当番ノート 第13期
僕のアパートメントにトカゲが住み始めた。 月が出る頃に、トカゲが少女になる。 眠りについた頃に、うっすらと聞こえる。 静かに布団に入ってきた彼女が、僕の親指を口に入れ、音を立てずに舐めている。 朝になる。洗面所の鏡に写っている自分をみつめながら昨夜の夢を確かめる。 白い和紙に落ちた墨の粒のような、真っ黒な彼女の瞳が浮かぶ。 「夢、これはきっと夢だ」顔を洗いながら口にするが、僕は自分の親指の異変に気…
イルボンと小鳩ケンタの空席商会
◇出てくるひと(順不同・敬称略) イルボン(gallery yolcha車掌/詩演家):以下、車掌 小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩 山田あい子(サウンドアーティスト/ピアニスト/マトリョミン):以下、山 黒瀬正剛(画家/素描家/彫刻家):以下、黒 ◇◆◇◆◇ 【2013年12月の相席】 鳩:山へ 『(音楽活動は)個人でやられてるんですか?グループで?』 山:『あ、ちょっと名刺をお渡ししてもよろしいで…
長期滞在者
昨年の大晦日、伯父の家に集まって年越しをした。久々に会った伯母に、Keikoちゃんと呼ばれたとき、あぁ、この人はわたしが言ったことを、いまでもずっと守ってくれているんだ、と思いながら、恥ずかしさと言いようのない居心地の悪さに駆られて、その場から逃げ出したい気持ちになった。 海外では、ある人物にちなんでその人と同じ名前をつけることがある。例に漏れず、わたしにもそのようなミドルネームがある。わたしが生…
当番ノート 第12期
私にとって大切な一冊となった絵本「ずーっと ずっと だいすきだよ」 父が亡くなった時、傷心しきっていた私宛への 友人からのおくりもの。 ぼくと一緒に成長してきた かけがえのない家族である愛犬エルフィーが亡くなる。 好きだという想いを言葉にして伝えていなかったことに気づき 悔やむ家族たち。 その中で ぼくだけは、毎晩おやすみの前に大好きだという想いをエルフィーに 伝えていたからか悲しみも癒され な…
当番ノート 第12期
…ン 思えばこれまで、それなりの数は恋をしてきた。 結ばれた恋も、結ばれなかった恋も、 千切れた恋も、自ら解いた恋も、 …ポーン こうして並べて見てみると、どの恋もそれぞれ刃を隠し持ち、 輝いていた頃の思い出を抱きとめながら、皆同様に鈍色に光って見える。 …ピンポーン 全て輝いて見えたということを裏返せば、 どれも突出して光っていないとも言える。 差異が無いこと。 全部同じに見えること。…
長期滞在者
なかなか進まないことと 反面 勝手に恐ろしい速さで見えてきてしまうことと ぐるぐる周りながら 巻き込み巻き込まれ 吸い込み吐き出して 自分自身で作った渦なのに翻弄されてしまうことばかりだけど 目をまわしながらもかろうじて見つめる先は一点に かすかに光を感じるあの方角へ定めるように 吸って 吐いて すって はいて 気も狂わんばかりに 外気を求めても 身体に取り込むことができるのは その中のごくごく一…
当番ノート 第12期
※女性蔑視ととられかねない発言があることを自覚しておりますので、先にお詫び申し上げます。 先日、俺は20対20の合コンに行った。 まずは居酒屋和民。 俺たちの向かいに座る女共を見渡す。 左からべっぴんさん、べっぴんさん、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、ブス、オカマ、ブス、石原さとみ、ブス…… ……石原さとみ!!!! そう、なんとブスだらけの合コンに石原さとみが来ていたのだ。 しかも、俺の真正面…
当番ノート 第12期
僕たちは生まれたときから、そこにあるものが当然のように、 何の疑問も感じずに過ごしています。だって、それが当たり前だから。 でも、それって本当に当たり前のことなんだろうか? そういうことを日々思い、考え、疑問に思うわけです。 僕は自分を含めて客観的にモノを見ているようです。 それは良いのか悪いのかはわかりません。 社会という大きな枠組みもあれば、周りのコミュニティーという小さな枠組みまで。 そうい…
当番ノート 第12期
電車に乗る生活が日常です。 とくに、満員のぎゅうぎゅうの電車、というわけではありません。 ところで、ぎゅうぎゅう、ということばはいいなあと思うのが、 犇めくという漢字が、ぎゅうが3つも使われていて、そのようすとそっくりだから、 いいなあと思います。 そんな風に、どこに行くにも電車に乗るのが常で、 毎日電車でどこかに行ってます。 電車なんてものがなくて、みんなが一様に歩くのが常であれば、 きっと電車…
当番ノート 第12期
仕上げはお土産 できてしまった絵は、 発表します。 一枚の紙の中に、 今まで過ごした時間全部が詰まっています。 人生全部が詰まっています。 それはもう、なかなかすごいことなんだと思います。 いろいろあった中のほんの一部分が、 紙の上にでてきています。 旅のあとの、お土産話のようなものだね。 ……………. 最終回です。 最終的に文字がなくな…
虫の譜
2011年の夏に出くわしたカリウドバチの狩り。写真を見返すと狩人はヒメベッコウの一種、獲物はオニグモの一種らしい。 カリウドバチ(狩人蜂)と呼ばれる一部のハチは、他の虫を狩ってそこに卵を産み付ける。彼ら(彼女ら)の狩りは、生かさず、殺さず。いずれ生まれてくる幼虫の食糧になる獲物の鮮度を損ねてはならないと、毒針の一撃で仮死状態にして生かしたまま巣穴に引きずりこむ。生きながらにしてじわじわ食われる哀れ…
当番ノート 第12期
彼女に出会ったのは今から5年程前。 初めて会ったその日から彼女の放つ何かに引きつけられ写真を撮り始めた。 目の奥に潜む脆さや闇のようなもの、屈託のない笑顔、芯の強さ 会うたびに 距離が近づいていくたびに 魅せる表情が変化していくのを感じていた。 はじめてだからこそ撮れる 緊張感のある写真 お互いに歩み寄りを重ねたからこそ撮れる写真 年月の流れの中で距離感と表情は変化し続ける それを残していくには続…