長期滞在者
先月はついに連載に穴をあけてしまいました。不覚。 というわけで、ちょっとそこんところの言い訳じみたところ辺りから。 先月12日に、友人のマルニクス・ルーメンスがディレクターを務めるワークスペースブラッセルズ(以下WSB)という主にパフォーミングアーツに関するアーティストのサポート組織のイベントのオープニングがありました。日本・ベルギー修好150周年にまつわるイベントでもあり、日本に関連した作品を中…
当番ノート 第29期
空のダンボールはまだ5つ程残っている。大体の荷物は詰め終わったものの、細々としたものが残っている。ここからが長いのだ。 長い夜を前に、トムネコゴに挨拶にいった。日常からこの喫茶店がなくなったらどうなってしまうんだろう…と感傷にひたる私に、「メキシコにも『メキシコゴ」があるかもしれませんよ』とマスターは言った。唯一無二のものにしておきたい私の心とは裏腹に、マスターの方がさばさばしている。…
当番ノート 第29期
「もうダメかもしれない・・・」成田空港での私は、そんなことを思っていた。 一緒に石垣島に行く友人(喜屋武くん)が、電車の遅延で空港にギリギリの到着だったのだ。 無理だ。行きたかった石垣も飛行機に乗れず行けなくなるんだと、私はネガティブ全開だった(と思う。) しかし、一緒に喜屋武くんを待つもう1人の友人(高田くん)は余裕顔だった。 高田くんはこの状況をとても楽しんでいるように見えた。 「走ってくる喜…
長期滞在者
“Anniversaire”. 男性名詞.ラテン語の“anniversarius”(毎年訪れるもの)から派生した言葉. 毎年迎える誕生日.私はこの10月に、また一つ歳を重ねた. 誕生会はいつだって楽しいものだと決まっている.楽しいものにする意志が、祝う側にも、祝われる側にもみなぎっているから.少なくとも、その姿勢を失いたくないと思いながら生きているので、友人の誕生会だろうが母親の誕生日だろうが、容…
当番ノート 第29期
ヒーローのコスチュームは、体を覆うものだ。仮面も、服も、マフラーも、その奥にある何かを隠すためそこにある。仮面ライダー本郷猛は、境界線上に生きるため、仮面をかぶる。バッタをモチーフにしたライダーの仮面は、泣いているようにも怒っているようにも見える。仏像をモチーフにしたアルカイックスマイルのウルトラマンとは対照的だ。仮面の下に悲しみや怒りを隠し、ライダーは走り去る。 今日の本題は仮面ライダーの話では…
当番ノート 第29期
こんばんは。 先日、久しぶりに秋らしい夕暮れ時間を堪能しました。100人くらい集まってくれた「冬の宙と星の一生」と いう講座を終えたあと、買い物して急いで帰らなくちゃいけなかったので、「堪能」というには、 ちょっと時間が十分でなかったけれど。でも、その講座のあとに、たくさんの方々が声をかけてくれて、 中には、私の本を読み込んでおられて、なんだか立ち話なのに、人生話しちゃったりしてたので、 そんな…
長期滞在者
うちじゅう,よとれた おさらや ――よごれた うえ木ばちや ――よごれた はいざらや ――よごれた キャンデーざらや ――よごれた なべや ――よごれた せっけんいれで いっぱいです。 本は どこやら―― めざましどけいは どこやら―― ベッドでさえ,どこにあるのか,わかりません! いすまで おさらでいっぱいなので, すわって かんがえることも できません。 おまけに,ながしも どこにあるか わか…
当番ノート 第29期
////////////////////////////////////////////// 2010年8月25日からの手紙 ////////////////////////////////////////////// 昼下がりに雀の巣を見た。 お母さん雀と、もうすぐ巣立てそうなひな、そしてまだ小さなひな。 ずいぶん育ちに差があるなと訝っていたら 小さな方のひながわずかに飛んで、わたしの肩に留まっ…
日本のヤバい女の子
【11月のヤバい女の子/下ネタとヤバい女の子】 ●鬼が笑う ――――― 《鬼が笑う》 峠を嫁入りの籠が行く。裕福な家庭の娘だった。人々がおめでたい行列を作りぞろぞろと歩いていく。と、そこへさっと黒い雲が現れ、花嫁をさらっていってしまった。 目の前で子供を拐かされた母親は半狂乱になり、娘を探す旅に出る。歩き回っているうちにすっかり日が暮れたので、宿を借りようと山の中のお堂を訪ねた。 古いお堂には庵女…
当番ノート 第29期
図々しくも生きている。 あなたをあんなに傷つけたあとでも。 図々しくも生きている。 誰かを知らぬ間に踏みにじったあとでも。 道案内は、親切にできる。 どんなにゆがんだわたしでも。 食べ物を求める空腹になることができる。 どんなに罰当たりなわたしでも。 図々しくも生きている。 食べ、眠り、生きている。 生きることでしかつぐなえないものへ向けて。 生きることでしか生み出せない明日へ向けて。 ̵…
長期滞在者
セイヨウニンジンボクのトンネル、淡い緑が曇り空にもよく似合う。比良おろしが吹いて、木々が風に揺れる、暴れる。吹き付ける風の中に、微かな二度咲きの金木犀が香る。山の向こうから雨が流されて、しまける。小さな柚子の木には、数百をゆうに超えそうな数の柚子、柚子、柚子。懐かしさと言い様のない寂しさがこみ上げて来る。懐かしさはなんでいつも寂しさを伴うんだろう。 滋賀の秋はとても美しい。吹き始める山風が冷た…
当番ノート 第29期
隣の家に住むちびっ子は今日も朝から元気だ。 「お姉ちゃんたち、メキシコに行くの? しんちゃんに会うの?僕も行く!」 一瞬、なんのことか分からず答えに詰まると、後ろからお母さんが出てきた。 「もう、この子たちクレヨンしんちゃんの映画が大好きで…。 この夏、映画の中でしんちゃんの家族がメキシコに転勤になったんですよ」 「クレヨンしんちゃんがメキシコに転勤する時代なんですか」と驚くと、 「ねー、びっく…