仁川国際空港に予定時刻の2時間遅れで着いて、市街地までの特急電車に乗り込む。
行きのフライトでは、機内のスクリーンで選べる映画の中にイントゥ・ザ・ワイルドが入っていて、久しぶりに見る。
結末が分かってるだけにずっしりした気持ちになってしまう。
短いフライトの間では、個人的に一番好きなシーンの主人公がクリステン・スチュアート演じるキャラと仲睦まじく過ごすシーンまでは辿り着けなかったが、農場の人達と豪快にバーで語り合うシーンまでは見れてよかった。
フライト中に機内で何の映画を見るかによって、降り立った国での過ごし方が変わる人も多いんじゃないかと思う。
空港から市街地への特急電車の中は日本語も聞こえるが、遅い時間なので寝てる人が多い。車両のモニターではソン・フンミンやキム・ヨナをモデルに起用した外資企業のひげ剃りや化粧品のCMが流れている。と、いきなりモニターが博物館で流れていそうな雰囲気の映像に切り替わり、竹島は韓国の領土だということを示す放送が流れる。あ、韓国に来たんだという気持ちになる。到着するまでの45分ほどの間で3回は流れていた。
ホテルはとても狭かったが、特に寝るだけなので問題無かった。
翌朝、韓国のコーヒーチェーン店でモーニングをしたいなと思い歩いていると、店主が1人で営んでいるとても居心地のよさそうな個人店があった。とても感じのよい店主が営んでおり、日本でコーヒーショップを開くとしたらこういう店にしたいと思えるくらいの店だった。

ただ、時間をかけてハンドドリップしてくれたコーヒーはサードウェーブ系のフルーティで酸味の強いコーヒーで、毎朝熱い濃いコーヒーを飲まないと目が覚めない自分としては少し苦手な味だった。
それからソウルの消費の中心地と言われる明洞に向かって歩いた。今回、日本で韓国滞在用のWi-Fiを借りてきていたが、電源をつけてもまったく繋がらない代物だった(結局この旅で一度も繋がらなかった)。
歩いていて急に上野のアメ横のような市場が出現した。そこが南大門だった。
南大門から10分ほど歩くと明洞に着いた。明洞は、通りの作りは歌舞伎町、並んでる店は渋谷というような街だった。
海外の人が渋谷や新宿を訪れるとこういう味わい方をするのかと感じた。
明洞ではあまり立ち寄りたい店もなく、ソウル駅へ戻って地下鉄で本日行く予定のライブハウスのある新村駅へ向かう。
日本で観て刺激を受けたSLANTというハードコアバンドがライブするのに合わせて、今回フライト数日前にチケットを取った。
昔ながらの店では無いがそこそこ人が入ってる店でトッポギ鍋のようなランチを取る。
鍋は火の止めるタイミングが難しかった。肉が入って無かったが、トッピングだったのだろうか。麺やトッポギでたらふく炭水化物を食べる。
辛さも汗がほんの少し出るくらいでちょうどよく美味しかった。
それから小雨の中歩く。
大通り沿いにシネコンと単館の中間のような映画館があり、中を覗くと夜にkneecapの自伝映画をやることを知る。チケットの機械をタッチすると、客席は数名分予約されていた。
ライブが終わって時間が間に合えば行こうと思った。
途中丸山町のようなホテル街があり、入り口には出会い系なのか、待ち合わせをしているのであろう女性がいた。
その先の大通りでは、通りを塞いでフランス大使館と連携したフェスティバルをしていてワインの試飲やらスイーツやらが売っていた。
どことなく神保町のブックフェスタが思い浮かんだ。
といっても自分の頭の引き出しにあるのは自分が足繁く足を運んだ場所ばかりであり、もっと似ているような場所も日本にあるだろう。
そこから、弘大の方まで歩くと、感じのよい緑道があり、おしゃれな人たちが散歩をしていた。
その奥には古着屋や独立した個人店が並ぶとても面白いエリアが広がっていた。
とある本屋のポスターでパティ・スミスの展示をやっていることを知る。
先日、日本と韓国で公演をしていたのを知っていたが、その公演をもとにした展示会がやっていたとは知らなかった。
店員さんに場所を尋ねると、Google Mapで示してくれた場所は、泊まっていたホテルから徒歩10分ほどで、朝に立ち寄ったコーヒーショップの裏の裏に位置していた。
そんなことがあるんだと導かれた気持ちになり、翌朝行くことにした。
そこからはひたすら歩き、たまにベンチに座りアイスコーヒーを2時間に1杯のペースで飲んだ。
それにしても韓国はカフェが異常に多い。多すぎる。みんなそんなに語り合うことがあるのだろうか。
ライブ前に腹拵えをしようと歩いてたら、老舗感のある家族経営感のある肉屋が営んでいる焼肉屋があり入った。
扉を開けて1名だと指で伝えるも、店主から☓印で入れてくれなかった。
そのまま歩いていると、タクシーから運転手が降りてきてと通り沿いの飲食店に入っていった。
その店で1名だと指で伝えると、そのまま席に通され、注文も聞かれること無くご飯が出てきた。
お盆に乗って出されたのが、韓国映画で散々見てきたような飯でとても嬉しかった。まさにこういうのを味わいたかったんだと思う素朴な味で、こういうのが一番美味しい。

今回行ったbabydollというライブハウスは日本のantiknockやearthdomと雰囲気がして、同じカルチャーの場では同じ居心地になるのだと感じられた。
SLANTはもちろん、コタキナバルのハードコアバンドSucide Club含めてどのバンドも圧巻だった。

