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3F/長期滞在者&more

冬の澄んだ日に

長期滞在者

電車に乗っていると、ベビーカーを引いた女性が乗ってきた。

それを見た優先座席に座っていた全員が立ち上がって、どうぞどうぞと席を譲っていた。

その見知らぬ者同士が譲り合う光景がとても心がすっきりするもので、それはもしかしたらラッシュアワーが過ぎた後の昼前の少し落ち着いた時間帯だったからかもしれないが、なんとなく冬の晴れた空気のおかげな気がし、思えるならそう思ったままでいたい。

今年の冬は晴れが多くて、なんて過ごしやすいんだろうと思う。

澄んだ空気で雲が無いときに富士山を間近で眺めたいと思い、休みの日に河口湖へ向かった。

途中、大月駅から枝分かれした路線に乗ると、車両は海外からの旅行客で溢れており、まるでスイスかどこかのリゾート地に来たように思えた。

そして車両から富士山が見えるたびに写真を撮ったり、途中の停車駅で扉開くたびにホームに降りて富士山をバックに写真を撮ったりと。

こんなワクワクするような電車はなかなか無かった。

その日は富士山が抜群によく見える日で、歩いている観光客の顔もみな満足気だったように思える。特殊なレンズや重たいカメラを背負って富士山を撮影している海外からの観光客を見かけると少し誇らしげな気持ちになる。

ちょうど1週間前にあたる1月17日は生まれ育った地域にとって特別な日で、実家にいる頃は毎年1月17日の夕食はおにぎりのみだった。大学で上京してからもその生活を続けていたが、いつ頃からか自分の中で徹底されなくなった。

今年はちょうど震災から30年であったため、例年よりもテレビでも神戸に関する特集が多かった気がする。

ドキュメント72時間では、以前放送された長田の商店街にあるお好み焼き屋が取り上げられていた。

1月17日には毎年三宮の東遊園地にろうそくが灯され、多くの人がその場に集い、5時46分に黙祷を捧げる。その空間には大きな音も無く、それぞれがあの日のこと、あの日からの生活、あの人のことを想う。誰にも邪魔されたくない神戸の空間。毎年その日だけJRは早朝に臨時便を出していたが、今年からその臨時便が無くなった。

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