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3F/長期滞在者&more

家日記 2021年3月

長期滞在者

春。あまりにも落ち着かないこの季節。私をふりまわす花粉。気圧。寒暖差。

よく眠り、散歩したときに出くわす花や草に癒やされて、美味しいものを誰かと食べるときにだけ、人間に戻る。

3月1日(月)
今井君が買ってくれた訳ありみかんを、みんなで「これ、食べれそうかな?」と選別しながら食べる。今週中に食べきらないと危なさそうだ。

3月2日(火)
今日はみんな家にいる日。壁の向こうで純君が仕事しているのがわかる。

3月3日(水)
約2ヶ月ぶりに仕事場へ。電車はそこそこ人がいて、緊急事態宣言中という実感がない。街を歩いているときに老舗の居酒屋が閉店しているのを見て、心がしゅんとしてしまう。

3月4日(木)
夜、コンソメの良い香りが家に広がる。れいちゃんの作ったスープは野菜たっぷりで美味しそう。今井君は最近ほとんど家にいない気がする。忙しいのだろうか。

3月5日(金)
みんなで夕食を食べる日。今井君が以前関西に行ったときに買ってきてくれた冷凍の明石焼き、純君がふるさと納税で買ったイカの味噌漬け、私の気になっていた鯖棒鮨を購入して分けて食べる。統一感のない夕食だけれどどれも美味しい。

純君の帰宅時刻をみんなで予想したところ、想像よりも早く帰宅してきたので全員びっくり。

3月6日(土)
今井君、純君、れいちゃんはスキーへ。日帰りで行くので早朝に出ていった。今井君とはこの家が始まってからの仲だけれど、彼がこんなにもスポーツをしているのは新鮮。私はのんびり家で留守番。

3月7日(日)
サウナ好きの純君から「今日はサウナの日なのでサウナがとても混んでいた」と聞く。言われてみれば、語呂合わせでサウナの日。しかし日本はこういう語呂合わせが好きだな、と思う。猫の日とか。

3月8日(月)
みんな家にいる日と思いきや、今井君とれいちゃんは夜出かけていった様子。何をしているのやら。私は最近、散歩と買い出し以外ほとんど外出していない。

3月9日(火)
胃腸の調子が悪いうえに薬を切らしてしまった。昴君から箱ごと薬をもらい、少し落ち着く。

3月10日(水)
今度は頭痛。春は不調が多い。多すぎるので、もはや逐一落ち込まない。夜、今井君と純君で10年前に何していたかを話し合う。働き始めた頃の私、学生だった純君。あまりにも多くのことが変わってしまったし、きっとこの先10年でまた変わっていくのだろう。

3月11日(木)
仕事をしつつも、引き続き不調を感じる。何度でも言うのだけれど、春とは不調の季節であり、あらがっても無駄である。

3月12日(金)
居間の物干しにシーツをかけようとしたら、竿をうっかり落として障子に穴を開けてしまった。住人用のチャットで謝罪すると、夜純君から「派手にやりましたね!」と言われる。うう、ごめんなさい。そろそろ張り替えるか…。

3月13日(土)
夜、23時を過ぎても私しか家にいない様子。みんな週末を楽しんでるかな。

3月14日(日)
ポークステーキを作って満足そうな純君と、二日酔いでふらふらの昴君。それぞれの週末。一番遅い帰宅は今井君。

3月15日(月)
れいちゃんはカレー。純君は牛丼。そういえば純君の影響でチェーンの牛丼を食べようと思いつつもまだ挑戦していないのだった。家が肉と油の匂いで満たされる。

3月16日(火)
乳酸菌飲料を定期購入すると意気込む純君。睡眠の質も上がると聞いて私も気になってしまう。

3月17日(水)
数カ月ぶりの来客!
今、この家は時世特有の来客ルールを設けていて、それに則って来てもらった。体調の悪いときは無理してこないこと、換気すること、滞在時間は数時間以内などなど。

3月18日(木)
昼に起きていた昴君。夜型にしては早い。目が覚めてしまったのだという。春だからかな。
今井君は展示が始まるらしく、忙しいのかほとんど家にいない。今井君が買ってくれたいちご大福を食べて幸わせ。

3月19日(金)
夜、頭痛で伏せてしまう。最近画面を見てる時間が長いからか。

3月20日(土)
深夜になっても今井君と昴君が不在。みんな忙しそうだな。私はぼんやりして過ごす。

3月21日(日)
ずっと雨。みんな家にいるのかなと思いきや、今井君やれいちゃんは用事ででかけていく。私といえば、怠惰に過ごす。気圧が下がるのも辛いのだが、上がっていくときに体がつらくなるのだ。

3月22日(月)
展示が始まったといえ、今井君の不在ぶりはここ数ヶ月のなかでもダントツな気がする。昴君は相変わらずのお家キャラで、今日もほとんど家にいた様子。

3月23日(火)
電子レンジのなかに、純君の夕ご飯であろう牛丼が鎮座している。どうやら温めたあとにゆっくり食べる時間もないらしく、しばらくするとため息をつきながら牛丼を取りにやってきた。おつかれさま…。

3月24日(水)
電車で、人の多さに閉口する。緊急事態宣言が解除されたとはいえ、気が抜けない。またすぐに感染者が増えてしまうんじゃないだろうか。

3月25日(木)
確定申告に挑む昴君。相変わらず帰りの遅い純君。温かい気候なので、深夜徘徊がはかどる私。夜に道端の木や花を見るのが最近の楽しみで、まるでそれらが友人のように思うときすらある。

3月26日(金)
みんなであんこう鍋。骨が多いけれど、良い出汁がしっかり出る。雑炊にして出汁を最後まで味わい、満腹。こうして住人たちで鍋を囲むのも、この時世ならではといった気がする。昔はこんなに家で食事を共にしなkった。

純君は遅くに帰宅し、残しておいたものを食べる。金曜の夜までフルパワー。お疲れ様。

3月27日(土)
洗濯機が朝からフル回転。天気の良い休日。人がいないのを見計らって窓を開け放す。

3月28日(日)
ものすごい雨だ。そして、倒れるように寝てしまう。

3月29日(月)
確定申告に取り組む昴君。月曜の夜からお疲れの様子の純君。暖かいので窓を夜まで開けている。

3月30日(火)
今井君、忙しいのだろうか。最近ほとんど姿を見かけない。気配は感じるのだけれど。今日は純君もれいちゃんも在宅勤務。

3月31日(水)
今日も今井君の姿を見ない。今井君、生きてますか。忙しいのもほどほどにしてくださいね、純君みたいになっちゃいますよ。

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

春は体調も気分もおかしくなる、と色んな人が言うのが最近になって分かってきて、逆になぜ今まで分からなかったんだろう。多分だけれど、仕事やらで忙しくしているばかりで調子が変だということにも気付けなかった。参ったなあ。
荒々しく、激しくやって来るのは四季の中でも春だけなのだそう。気付くと空気がぬるくなって、鍋に残った食事も花瓶の水も、悪くなるのが早い。眠い頭を振りながら生活をどうにか手入れする、もうちょっとお手柔らかに頼みます、と誰にともなく思う。

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