鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
「しょぼい喫茶店」での営業について書いてみよう、と思ったときと今とでは、ずいぶん世の中が様変わりしてしまった。こういうふうに書くのさえ、今さら言い尽くされたことだと感じるほどだ。当たりまえのように毎週店をあけ、肉体ごと集まってくる人を肉体ごと待っていた日々が嘘のように、今や会うことはおたがいにとってリスキーなものになった。 さいきん、会うことへの郷愁のようなものがあちこちに漂っているのを感じる。ビ…
長期滞在者
4ヶ月ぶりにマイクを握って司会をした場所は、ライブハウスだった。 2020年7月4日。埼玉県にあるライブハウス、浦和ナルシスからYouTubeを使って、13時から17時までの生放送を行った。タイトルは「バンギャがライブハウスを借りてみた」。バンギャルの哉美さんが特別給付金10万円全て使って、音楽、バンド、ライブハウスでできることとして、ライブハウス、浦和ナルシスで曲をかけて、ステージには照明をあて…
長期滞在者
職場(西宮)から自転車で寄り道して帰る定番ルートの一つに、武庫川沿いを北に伊丹方面まで遡上して尼宝線から尼崎へ帰ってくるコースがあって、その途中に時友という地名がある。 一部建て替えがはじまった古い市営団地があり、人口減で寂れてきた商店街があり、町全体が贔屓目にも華やいでいるとはいいがたい場所だが、いつもそこを通過するたびにバス停や商店街の看板の「時友」の文字、この地名がなぜか気になってしかたがな…
長期滞在者
コロナとの共存生活が長くなると、時々人にあっても、なんとなく暗い話題が増えてくる。 特に僕たちの周辺はフリーランスが多いから、出口の見えない状態が長引くとなんとなく暗い気持ちになる。ただの風邪だ!と豪語してコロナに感染したどこかの国の大統領は論外としても、何十億年の地球の営みという大局的な見地からすれば、この星はちょっと風邪を引いたくらいのものかもしれぬ。そのうち必ず治ると信じて、意識的に目先を変…
Mais ou Menos
まちゃんへ 7月になって、まちゃんが復職したこと、すごいことだと思ってます。 久しぶりに会社の人とやりとりしたり、案件の対応をしたり… リモートワークの様子を見ていて、すごいなぁと思いました。 6月の下旬頃は、自分も早く仕事復帰しなきゃ…!と焦ってしんどくなってたところもあるんやけど、今はまちゃんのことを家でサポートしつつ、自分の体調やメンタルが良い状態をキープできるように、毎日過ごしていこうと思…
スケッチブック
6月1日 家の空間が違う。たとえば、バンドのメンバーがひとりおやすみ、ってこういう感じなんだろうな。ひとり分の音、気配がない昼間。夕方並んで歩いていると「お昼ご飯がすっごく美味しかったの!」 としおは言った。私たちが頑張って作っていたお昼は…? と、思わず拗ねそうになったけれど、楽しくてよかった。保育園、再開の日。 6月2日 昨日とても遅ればせながら、アメリカで起きていることの記事を読んだ。そして…
長期滞在者
フランス語で「水面」は “la surface d’eau” という. “surface” は表面、”eau” は水を指す.どちらも女性名詞. 日増しに暑くなってくるので、涼しい水辺が恋しくなる. 19世紀終わり、モネは二人目の妻となるアリスとその娘たちを伴いジヴェルニーに移り住んだ.そこはセーヌ川の支流が多く流…
長期滞在者
最近、どういったわけか、花をよく見つめてしまう。 花はもともと好きだし、道端に咲いているものがあったら写真に撮ったり、花屋で気になったものを買ったりもしていた。 けれどその「好き」具合が、濃くなったように思う。 じいっと見つめてしまう。そしてそんな私に「こんなところに花が咲いてたのね、気づかなかったわ」と話しかけてくれる人までいる。 私は花という存在の優しさに、凛とした佇まいに、エネルギーをもらっ…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
ここまで「場の詩プロジェクト」の各企画意図についてあれこれ書いてきたけれど、「実在しない恋人カフェ」という企画に関しては、とくに深い意味はない。ただわたしが”恋バナ”をしたかっただけだ。私利私欲。 恋バナ=恋愛の話をするのはむずかしい。というとふしぎそうにされることもある。しかしこんなにむずかしいことはない。恋愛といえばなんとなく響きはいいがようは性愛であって、そんなパーソナルな話ができる相手はそ…
Do farmers in the dark
アパートメントには最近起こった事で、楽しかった事、印象に残った事を書いている。何も書けないのでいつの間にかいつも日記風の文章を載せるようになってしまった。今まで自分が書いたものを読み返すと、すごくやばいと思う。楽しかった事、印象に残った事のレベルが低すぎて、もっと他に楽しい事ないのかと思ってしまう。 いつか友達と海に遊びに行って、砂浜でたらふく酒を飲んで意識を失ってビンタしてもらってまたニコニコ飲…
お直しカフェ
誰が予想したか、新しい感染症の流行と共に、世界はうんと過ごしやすい場所に変わりつつあるのかもしれない。0歳児との暮らしは元からステイホームだっただけに、各種リモートツールの浸透やご自愛の風潮で、私は逆に、社会との接点を急速に取り戻した。無理をせず、だけども楽しく健やかに。オンラインで、産後はじめてのお直しカフェ、ダーニングのワークショップを開催した。 企画してくださったのは、モデルでエシカルファッ…
かさねのせかい はざまのものたち
はざまのものたちは かさねのせかいのうすい膜を けっして穿つことはないかれらは 輪郭など もたないものたちだから いくつもの層を すがたを変えながら 緩々と 行き来しては いろとりどりのタネをあつめる そして あつめたタネを ヒトに蒔きにやってくるのだ