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3F/長期滞在者&more

家日記 2021年6月

長期滞在者

振り返ってみると咳ばかりしている六月。流行り病じゃなくて良かったと一安心したのも束の間、咳喘息の治療が長引いている。

季節の流れや人の気配を家のなかにいるとより感じる。数年前に過労で寝込んだときも、一所で感じられるものを噛み締めていた。畳の湿った匂いや、庭ですくすくと育ってしまった草の青さを何度も自分に焼き付ける。ぼんやりしていると、自分がそのまま消えてしまう気がするのだ。

花を買って自分を慰める。悪いことばかりではないはずだ、と言い聞かせる。

6月1日(火)
夜、これからサウナに行こうとする純君が「財布がない」と言い、こたつの中や台所を探すも見つからない。どこに行ったんだろう…とつぶやきながら消えていく純君。部屋にあると良いのだけれど。

6月2日(水)
純君の財布が見つかった!なんとお金も入った状態で交番に届いていたらしい。奇跡的な治安。

6月3日(木)
咳が止まらず、昴君にカレーをテイクアウトしてきてもらう。れいちゃんはハンバーガー。
カレーといえば今井君だけれど、最近彼の食べるカレーの匂いが漂う…といったことが減った気がする。今井君、とうとうカレーに飽きてしまったんだろうか。

6月4日(金)
最近、食事中に昴君とiPadで野球中継を見るのが常だ。今日は雨でヤクルトは5回で終了。
身体に負担をかけないよう、今日は料理を休んでスーパーのテイクアウトで済ませる。

サウナにすっかり夢中の純君は明日、サウナグッズを買いに出かけるらしい。サウナグッズとは…?と全く思い浮かばなかったのだけれど、サウナハットやサウナ用の薄いパンツなど色々あるらしい。

6月5日(土)
日中は動けるのに、夕方以降は咳が出てしまう。出かけたくても、友人と電話したくてもできない。気持ちが沈んでいく。

6月6日(日)
れいちゃんがレモンケーキをお土産に買ってきてくれた!明日の楽しみにしよう。

6月7日(月)
レモンケーキを食べながら夜みんなでおしゃべり。二十一時にはお茶しよう!と言っていた純君は仕事に熱中しすぎて遅れて帰宅。れいちゃんが私の勤め先のサービスを使ってくれている話。ありがたや。

6月8日(火)
めずらしく日中寝込んでしまう。起き上がることができない。昴君に「色々重なったからでは」と言われ、ぐうの音も出ない。そういえば数年前も色々なことが重なったときにドクターストップが出たのだった。養生しなければ。

6月9日(水)
純君が居間で夜ご飯のお弁当を出したまま眠っている。余程疲れているのか…。

6月10日(木)
例のやつが出没。とっさに住人用のチャンネルで応援を呼びかける。れいちゃんがスプレーを持ってきて、純君が退治してくれて解決。あいつが出ると短時間でものすごい量のエネルギーを消費してしまう。

6月11日(金)
せっかくの週末を迎えたものの、まだ咳が出るので元気が出ない。家事をやるので精一杯である。

6月12日(土)
純君と草むしり。今井君が先日やってくれたおかげで量は少ないものの、子供の背丈くらいある丈夫な雑草が隅に生えていて両腕に力を込めて引っこ抜く。この庭は日当たりが悪く、野菜を育ててもなかなか実にならない。ミントだけ、土地を覆う勢いで育ったことがある。

6月13日(日)
なんと、虫が大量発生。飛ばないタイプの小さなやつ。食料庫を一気に掃討。どうやら誰かのホットケーキミックスに湧いてしまったらしい。グロテスクなので詳細は割愛。粉ものはちゃんと密封して、古くなったら捨てましょう…。

6月14日(月)
咳が一向に治らないので再び病院へ。咳喘息の治療を引き続き受けることに。いつになったら治るのやら…。

昴君の二日酔いがひどい。なぜ!あなたは!弱いのに飲むのか!

