当番ノート 第59期
なんやかんやあって無事大学に合格した。 「お!いよいよフリーペーパーを作るのか!?」と思った方、すみません、まだ作りません。 残りの高校生活を過ごしていたころ、合格者は卒業に向けて各委員を振り分けられることになった。わたしは卒業文集担当。しかも編集長だ。担任の先生は「これからたくさん本を作ると思うけど、それの一番最初になるものだからね。大事だよ」と言ってくれた。当時は全く現実味がなく、ふわふわ…
長期滞在者
<1> 新大阪の近くにある親類の家に、最近何度か通っている。あまり愉快な理由ではないので詳細は書かない。少々気の滅入る話なのである。気の滅入るその要件を解決すべく、夜の神崎川の東岸の工業道路を自転車で走る。夜でも大型の車両がごんごん走る脇を、こちらも機嫌が悪いもんだからごんごんと自転車を漕ぐ。夜道なので自分の存在をアピールすべく、背負うカバンにも自転車のサドルの下にもデカデカとリフレクターをぶら下…
当番ノート 第59期
高校に進んだわたしは、相変わらず紙を切り続けている。 この頃になるとフリーペーパー沼にずぶずぶハマってる。わたしの通っていた高校では「1年で一つ何かを研究しよう」という自由課題があった。高校2年生のとき、わたしは「フリーペーパー研究」を題材に選ぶ。表紙もコラージュで作り、フリーペーパーとは何か、どういう種類があるのか、自分はどのくらい集めたのか……をまとめた。課題というより、もはや趣味である。 …
お直しカフェ
近所で馴染みの喫茶店のシャッターがずっと開かないでいる。心配だ。はじめは4月に「緊急事態宣言につき休みます」の貼り紙がしてあったのだが、宣言の延長と共に「休業延長します」の紙に代わり、約束の日が過ぎても紙がなくなっただけで店は閉じている。 今日は、名物の「イタリアン焼きそば」とアイスコーヒーでお昼ご飯にしようと思って出かけてきたが、やっぱりまだやってなくて、斜め向かいのマクドナルドで「てりやきマッ…
当番ノート 第59期
考えすぎるきらいがある。 ブログやラジオやフリーペーパーで発信し続けているわりに、心の中では「こんなことわたしがやらなくてもいい」「他にもっと上手な人がいる」「この言葉や考え方は一般的じゃないのかもしれない」と怯えている。気が狂ったときに「ええい!そんなの気にしてられるか!」と作って発信し、数日経つと「なんであんなことを」と落ち込む。そのサイクルを繰り返して生きてきた。 作っても怒られにくく、…
当番ノート 第58期
夏休み前に、信じられないくらいドラマチックな日があった。 早朝からのアルバイトがあった日。人生で二度と経験する事の無い(というかしたくない)ほどの靴擦れを起こし、家の鍵とSuicaを一度に失くした。 鍵の紛失には家を出る段階で気づき、Suicaの紛失には改札を通る段階で気づいたため、乗車時には既に重箱状で絶望していた。しかも足もめちゃくちゃ痛いのである!絶望!絶望! 駅から出てバイト先に向かう道中…
長期滞在者
友人からお勧めされた本をここ2週間ほど少しずつ読んでいる。 いまから20年ほど前のSNSがまだ発達していない時代に、ブログで日々の心情を書き綴っていた方の文章。 ブログや日記は1日ずつ読むには興味深いが、それが1冊の本となったとき、統一感と重みが消え失せて、わざわざ本で読まなくてもええかという気分になったことがこれまで何度かあったので少し抵抗があったのだが、友人を信じて読み始めた。 結末は先に耳に…
長期滞在者
オンラインでの仕事は増えていたが、シンポジウムの司会をオンラインで担当するのは初めてだった。 2021年8月22日。オンラインで開催された日本航航医学会学術集会での「コロナ禍でも留学・国際交流をあきらめない!」と題したシンポジウムで司会を務めた。 COVID-19の影響で海外への渡航が難しい現在において、留学や国際交流をどのように継続していくか、未来へ向けてどう向き合っていくか。大学の現状、日本語…
当番ノート 第58期
一度完成させた作品を修正する事は、作品を完成させる事より難しい。 少なくとも私にとってはそう。 私は見直しがとても苦手だ。勢いでばーっと作品をつくる癖があるから、それを見直して削って書き変えて……という行為が非常に非常に不得意。 一度カタチにした言葉の並びを消すのが、もったいなく思えてしまうのが原因の一つだろう。要するにケチなのだ。 これは私の弱点である。 その文字列を思いつくまでにかけた思考時間…
長期滞在者
ここ、アパートメントで文章を書き始めてから8年半。当番ノート(第7期)時代から数えて、数え間違いでなければ、今回が100回目の文章になります(古林希望さんとのコラボ企画「ギャラリー・カラバコ」の20回を除く)。どれくらいの人が読んでくれているのかもわからないのですが、管理人チームからも別にやめろとも言われないので、図々しくも居座っています。すみませんね。 すみませんね、なんて殊勝なふりして、一つだ…
当番ノート 第58期
遠いものの連結、という言葉がある。 以前大学の講義内で得た知識なのだが、近しいものどうしを繋ぎ合わせるのではなく、離れたイメージを持つものどうしの単語が組み合わさった時に、その言葉と言葉の距離のぶんだけ、想像力をかきたてる余地がうまれる、という考え方のことを、「遠いものの連結」と呼ぶらしい(厳密には間違っているのかもしれないが、今の私はそういう説明しかできない)のだ。 例えるならば、 あかい リン…
長期滞在者
日記を書こうと思ったとき、そこにはひっそりと死の予感があった。20代後半のある時期だった。私は周囲と同じように年を重ねていけないと思っていた。検査してもどこも悪いところはないのに、体が言うことを聞かず、唐突に寝込むことがしばしばあった。どうして、とひとり悩んでいた。 無人島に漂着した人間が生き延びた日数を石に削るような思いで、自分はこんなふうに過ごしたのだと書いていた。そのうち、一日を過ごせること…