鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
わたしがいわゆるひらかれた場を志向したのは、仲間はずれにされることへの原初的な恐怖からくるものだった。 思春期にさしかかったころから同級生のコミュニティになじめなくなった。自分のアイデンティティをふりかえると、わたしはもともと多層にマイノリティである。第一に両性愛者であること、つぎに発達障害をもっていること。物心ついたころから家族でカトリックを信仰しているので宗教的にも日本では少数派であり、おまけ…
長期滞在者
目の前に憂鬱が漂っていた。そうみてしまう自分の視点と目線があるのか、現実の世界にそんな事象が広がっているのか。感覚に濁りが生じているのだと思う。 淡々とすぎていた毎日。だが、1日の重みはある。十二分にある。 毎月の綴日である13日付近では、今よりも体調が優れていなかったが、今月は特にオト、イミ、ヒト、カチに触れながらつくりだすことのできるアートワークに巡りあえていた。 他者や外界にあるあらゆる事物…
長期滞在者
昨年9月の記事で取り上げたベトナム/カンボジアへの旅の半年後、今度はアメリカを旅した。 アメリカ大統領選が佳境を迎え、全米の地図をテレビで目にすることが多くなったことで、11年前にアメリカを旅した一か月を振り返りたくなった。 <往路> 成田から飛んだのか、羽田から飛んだのか、降り立った空港からどう移動したのかまったく覚えていない。大学は春休みに突入していたが、前日の夜まで終日バイトをしていて機内で…
長期滞在者
スポーツ系の自転車にはフレームサイズというのがあって、同じ種類の自転車でもいくつかの大きさのパターンが用意されている。身長や股下長から割り出した「適正サイズ」の自転車に乗るべきである、といろんな自転車サイトを見ても書いてある。でも僕はこれをあまり信じていなくて、そもそも僕は今乗ってる自転車の前に、今から考えるとえらく小さな自転車に乗っていた。5年もそれを使っていたので今さら「サイズが大事」とかいわ…
長期滞在者
「8ヶ月ぶりです」この言葉を言う機会が多くなってきた。 8ヶ月ぶりに結婚披露宴の司会の仕事をすることができた。8ヶ月ぶりにライブハウスに行ってライブを観ることができた。8ヶ月ぶりにイベントの舞台で司会をすることができた。 少しずつできることが増えてきてはいるが、新型コロナウイルスの影響からは、まだまだ安心できるにはほど遠い状況の10月。私はラジオDJとして、 23周年を迎えた。 ラジオDJとして、…
長期滞在者
活気のある商店街を歩いていて、そこにお肉屋さんがあると、ついそこのご主人の姿が気になる。お肉屋さんのご主人というのは、こちらの勝手な思い込みで申し訳ないが、いかにも美味しいものを知っていると思わせる雰囲気を全身で表現しており、あぁ、この人の作ったコロッケは間違いなく美味しいよね~と思わせるような何かを身に纏っているように見える。 物心ついた昭和の頃から平成~令和に至るまで、時代が変わり人々の価値観…
Mais ou Menos
まちゃんへ 急に寒くなったね。うちらが作っているブランケットやカーディガンが活躍してくれる季節になってきた。ここ数日、メンタルはずいぶん落ち着いていると思う。 自分の好きなことを積極的にやりたいという気持ちが起きて、それを実行できて嬉しいです。 編み物の練習も少しずつやって、もっと上達して色んなものが作れるようになりたい。いつも教えてくれてありがとう。 展示会、楽しみなやなぁ。家も整とんしつつ、気…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
人と一緒に仕事をするのが苦手だ。自分の想定を崩すタイミングで指示が来たり、自分が立てたはずの企画や進行プランがディスカッションを重ねるうちまったく違うものに成り代わっていったり、まして仕事の内容と関係のない人間関係のことで労力をとられたりすると、急に意欲がなくなったり、ときにわーっとパニックになったりしてしまう。 しょぼい喫茶店で働かせてもらっていたときのワンオペレーションは、ほとんど理想の働き方…
スケッチブック
今、踊るということ(9月1日) 気づけば夜通し 踊りの動画を見ていたいま踊ることを 考えていた色々と探して結局 街のジムに通い始めた いま踊ることを 体が求めている内に籠るものの 発露を求めている 何が籠もっているんだろう とも考える 言葉で縁取る前の 前の もっと前のものそれはどろっとしていて ぐるぐるしているもの 言葉にする必要もないものそこから言葉をとりだすには、 たぶん 川の水が泥を洗って…
長期滞在者
束の間の休暇は、久しぶりに海へ。 神奈川県には10年以上住んでいたのに不思議と愛着がわかず、東海道線に乗りながら「本当はもっと遠くに行きたい」と思っていた。けれど江ノ島や鎌倉を歩いていたら、いつの間にか「このへんで良い物件はないかな」と考えはじめている自分がいる。 海に近い土地から離れて8年経つ。いつかまた海を身近に感じられる場所でと思っていたのが、急に芽吹いたようだった。 ただ広い、大きな海があ…
長期滞在者
フランス語でお茶はThé(テ).たった一音.簡潔で気持ちのいい響きだ. 紅茶ならThé noir(テ・ノワール)、緑茶はThé vert(テ・ヴェール)、白茶はThé blanc(テ・ブロン)、烏龍茶はThé oolong(テ・ウーロン)、とても簡単. 私のお茶好きは親しい友人なら誰もが知るところだ.今、キッチンで目に入るものだけでも30種類はあった.毎日ざんざん飲むので茶葉が古びる暇もない. *…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
死にたさはとつぜん訪れる。自分が能動的に「死にたい」と望むというより、雨や落石のように、「死にたさ」という形のあるものが否応なく降ってくるような感覚だ。大人になって多少受け身をとるのがうまくなったりしたかもしれないけれど、とはいえいっぺん来てしまうともうどうしようもない。しばらくのあいだは重たい死の引力と、「でも、確か死なない方がいいらしい」という心もとない憶測とのあいだでのたうつことになる。 原…