長期滞在者
飛行機に乗ると、世界はなんて広いのだろうと思う。国際線なんか特に、ときに1万kmを超える膨大な距離を移動するあいだ、夜から朝へ、あるいは夜の領域を追いかけるように、飛行機の外では違う時間が流れている。 あるときには、機内食もとうに食べ終わって歯を磨き、明かりの消された機内で、ブランケットにくるまって、窓のカバーを開けて、外を眺めている。寒々とした夜空が見える。絨毯のように広がる、のっそりとして現実…
長期滞在者
初音ミクではなく、本人バージョンの「砂の惑星」(by米津玄師)が ずっと頭の中でヘビロテ再生中の今日この頃、すっかり寒くなりました。 ヒートテックのパッチが手放せません。寝るときの毛糸のソックスも必需です。 米津玄師といえば、DAOKOとの「打上花火」も菅田将暉との「灰色と青」も なかなか良いです。好きです。 そういう意味では「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」が 気になっているところで…
長期滞在者
いかにも何か大事なことが書いてありそうな本。やわらかな質感の桃色の表紙に、ミントグリーンの太い帯が巻かれたその本を書店で見た時、まずそう思った。本の名前は『うしろめたさの人類学』。著者はエチオピアでのフィールドワークを続けながら、文化人類学を研究している松村圭一郎さん。個人的な感情である「うしろめたさ」と人類学が、どう結びつくのか。帯を見てもわかるようなわからないような……だったけれど、本の放つ説…
長期滞在者
「明日、待っていますね。」 そう約束をしていた、毎日言葉を交わすことが楽しかった人が、その明日に突然死んでしまってから、 私は明日を信じなくなった。 あれから、眠る前に毎晩思う。私に必ず明日が訪れるわけではない。 このまま眠って、私が目覚めないことを想定する。 例えば、今Twitterに残したこの言葉は、明日私が死んでしまったら、最期の言葉として残るのだなと考えて、 言葉を綴るようになった。 「未…
長期滞在者
僕の働く営業写真の世界ではこの年末は大繁忙期です。 11月は七五三の撮影でてんやわんやし、12月はその写真の仕上げに忙殺され、成人式の前撮り写真もじゃんじゃん入ってきます。殺人的な仕事量です。忙殺とはよく言ったもので、忙しさに殺される。本当に毎年死ぬんじゃないかと思いながらこの季節を過ごします。 まぁ、知っての通りの写真馬鹿ですから、写真で死ねるならいいだろう、とか仰るかもしれませんが、嫌です。仕…
長期滞在者
コーヒーが好きだ。 といって、抽出から保温までやってくれるコーヒーメーカーを持っているわけでもないし、カフェ巡りを趣味にしているわけでもない。スマトラとエチオピアの違いを言うこともできないし、まあぼちぼちやっている、といったところ。 —— いつ頃から好きになったのだろうかと考えると、大学で卒業研究をしていた頃に行きつく。その研究室には、インスタントの粉を溶かすタイプのコーヒ…
長期滞在者
銀座でギャラリーも運営している会社の専務さんが照明器具のリニューアルでうちの会場を見に来られました。 うちで使っているのは大した器具でもなく、LED電球に変えてからは、毎年のように新しい球をテストして、より良いものに交換している程度で、そんなに参考になるようなものはあまりないと思いますが、日頃考えていることを率直にお話ししたりしました。小伝馬町移転にあたり照明器具は、会場全体を均一に照らす面光源は…
長期滞在者
ついにやって来てしまった… ほぼ2ヶ月くらい前から心と体の準備をして来たにもかかわらず、 いざそれが現実のものになると、やっぱり相当なインパクトである。 10月が終わると同時についに冬時間に戻ってしまった。 冬時間、というか、これが本来の時間なわけだが、 時間変更直前は大体18時ごろに日が暮れかかって来て、 やっぱり日が短くなって来たんだなあ、とか思っていたら、 変更後はいきなり18時はほぼ真っ暗…
長期滞在者
ここ最近、iPhoneで電子書籍を読んでいる。今読んでいるのは、Joshua Fields Millburnの『Everything That Remains』。著者のJoshuaがミニマリストになるまでと、なってからのことを書き綴ったエッセイなのだけれど、この本を通勤電車の中で少しずつ読み進めるのが、ここ最近の楽しみになっている。JoshuaはRyanという友人とふたりで”the m…
長期滞在者
今月の頭に、引越しをした。 空っぽになった部屋をiPhoneのカメラに収め、2年半ほど住んだ家を後にする。新しい家は、自転車でわずか5分ほど。そんな近い場所に、更新でもないタイミングで引っ越したのは、恋人と一緒に暮らすためだった。 同棲は楽しみな半面、不安もあった。相手のこれまで見えなかった部分も目につきやすくなるだろうし、一緒にいる時間が長いぶん、ちょっとした行き違いをやり過ごせなくなる。ものす…
長期滞在者
わたしとRと、どちらということもなく、そのきわめて特徴的な声で鳴く鳥の存在に気づいた。4月の沖縄はもうだいぶ暖かくて、午前中に窓を開けて仕事をしていたりすると、この鳥の「ちゅっちゅっ・ちゅちゅちゅ!」という甲高い声が響く。わたしたちのあいだでどちらということもなく、その声の主は「ちゅっちゅ鳥」と呼ばれるようになった。休日の昼間なんかに、窓を開けはなした家のなかで「ちゅっちゅっ・ちゅちゅちゅ!」と聞…