、人と会わない、外の世界に触れない、というのは人として生きていくうえで限界なんだろうか。

すとんと日が暮れてしまうのも寂しい。

なにか、楽しい知恵で乗り切らねばと思う。

10月1日(木)
最近れいちゃんは湯船につかってるんだね、というと、体温をあげるとそのあとよく眠れるとのことだった。そう、お風呂は偉大なのです。私も一日の終わりにぼんやりお湯につかるのが好き。

10月2日(金)
週末。ぼんやりしてしまう。れいちゃんと台所で会って、仕事が順調そうなのを知り嬉しい。

10月3日(土)
スクーリング。今年のスクーリングはZoomで行うことになったので、家から受講できる。ただしずっと同じ部屋で同じ姿勢でいると、それはそれで疲れてしまう。近所の担々麺屋に入ったら、今井くんに遭遇した。

10月4日(日)
スクーリングが終わってへとへと。集中するから、というのもあるのだけれど座りっぱなしも大変である。夕方外に出ると心地よかった。

10月5日(月)
れいちゃんと夜話していて、「サーティワンのバラエティパックを頼んでみたい」と言われハッとする。せっかくシェアハウスにいるのだから確かにやってみたい・・・。何年も住んでるのに、みんな忙しくて予定も合わせるのが難しく、思いもよらなかった。ぜひやってみようという話になる。

10月6日(火)
お風呂から上がると、居間で純君が倒れていた。起きている様子。おつかれさまです・・・。ところで私は最近、仕事のことばかり考えてしまわないように色々と気をつけている。去年は体が限界を迎えてしまったし、今年は長距離マラソンを走るような気持ちでやっていきたい。

10月7日(水)
夜、純君の部屋から何やら英語で話す声が聞こえる今日このごろ。えらいなあ。

10月8日(木)
久しぶりに居間で住人がたまたま集まる。実は純君の調子が過去一番まずそうだという話になり、れいちゃんまで「休め!」と言い出すほど。今井くんは純君と山登りしたとき、とにかく自分を追い込みがちなことに言及するし、たしかになんだか私に近い、まずいものを感じる。Tarzanの「自律神経特集」を手渡して明日は休みなよと説得。

10月9日(金)
台風が近づいている。純君は結局今日はフルで仕事をした様子。大丈夫かなぁ。

10月10日(土)
朝からずっと雨なのに、休日だとどうしても外出したくなってしまう。長靴を履いて外へ。夜、居間でくつろぐれいちゃんの脇には勉強の本が。この家は真面目な人が多い。なんだかんだで。

10月11日(日)
台風が過ぎたというのにすっきりしない天気。今井くんと「寒いのか暑いのかよくわからないね」と言い合う。純君が富山の特産品を買えるサイトを教えてくれたのがきっかけで、家のみんなで鱒寿し会をしようという話に。鱒寿し、私は大好き。

10月12日(月)
鱒寿しの話題が住人Slackで盛り上がり続けている。やはり美味しいものは生活を楽しくしてくれる。今年はクリスマスケーキを予約しようかな。

10月13日(火)
純君、とうとう午後は休むことにしたらしい。夜に居間で会うと、ぐったりした様子だった。こんなに疲れるまで働くなんて…と思いつつ、私もやや頭痛がしており、はやめに寝ることに。

今井くんはいつの間にか草津温泉に行ってきたらしく、お土産の草餅をもらう。美味しい。しかし本当に、一体いつの間に…。

10月14日(水)
仕事が忙しいという昴君。そういえば知り合いに「今年転職した」というとコロナで職を失う人が多いのに、ラッキーだったね!と言われてはっとした。うちの住人は今の所無事に仕事している。今度神社にお参りにいったとき、神様にありがとうと言っておこう。

10月15日(木)
風邪かもしれないと思い、急遽昼過ぎまで休む。少しは歩かねばと外に出たら八百屋で大ぶりの種無し巨峰が売っていたので購入。夜にみんなと食べた。とても美味しい。みんなと食べれることがありがたい。

10月16日(金)
夜、昴君が白菜を買って帰ってきた。白菜。もう冬が近づいているのだ。

10月17日(土)
週末。今日と明日は通信制の大学の、遠隔授業がある日。Zoom文化には慣れたつもりだけど、やはり直接ディスカッションしたいなという気持ちは強い。先生は「パソコンに向かってずっと講義していると自分は何に向かっているんだろうという気持ちになる」とのこと。先生も大変だよな・・・。

10月18日(日)
目に視力向上のためのレンズを入れる手術を受けるという純君。これでコンタクトレンズの世界とおさらばできる!と喜んでいるけれど、コンタクトレンズをつけたこともない私からすると手術の内容を聞いただけで気絶しそうである。再来週施術するとのこと。がんばれ・・・!

