長期滞在者
日本の春には動きがある。 それまでの生活や環境から、最も変わっていく季節。 私の周りでも様々な決断があり、 それぞれが、各々のやるべきだと思うことを胸に、距離にしたらかなり遠い場所へと旅立っていく。 そんな人達にぐるりと囲まれるような環境にいると、 自分がこの場所から動かないでいるのがいけないのではないかという気にすらさせられるが、 私は春の中で、いつもと変わらずに自分に与えられた役割を生きている…
長期滞在者
Pâques(パック)とは英語でいうところのイースター、すなわち御復活祭. 十字架に架けられ、死して葬られたイエスさまが三日目に死者の家より蘇る、その復活を祝う日.クリスマスと並ぶキリスト教最大の行事だ.春分を過ぎて最初の満月後にくる日曜日に当たる.Pâquesの週末は、それに続く月曜日も祝日扱いになるので、フランス人にとっては嬉しい三連休.ちなみに今年は4月15日〜17日. この頃、フランス中の…
長期滞在者
季節の変わり目のせいだろうか。 2週連続で週末を寝込んで過ごした。 ハッキリとは原因はわからないのだけど、 極端な怠さと軽い吐き気とひどい頭痛にやられた。 特に急に気圧が下がるとそういう症状が出るらしい。 いや、昨日までの週末はずっと晴れてたし気圧の変化は あまりなかったはずだから、単なる風邪かなんかか? なんなんだ、まったく。 こういう症状の場合、自律神経がどうとかネットなんかには書いてあるけ…
長期滞在者
冷たくて、静かな雨が降る朝だった。職場に向かう道すがら、紫色のジャケットをきたおばあちゃんを見かけた。おばあちゃんたちが着る紫色は、なんでああも懐かしい気持ちにさせるんだろう。あの薄紫色がなんという名前なのか知らないけれど、おばあちゃんたちは必ず一着はあの色の服を持っているような気がする。 そのおばあちゃんは、小さな歩幅でゆっくり歩いていて、細い歩道では、追い抜かすタイミングを見計らうのも難し…
長期滞在者
小田急線の車体が傾き、地下へと潜っていく。人気のない東北沢駅を通り過ぎ、電車が下北沢駅のホームに着くと、まばらに人を吐き出した。最後尾に乗ってしまったので、ホームの端からエスカレーターまでは少し歩く。この端のところは工事中であることを開き直ったように無機質で、人々は一列にならないと進めないほど幅が狭い。構内は十分明るいけれど、なにか芯の部分が冷めているような薄暗さがあり、昼夜を見失う感覚がよぎる。…
長期滞在者
昨年、2016年3月にヨルダンに滞在した時の話である。 ヨルダンに着いた翌日に、私はあるシリア難民の家庭に泊まっていた。 ホームステイを提案してくれたのは、シリア支援団体サダーカの代表、田村雅文さんだった。 初めての中東、アラビア語もわからない。そんな私に着いてすぐにホームステイなどできるのだろうかと、 不安でたまらなかった。まず、家庭訪問に行ってそれから考えたいと話した。 最初の家庭訪問は、母子…
長期滞在者
東の空に高く月が上がっていて、東に帰る僕の自転車の先にずっと架かったままなので、冴え冴えとしたその姿を眺めながら漕ぐ。 風が強く、雲も速い。 ずっと月を見ているからそれが定点となって、雲の流れの速さがわかる。 月をさまざまな形の雲が包んでは去り包んでは去り、じっと見ていると、中心の月がいろんな輪郭の生き物の眼球に見えてきた。 眼球は変わらないが、それは漸次外形を変えて、最初は蚤のような頭の小さい昆…
長期滞在者
昨日、ローマから帰ってきた作家さんとエディションの話になった。 一枚のネガなどの原版から理論上無制限に焼き増しができる写真作品は、あらかじめプリントする枚数に制限をかけることによって稀少性を持たせ、作品の価値を高めていこうとする考え方です。「あなたの作品はエディションがない、エディションを振ればもっともっと売れるはずだ、ヨーロッパでも人気のDもAもエディションをつけているじゃない、なんであなたはそ…
長期滞在者
三週間ほど前に日本からブリュッセルに帰ってきた。 毎度のことながら、戻ってから一週間ほどは、時差ボケ、文化差ボケ、天候差ボケに悩まされた。 実感からすると、大まかに言って、時差は体調に、文化差は思調に、天候差は感調に影響する。 もちろんそれらは大体において三つ巴になってぐるぐるするわけだけど、 この復調するまでの感じは、大体においてミゼラブルというか、 メランコリアというか、基本的にあまり好ましい…
長期滞在者
1月末.フランス語と音楽について、じっくり考える機会があった.詩が歌になるとき. クラヴィコード:フーベルトが1784年に製作した楽器を元に製作.音域C-g3 double fretted(共有弦) (2016年 山野辺暁彦) 小型パイプオルガン:一段鍵盤ポジティフオルガン 3ストップ 音域C-f3 (2004年ヴァン・デア・プッテンオルガン工房製作 石井賢所蔵) 去年から福島県い…
長期滞在者
2月は、ほぼ毎週何かしらのドキュメンタリー映画を観にいった。昨年、記録映像作家の岡村淳さんに出会ってから、彼の訪日上映会がある度に出かけて行っては日本人移民のドキュメンタリーを観ている。わたしが知りえなかった、ご先祖さまたちの生き様を知るために。 昨年、祖父が亡くなって、いつか聞きたいと思っていたことを、永遠に聞けなくなった。岡村さんの映画観ておかないと、と気持ちが焦るのは、祖父から聞けなかったこ…
長期滞在者
こだまさんの『夫のちんぽが入らない』を読んだ。 発売が決まってから、ずっと楽しみにしていた本だった。発売した日の夜、近所の書店に立ち寄ったら置いていなくて、次の日に会社をこっそり抜けて新宿のブックファーストで購入した。ずらりと並べられているうちの一冊を手に取ると、普通の単行本より一回りほど小さい。昨日行った書店の新刊棚にあった不自然な隙間と同じくらいの大きさで、もしかするとこの本が並んでいたのかも…