6月15日(火)
れいちゃんの夕食は近所のカレー屋のテイクアウト。ほうれん草カレーを見ると、私も食べたくなる。純君もカレー。

6月16日(水)
昴君と素麺を食べる。咳のしすぎで喉が疲れているので水分の多いものがありがたい。

6月17日(木)
ワクチンを打ったというれいちゃん。腕が痛いという。二回目は熱が出ることもあると聞くので、気をつけねば。

6月18日(金)
咳がつらい。一体いつ治るのだ…。長期間咳をしているせいで背中まで痛くなってしまった。

6月19日(土)
所用で神保町へ。かなり人が戻ってきた印象。私の住んでる街も本来ならもっと人の往来があるはずなのだけれど、もう一年ほど人がいないままなのでちょっとした人混みを見るだけでも「人だ!」と感じてしまう。

6月20日(日)
人気がない家。このタイミングで諸々の掃除を…と思ったけれど、自室のものが多すぎるので自室を掃除。

6月21日(月)
近所のコーヒーチェーン店が閉店すると知り、驚愕する。仮にも学生街でカフェが閉店とは。別の業態で後日再オープン予定とあり、別業態ってなんだと思う?とSlackで聞いたところ、純君から「蘭州ラーメンでは」と言われ、まさかの大穴狙い。そんなことあるか。

家の周りは随分と店が閉まった。閉まったままで何も店が入らないので、このままゴーストタウン化するかもしれない。

6月22日(火)
咳による身体への負担と、眼精疲労もひどいので整体へ。純君も整体に行こうとしていたらしいのだけれど予定が合わずサウナに行くという。それにしても、5人の住人のうち4人を抱える整体師、さすがである。残りは昴君のみ。行きなよとしきりに勧めるのだけれど、天の邪鬼なのでなかなか行ってくれない。

6月23日(水)
整体にいっても目の疲れがとれないと嘆いたら、れいちゃんが「純君は最近90分コースがデフォルトになっている」と教えてくれた。私も次はそうするぞ。

6月24日(木)
居間の天井で小動物の気配がしたと純君が教えてくれてにわかに殺気立つ。もしねずみだとして、居住空間に入ってきた瞬間に地獄である。戦争である。数年前にねずみが家に入ってきてしまったときは、扉を削られたり壁を汚されたりで大変だった…。しばらくは住人のみんなで警戒モード。

やれやれと思っていたら虫が家に入ってきて私が大騒ぎしてしまい、あわただしい木曜日。

6月25日(金)
私の住んでる区では来月にワクチンを接種できるかもしれない、と今井君が共有してくれた。私は職場がワクチンを確保してくれたので明日打つ予定。不安はあるけれど、咳が止まらない=咳喘息=呼吸器系の基礎疾患あり、ということで打つことを医者から勧められ、決心した。

6月26日(土)
ワクチンを打った。特に異常もなく、れいちゃんの言っていたとおり打たれた方の腕が痛いくらいで済んでいる。

6月27日(日)
純君、自炊したほうが翌日体調が良いのだと言い、豚肉と小松菜の蒸煮やなめこのお味噌汁など美味しそうな献立が並んでる。すばらしい。私はそれを横目にバタールにパンを塗り、牛すじのトマト煮込みをもぐもぐ食べる。がっつりした夕食。

6月28日(月)
れいちゃんのカップヌードルの匂いに誘惑される。最後にあれを食べたのはいつだろう。仕事で追い込まれたときだった気がする。昴君がスマホを見てそわそわしているので何かと思えば、仮想通貨のイベントがあるのだそうだ。彼は英語が苦手と言っていたのに、英語だらけのサイトを頑張ってみている。

6月29日(火)
近所のカレー屋で昴君とカレーを食べて帰宅すると、今井君がその店のテイクアウトを食べていた。どうやら知らぬ間にすれ違っていたらしい。しゃっきりしない日にカレーを食べるのは良い。汗が出てくるし。

6月30日(水)
今日の夕食はBASEブレッドだ……とつぶやく純君。お味噌汁を多めに作っておけばよかった。

浅井 真理子

浅井 真理子

もの書き。
エッセイを書いています。

Reviewed by
黒井 岬

不調が長引くと、体がいったい何に不満を訴えて拗ねているのかてんで分からなくなる。色んなことを控えて休まざるを得ない期間も、必要だから体がそうなるのだと個人的には思っているけれど。梅雨の低気圧もしんどいので、本や映画なんかの静かにできるインプットを心がけたりなどしている。それにしても、気象予報の「活発な梅雨前線が停滞」の文字列の絶望感はすごい。夜に聞く雨の音だけは、ずっと美しい。

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