ライブハウスの中でインドネシアからやってきた3人のパンクスと仲良くなり、写真を何枚か撮られる。自分のスマホでも撮ればよかった。
転換中、終演後も会場で流れていたTurnstileの新譜をみなが口ずさんでいた
コーチェラでCharli XCXのステージでも映されていた“Turnstile Summer”をまさに痛感した。
ホテルに帰ったが結局2時半頃まで寝られず。翌朝は9時頃に起きる。
朝、ホテルの近くにあったパン屋とカフェが合体した店に入りモーニングを取ったが、日本の方が物価が安いことを思い知らされる。
高めのサンドイッチを食べてWi-Fiを拾って、イントゥ・ザ・ワイルドと真逆の過ごし方をする。
Wi-Fiを拾える間に色んな人にLINEを送る。
それからパティ・スミスの展示に行く。場所が意外と込み入った場所にあり裏口が辿り着く。


とても素晴らしい空間の場所だった。
こういう場所にお金を落としたい。
展示もサウンド含めて迫力があり、前日のSLANTのライブ然り、怒りを表現することを意識する。
パティ・スミスの手書きの草稿が見られるのも、言葉が立ち上がってくる瞬間を垣間見える気がしてよかった。
電車から車窓を眺めたくなり、適当に電車に乗り込む。降りたのが大学の学生街だった。
そこで冷麺を食べた。

冷麺が運ばれてきたときにハサミも置かれたが、切って食べろということなんだろうか。
冷麺を食べていると、麺を歯で切るのに苦労し、喉に詰まりそうになる。
お店のおばちゃんが駆け寄ってきて、ハサミで切ってくれた。その後ハサミを水洗いして定位置に戻していた。
冷麺は抜群に美味しかった。
テレビではアメリカによるイランの核施設へのミサイル攻撃に関するニュースが流れていて、冷麺を作り終わった店主のおじさんもテレビを注視していた。
その後、ソウルの駅まで戻り、暑過ぎてぐったりし、ホテルで1時間ほど仮眠を取る。
歩く際に聴くように曽我部さんの新しいアルバムをホテルのWiFiが使える間にダウンロードした。2時間もあるごった煮のアルバムで旅には持ってこいだった。ついでにニール・ヤングの新作もダウンロードした。
日が暮れるまでに電車で1時間ほどの水原に行こうと電車に乗ったが、途中駅での乗り換えを間違えてしまい、違う行き先に進んでいることに気づく。が、引き返すのが面倒で終点まで行こうと終点の仁川で降りる。
仁川は勝手に空港と連なるハイソな街を想像ししていたら、そこには中華街が広がっていた。
中華街を少しだけ歩くが、わざわざ韓国で行かなくていいと思いすぐに引き返すことに。
歩いている途中に、肉屋がやってるこじんまりとした焼肉屋を見つけた。
まだ日が暮れる前だったが、中ではチャミスルを飲みながら肉を食べてるおっちゃん達がいた。正確には肉をつまみにチャミスルを飲んでいたのかもしれない。よさそうなお店だなと思うが入る勇気が出ず通り過ぎて、やはり入ろうと戻ったが、お店に入った瞬間1人はNGだと追い出されてしまった。
こないだの店といい、焼肉は基本2人からなのか。
結局、24h オープンしてそうな、しかしローカル感もあるチェーン店で焼肉定食を食べた。
右隣の野球のユニフォームを着た兄ちゃんも、左隣の性格のよさそうなメガネの兄ちゃんもイヤホンしてスマホを動画を見るのに必死だった。
右隣の兄ちゃんはガタイがよく、アルミのお椀に入った米を2つ注文していた。
キムチや他の漬物などその店では6つくらい小皿がついてきたが、全部きれいに平らげて小皿を重ねていた。
自分も見習って食べ終わった小皿を重ねていった。
その後、前日の夜に知って気になっていた場所を散策する。西成に似ている雰囲気を持ち、飛田新地のような遊郭が並んでるゾーン。
百貨店からの出口がまさにそこに繋がっていて、あべのハルカスに近くに遊郭がある日本とも近いなと感じた。
特に目新しさは感じなかった。
それよりもその奥の通りを歩いていると桃源郷のような場所を見つけた。
これまではどうしても写真を撮っておかねばという風景にあまり出会わなかったが、この商店街に限っては何枚も撮った。
尼崎にとても似ている場所だった。

そこのおばちゃんのお店に立ち寄り、ビールを頼むとナッツがついてきた。
魚介を提供しているお店であったようだが、ご飯を食べてしまっていたため、食べ物を注文出来なかったのが残念だった。

3つ離れたテーブルでおっちゃん同士の喧嘩が始まる。けどもみんな見慣れている風景なのか、誰も気にする人はいなかった。
青いブリーフ姿の5歳くらいの子どもがシャッターを開けて、屋台の飯をシャッターの中に入れていた。この市場の店舗の中にこの子が住んでいる家があるのか。
ちょうど夕暮れから夜に変わる時間帯もよかったのか、この桃源郷に出会えて、今回の韓国訪問を満足した。
豚の頭が何個も置かれていたがあれは本物だったんだろうか。いつか再訪してみたい。
帰りの空港で、旅の間にズボンと羽織るシャツは数日間1回も洗って無かったなと思い、空港の至る場所で配られていた香水をつけたペーパーをなんとなくズボンとシャツにすりつけたが多分あんまり効果は無さそうだった。
帰りの便ではイントゥ・ザ・ワイルドでクリステン・スチュアートと出会うシーンを見て、あとは着陸まで爆睡していた。
神戸空港に着いた後、久しぶりに家族と三宮で会い、晩ご飯を食べ、新幹線に乗り横浜の家に戻った。