10月19日(月)
お風呂場の明かりがチカチカする。これはもしや電球の変え時だろうか。今井くんが見てくれるというのでお言葉に甘える。今井くんはこの家の「電球大臣」で、良い明るさ、色を選んで買ってきてくれるのだ。

10月20日(火)
まさかの電球ではなく配線が壊れている疑惑。真っ暗でもなんだからといって、昴君がスポットライトを脱衣所に置いてくれた。ありがたい。しかし、自分の背中に光を受けながらシャワーを浴びていると「リサイタルしてます」という雰囲気が出る。不思議なお風呂時間が生まれてしまった。

10月21日(水)
今日は今井くんが選んだ4つの鱒寿しを取り寄せて食べ比べする会。なんという贅沢!高田屋、松川、青山、吉田屋。老舗の高田屋と、脂の乗った鱒を使った松川が気に入った。これだけたくさん食べて、デザートのシャインマスカットまで食べたのに、今井くんと純君はシメにカレー。育ち盛りの高校生のようである。

10月22日(木)
出社する日。通勤電車が混んでいて、気が滅入ってしまう。もう感染症のことなんてどうでもいいのかな。そう言いながら、自分も外出しているのだけれど・・・。

10月23日(金)
友人と能を鑑賞。能独特の間、表現に圧倒される。ごはんを食べながら、あれってどういうことだろう、と語り合う。感染症でこういった機会がめっきり減っていたけれど、こういう時間が何よりも大切。

10月24日(土)
今井くんと純君は北海道へ。私は疲れていたのか、夕方から眠りこけてしまった。時々こういうことが起きる。

10月25日(日)
アパートメントのイベントで、高円寺へ。イベントといっても、小規模な人数でランチをするだけ。それでも私にとってはとても嬉しい。家を出て、誰かと会って食事をするということ。お店は本がたくさんあって、風通しがよく、食事も美味しくて、素晴らしい空間だった。

10月26日(月)
今井くんと純君がいないだけなのに、家は水を打ったように静かだ。ふたりの掃除を代わってやってくれるれいちゃん。やや体調の悪そうな昴君。私は最近、仕事を終えてからなるべく歩く時間をとっている。それでも本日の歩数はたったの2738歩。

10月27日(火)
今井くんと純君が帰ってきた。秋刀魚寿司なるものをお土産に買ってくれた。どうやら釧路名物らしい。

10月28日(水)
夜、ごはんを食べていたら居間でれいちゃんが前職の「実は言えなかった話」をしてくれた。よく逮捕されなかったな?と思うような人たちがいたらしい。なんというか、世の中には「まともな勤め人という仮面をかぶった変な人」がいるんだなとつくづく呆れてしまう。スーツを着てまともそうな顔で働いていても、ダメダメ、と大声で注意しなくてはならないような人はいるものだ。

10月29日(木)
純君、無事に目にレンズを入れる手術を終えた様子。しばらくは目を触らないように、ゴーグルをしたり眠るときは眼帯をつけなければならないらしい。しかも髪の毛も洗えないと・・・!!ひとまず、お疲れ様でした。

10月30日(金)
こたつが心地よい夜。昴君の作る豚キムチのいいにおいが香ってくる。

10月31日(土)
昼から通信制大学の授業。今日は純君は仕事らしい。それぞれの休日。れいちゃんは居間で鬼滅の刃を読んでいた。私もアニメだけ見たのだけれど続きが気になるので借りて読もうかな。この家で特定の漫画やアニメが流行るのは、わりとレアな現象である。

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

ある表現にふれて考察する、それを誰かと交換するという営みが持つ豊かさ。そういう時間からほかにない力をもらえるのは、作品それ自体に生命を感じるからだろうか。シモーヌ・ヴェイユが言った、パンでもバターでもなく労働者に必要なのは詩である、というような言葉を思う。

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