長期滞在者
5月はほとんどの時間を作陶に費やした。 1年ほど前に無謀にもホテルの食器を引き受けてしまい、散々な思いをしながらいろいろ学びもしたのだが、 1ヶ月前にまたかなりの数の食器の注文が来たので、1年前のトラウマを抱えながらもそれに取り組んでいた。 去年とは違い、自分が好きに使える工房があるので、楽になった部分もあるのだが、 場所が狭いので、成型の終わった器を乾燥させる場所を確保するのに手間取ったりもした…
長期滞在者
日々の仕事が忙しいと、日常生活のあれこれが疎かになる。わたしの場合、料理を作ったり、掃除をしたり、きちんとした睡眠をとるために必要なことができなくなる。こういうのはよくないと思いつつ、なかなか思い通りに仕事と生活の両立ができなくて困る。 5月は少しつらい月だった。ここ数ヶ月の疲れが溜まっていたせいもあるけれど、突如任された仕事に振り回されてしまい、右往左往。上司と同僚の間を右往左往。人と人との…
長期滞在者
* 夢の中でエレベーターに乗ってしまうと いつも強制的に別の夢に連れて行かれてしまう 夢の続きに戻れるだろうかと たまに 階数を思い出したり数えなおしたり エレベーターを乗り換えたりするけれど 知らない人たちが次々と乗り込んできては ぎゅうぎゅうと私を奥へ奥へと押し込む エレベーターが消えると それはもう あの夢の終わりでこの夢の始まり またいつかあの場所に戻ろうと かろうじて記憶の崖を霞め留め…
長期滞在者
父は、不機嫌を振りまくひとだった。楽しむことがわからないし、彼が楽しい時間は家族といっしょに過ごすときではなく、滅多に重ならない。そして、問題は、彼が何にムカついてるか(当時そんな言葉遣いはないが)、母の憶測ぐらいしかヒントがないことであった。母の意訳は、「彼女ひとりが一生懸命考えたあるべき家族ゾウ」である。もっとわかりにくくなっている。父の不機嫌が、わたしたちとは関係のないことを言ってくれた方が…
長期滞在者
関西に生まれたのでアンチ・ジャイアンツなのはデフォルトだとしても、小学生の頃から関西標準の阪神タイガースにも目もくれず、ロッテオリオンズ(当時)のキャップをかぶり、長じては南海ホークス(当時)のファンになった。 ソニーのウォークマン(もちろんカセットテープの時代だ)ではなくAiwaやAkai製を愛用し、大人になっても電化製品はすべてナショナル(当時)を避けた。 とにかく「その世界で一番」というもの…
幻覚にカーテンコール
ⅴ 姿なき販売所 「あの、牛乳が届いてなかったんですが」 返答はない。少し音量を上げる。 「ごめんください」 誰かがそばにいる気配すらない。 翻訳機の音量を最大に設定して、半開きになって北北西の風に揺れている鉄扉の向こうへ呼びかける。 「牛乳を、取りに、来ました! 十字路の、角の、診療所の、者です!」 一語ずつ区切って呼びかけた“音”は、風鈴に似た余韻を残して消えた。やっぱり返事は返ってこ…
長期滞在者
ぼくの仕事はギャラリーディレクターですが、今までの仕事の中で相当な割合を写真作家を志す方々との関わりに時間を割いてきたと思います。学校での講義や講評、ワークショップ、ぼくのギャラリー以外でも比較的キャリアの浅い人を対象にしたイベントに呼ばれることも多いことからも、周囲の写真業界の皆様からも同じようにぼくの仕事を観ておられるのかなと思います。そういった皆様と時間を共にさせていただきながらしばしば感じ…
Mais ou Menos
_______________ Pちゃん 今日は久々の休みでした。ここ数ヶ月すごく忙しくて、最近は身も心も疲れていると感じます。仕事に対するモチベーションが下がっていることが、とてもしんどいです。でも、それでも日はまたのぼるし、時間は過ぎる。日々、家と職場の往復。世界中の大人たちの毎日は、こんな日々なのでしょうか。 悲しいと思うことが多い反面、家に戻ってきたときの安心感はひとしお。庭のジャスミンが…
the power sink
今回も意味のない絵を載せる。見て貰えると嬉しいです。それではよろしくお願いします! グルグルしている。気分沈む 公園。植物や水がある 僕は頭にパイプを固定して、手で持ってグリグリしているので、まともに歩けない。さらに他の人にもグリグリしてもらっているので、もう全然まともに動けないんだよ。手を離せばいいと仰る方もいるだろうが、なんでか手を離すのはとっても不安でグリグリする…
長期滞在者
1800年、ウィリアム・ハーシェルは、太陽の光をプリズムに通し(100年前にニュートンが行った実験と同じように)七色のスペクトルに分けました。そして、七色それぞれの温度を測ってみました。紫、青、緑、と徐々に温度が上がり、一番端の赤色の光が最も高い温度を示しました。ハーシェルは、なんとなしに赤色のさらに外側、目に見える光のない部分の温度を測ってみました。なんと、その場所は目に見えるどの色の光よりも高…
幻覚にカーテンコール
iv 燐光の香り 扉を開け、その光景を目にした時、私は遠い昔に観たある映画に出てきた、魔女の部屋を思い出した。 洗い立てのシャツのように真っ白で清潔な床、天井。壁の大半は大小様々な淡い水色の引き出しに覆われていて、その一つ一つに濃紺のインクで丁寧に書かれた分類ラベルが貼られていた。 引き出しの並ぶ壁を背にする形で、白いペンキで塗られた古く大きな作業机と濃紺の椅子が置かれている。机上は無数のビ…