長期滞在者
年の瀬の慌ただしさの中で2017年を振り返ると、その前と後で状況がまったく変わってしまうような大きなことが、本当にめまぐるしくあった一年だった。春には会社との雇用形態を変え、フリーランスとして仕事をはじめた。その直後に父が体調を崩し、あっという間に亡くなって、ほぼ絶縁状態になっていた母や姉達が久しぶりに顔を合わせた。恋人と同棲する家をじっくり探し、一緒に暮らしはじめた、など。 今年は後厄でもあった…
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僕はデジタルカメラのあのEVFというやつが、どうにも苦手である(EVF : 電子ビューファインダー = electronic viewfinder)。一眼レフならばカメラ内部のミラーに屈曲されているとはいえ、眼前の光景とタイムラグゼロのものがファインダーで見える。ミラーを介した反射光であっても、それは現実の光景とひとつながりの光である。ところが一眼レフではないデジタルカメラというのは、カメラ背面の…
長期滞在者
世界は平和じゃない。 さっきまでSkypeで話していた国でクーデターが起こった。 ほんの数分前まで楽しく会話をしていた、大好きな彼女が住む国での異変を伝えるBBCの速報に、私は青ざめた。 「今日の様子は?」 「大丈夫よ。私たちは変わることを願っている。」 「あなたの国が平和であることを祈っているわ。」 クーデターが起こってから。 私と彼女は連日この会話を繰り返した。 2017年11月20日。 「今…
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以前、自分の企画展ではオープニングパーティーをやらなくなった、という話を書いたことがあります。 移転した今年、ルーニィでは9本の展覧会を企画したのですが、オープニングパーティーはついに1度も開くことはなかったのです。美術館のパーティーと違って、私たちのオープニングパーティーは、業界の社交や情報交換の機会である以前に、良いお客様に集まって頂いて、確実に作品を売っていく重要な機会でもあります。もちろん…
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飛行機に乗ると、世界はなんて広いのだろうと思う。国際線なんか特に、ときに1万kmを超える膨大な距離を移動するあいだ、夜から朝へ、あるいは夜の領域を追いかけるように、飛行機の外では違う時間が流れている。 あるときには、機内食もとうに食べ終わって歯を磨き、明かりの消された機内で、ブランケットにくるまって、窓のカバーを開けて、外を眺めている。寒々とした夜空が見える。絨毯のように広がる、のっそりとして現実…
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初音ミクではなく、本人バージョンの「砂の惑星」(by米津玄師)が ずっと頭の中でヘビロテ再生中の今日この頃、すっかり寒くなりました。 ヒートテックのパッチが手放せません。寝るときの毛糸のソックスも必需です。 米津玄師といえば、DAOKOとの「打上花火」も菅田将暉との「灰色と青」も なかなか良いです。好きです。 そういう意味では「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」が 気になっているところで…
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いかにも何か大事なことが書いてありそうな本。やわらかな質感の桃色の表紙に、ミントグリーンの太い帯が巻かれたその本を書店で見た時、まずそう思った。本の名前は『うしろめたさの人類学』。著者はエチオピアでのフィールドワークを続けながら、文化人類学を研究している松村圭一郎さん。個人的な感情である「うしろめたさ」と人類学が、どう結びつくのか。帯を見てもわかるようなわからないような……だったけれど、本の放つ説…
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「明日、待っていますね。」 そう約束をしていた、毎日言葉を交わすことが楽しかった人が、その明日に突然死んでしまってから、 私は明日を信じなくなった。 あれから、眠る前に毎晩思う。私に必ず明日が訪れるわけではない。 このまま眠って、私が目覚めないことを想定する。 例えば、今Twitterに残したこの言葉は、明日私が死んでしまったら、最期の言葉として残るのだなと考えて、 言葉を綴るようになった。 「未…
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僕の働く営業写真の世界ではこの年末は大繁忙期です。 11月は七五三の撮影でてんやわんやし、12月はその写真の仕上げに忙殺され、成人式の前撮り写真もじゃんじゃん入ってきます。殺人的な仕事量です。忙殺とはよく言ったもので、忙しさに殺される。本当に毎年死ぬんじゃないかと思いながらこの季節を過ごします。 まぁ、知っての通りの写真馬鹿ですから、写真で死ねるならいいだろう、とか仰るかもしれませんが、嫌です。仕…
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コーヒーが好きだ。 といって、抽出から保温までやってくれるコーヒーメーカーを持っているわけでもないし、カフェ巡りを趣味にしているわけでもない。スマトラとエチオピアの違いを言うこともできないし、まあぼちぼちやっている、といったところ。 —— いつ頃から好きになったのだろうかと考えると、大学で卒業研究をしていた頃に行きつく。その研究室には、インスタントの粉を溶かすタイプのコーヒ…
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銀座でギャラリーも運営している会社の専務さんが照明器具のリニューアルでうちの会場を見に来られました。 うちで使っているのは大した器具でもなく、LED電球に変えてからは、毎年のように新しい球をテストして、より良いものに交換している程度で、そんなに参考になるようなものはあまりないと思いますが、日頃考えていることを率直にお話ししたりしました。小伝馬町移転にあたり照明器具は、会場全体を均一に照らす面光源は…