当番ノート 第61期
わたしが電話で友人に怪談を話していると必ず言われるのが「あなたが怖い話し始めてから、バン、と壁を叩く音がする」という事です。のめり込んで話し続けてしまう事もしばしば、話を聞き終えた友人は口を揃えて 「話も怖いけど、それより壁を叩く音がバンバンバンバンと激しくなってる今が一番怖い」 と言います。今、バンバンって音、聞こえてないですよね? こんばんは、オオタケです。今日は聞かせていただいた「アパートメ…
当番ノート 第61期
元来、怠惰な性質を持った人間だということに気付きつつある。病前性格を考えても、勤勉さからは程遠いようなサボり魔だったのに、私は自分のことをできるやつだと思っていたらしい。実際、躁状態にはキマってしまうのでなんでも軽くこなせる。サボった分を爆上がりの一時的なエネルギーによって補ってきた人生だった。 しかし、躁状態をコントロールすることを覚え、高揚感に身を任せることがなくなった今、一夜漬けによって定期…
当番ノート 第61期
我が家の同居人、妖怪カワウソの話の続きです。カワウソちゃん二回目の登場は、「怖いな」と思う体験でした。 とある夜。まだ22時前に、夫がリビングでうとうと寝始めました。平日ど真ん中だし、23時ごろになったら起こして寝室に移動させよう、そう思ってそのままスヤスヤ寝ている夫を眺めながら家事をしていました。 22時半、夫が自分から目を覚ましました。「ん〜…ごめん俺、話してる途中で寝てもうたな、ごめんな〜」…
Do farmers in the dark
今回は小説が書きたくて、平和な世界でピッケル型固形コニャックが当面のあいだずっと手に入り続けている世にも幸運な男のファンタジーを書きました。読む人に徒労と退屈をすごく与える文章になっています。ではよろしくお願いします! セルジィ、ある一日 おい、セルジィをとってくれ。セルジィを!(セルジィ=ピッケル型固形コニャックの事) 今日もまたバッポスの旦那は妻のベルンパスに言った。 バッポスは禿げて太った、…
当番ノート 第61期
ボディポジティブやルッキズムに関心が高い人と関わっていることが多い。一方、昨今の私はそんな美徳をかなぐり捨てていて、太っていておしゃれではない自分を否定も肯定もできないという曖昧な立場にいる。 本当は、ボディラインを強調したり鎖骨とかカリっとした膝小僧とか出したりしたい。しかし今の私は贅肉が多すぎる体型で、チープでカジュアルな服ばかり着ている反動と、まだ若い女枠で居続けたいというあがきがもたらした…
当番ノート 第61期
わたしが初めてこの新居での「ふしぎな現象」として思い当たったのは、本当に微かな、微かな違和感だった。 部屋を掃除したり、食器を洗ったり、洗濯物を干したり、携帯を触ったり、漫画を読んだり。そんな作業をしている最中、自分の意識とは全く関係なく「五十音」が口から溢れる。掃除をしてる途中に「ぱ」とか、携帯を触っているときに「む」とか。そんな一音だけが無意識に口から出ている。なんて変な癖が付いてしまったんだ…
当番ノート 第61期
晴耕雨読な日常を欲している。今の興味は数学と英語の勉強と、農業に注がれている。新鮮さと驚きを持ってこの変化を楽しんでいる。 ゴリゴリの私立文系脳だったので、理数系から逃げられるだけ逃げて生きてきた。因数分解、二次関数からしてきつかった。高校数学の範囲になると言わずもがな、授業は黒板を見つめてノートに書き写す作業となった。数学を取らなくてよくなった時には教室のゴミ箱に教科書を捨てるという奇行に出るほ…
長期滞在者
「なんでそんな危ない国に行くの?」「そんなことをして何になるというの?」 私がUNHCRを通して難民支援活動を始めてから、何度も言われてきた言葉だ。「難民? なんだか難しそうでよくわからない。」「遠い国のことを心配するより、自分の国のことでしょう?」そのたびに、丁寧に今世界で何が起きているかということを伝えてきた。 もっと関心を持って欲しい、知って欲しいとずっと思って、私は今日まで15年近く活動を…
長期滞在者
かま・ける【▽感ける】 の解説[動カ下一][文]かま・く[カ下二] あることに気を取られて、他のことをなおざりにする。「遊びに―・けて勉強がおろそかになる」 休みにかまけて、小田原に遊びに来た。 車が運転できないので、駅から諸々徒歩で回れる小田原は何不自由無く過ごせる観光地だ。 駅を降りたって小田原城の方に歩いていく。前回来た時にはまだオープンしていなかった小田原市観光交流センターの中に入っている…
当番ノート 第61期
ーでは、今度はお話の途中で質問をさせて頂きますので、もう一度最初からお願いできますか? はい、ええと、僕が高校生の頃の話なのですが、その頃自分は出身地の××県から⬜︎⬜︎県の高校に通っていて、普段は高校の近くに借りたアパートで一人暮らしをしてるんですけど、ちょこちょこ◯◯線に乗って××の実家に帰っていて。 ーはい。 その日は、テスト前で学校が昼に終わったんで、実家の方に帰ろうかなって、◯◯線に乗っ…
当番ノート 第61期
前回、今の自分にとっての自分語りの位置付けについて話した結果、正直何を書けばいいのかわからなくなってしまった。しかし連載は続いている。もはや自分の言葉に何の価値も見出せないのに、人様に感想までいただいた上で掲載されるのが苦痛だ。表現したいという欲求が消えているのに白いページを埋めていくのは多方面に失礼な行為ではないのかと己に問いかけている。 一週間悩んだ結果、どう転んでも私には私の話しか書けないと…
長期滞在者
先月書いた写真修行僧の話。毎月1冊、その月に撮った写真だけで写真集を作り、年12冊を完遂するというミッション。1月号( A5サイズ96頁 )はすでに数日前に本が完成してビーツギャラリー* に納めた。もう設置され閲覧できるので、ぜひぜひご覧ください。後半になってきたら苦しいんだろうけど、まだ最初の月だから楽しい。 せっかく毎月1冊なんて特別なことをするのだから、いつもとは違うことを織りまぜてみようと…