長期滞在者
通勤電車は少し人が減りました。 ギュウギュウ詰めではないけれど、都心に近づくとそこそこ混んでいます。つり革を掴む人がほとんどいないのと、車内で話し込む人がほとんどいない。ひたすらスマホの小さな画面と向き合いながら、いつも以上に他人との関わりを持たないようにすることで、目に見えない火の粉が自分に降りかかることを避けているように見える。 マスクとアルコール除菌剤は、相変わらず品薄だ。毎日ドラッグストア…
当番ノート 第50期
回転していなかったかざぐるま。よく動く普段とはまた違った姿をみれた。風力発電には風車が地面に対して垂直にまわる水平軸風車と風車地面に対して並行横に回転する垂直軸風車の2種類がある。今回出会ったのは主力の水平軸風車。より細かくなると、揚力型のプロペラ式で日本では多数の風力発電のフォームがこれである。この横浜に1台ある風車は横浜市風力発電事業の一環で別名ハマウィングというらしい。いつか真下から眺めてみ…
鍵を開けて 詩人が「しょぼい喫茶店」に立った日々のこと
「ポエムイズマネー」の日には、白紙をたくさん持っていく。それからカラーペン、マスキングテープ、そして、前の晩につくったたっぷりのマドレーヌ。看板にはこう書く。 「詩を書くとあなたの詩でマドレーヌを買えるよ!」 ここは、「マドレーヌがもらえる」でも、「マドレーヌと交換できる」でもなく、かたくなに「買える」だ。だって、今日はポエムイズマネーだから。今晩だけは、詩を書くことがお金のかわりになる夜なんだか…
当番ノート 第50期
春夏秋冬というが、冬から春に明確に変わったなと思える日が好きだ。そう、一つネジが動いたなという感じで嬉しい。2020年春。あまり春が好きと感じたことはないのだが(どちらかといえば新緑の美しい5月の方が記憶に残っている)私の誕生日は4月。人生のネジもこの月に動く(正直このネジは動いて欲しくないなと思える年齢に達してしまった)。地球の時点のスピードは少しずつ遅くなっているみたいだが、宇宙レベルの変化に…
Mais ou Menos
まちゃんへ 今日は病院の日やね。まちゃんがコロナにかからへんかいつも心配しています。 その分自分も持って帰らんようにしんとと、気をつけてる。 少し前にまちゃんの目眩がひどくなって少し寝たきりみたいな状態になったときは、本当に心配した。 今少し落ち着いているみたいやから安心してるけど、春やからホルモンバランスが乱れやすいんやろうか? 自分のほうは、薬効いてて、前より随分動けるようになってると思う。ク…
当番ノート 第50期
踊り疲れて眠ってしまう。踊りきったね.という自分への労いなどする暇もなく、ただ気がつけば。 曲は一時停止。別の世界線に放り込まれる。 寝たくて寝たくて仕方がないというわけではなくて、気づけば寝入っていた。窓から燦々と日が差している。まだカーテンのない我が家、家の奥のほうに入ると暗くなっているスペースが現れる。そこに布団を移動させる。その日は、アパートから歩いて5秒の所にあるパン屋さんでパンを買って…
当番ノート 第50期
アブドゥッラーさんという友人がいる。30代前半のヨルダン人、男性。難民支援を行うNGOの職員で、ヨルダン国内でシリア難民の支援を行っている。 2011年のはじまり、「アラブの春」が中東全域に広がり、シリア国内でも反政府デモが始まった。同年5月にはシリアからヨルダンへの避難民が報告された。11月にアラブ連盟がシリアの加盟資格停止を決定すると、ヨルダン政府はシリアからの避難民を「難民」として認定するよ…
スケッチブック
色々なことが取りやめや延期になってようやく、日常を広げて考えられる感覚がある。地球の裏の友達と、数年ぶりのやりとりが再開している。「そっちは大丈夫?」「そっちの様子はどう?」なんて、いままでにない共通言語で会話をしている。 怖いんだよね。と布団の向こうで声がした。これから、たくさんの人が亡くなって、大事な人が死ぬかもしれないのが怖いんだよね。 SNSを1ヶ月閉じていても平気だったのが、いつのまにか…
当番ノート 第50期
命日には、父が好きだった奥穂高に登って頂上で線香をさそうと思ったのに、なかなか旅行もしがたい。 仕方ないので、近場で空が開けた高い場所を探し、線香をさす真似事をしようと思う。家にはチャンダン(インドのお香)しかないのだけど、やはりダメだろうか。 実家の墓も東京も、きっと同じ空の下。 — 父の旅立った翌々日、父をよく知るお坊さんから、高級な線香をもらった。「いい匂いがするから、やってくれ…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
人生における運命の出会いというのは、何回か訪れるのかもしれない。それは恋愛に限らず、その出会いがどんな風に実を結ぶかも重要じゃない。出会った地点を振り返ったときにそこから新たに迷子になったような気がする出来事を、私は運命と呼びたい。 彼の企画する音楽イベントに初めて居合わせた日のことが忘れられない。その日は、その後数年にわたって続くこととなるイベントの初回だった。「上海の夜」。それがサックス奏者で…
当番ノート 第50期
「可愛いお店、テーブルの下の青いタイル好きです」 自分のお店とか場を持ちたいと思う人は多いようで、今日も話を聞きたいと都内の大学に通う女の子が、土曜日に遊びに来てくれている。白い光が差し込む店内を、珈琲を飲みながら興味深そうに見渡していた。 「この棚なんかも自分たちでつくられたんですか?」 隙間に3列の黒板が埋め込まれた棚には、「Coffee Wrights」の豆や、台湾の作家「Rainy」に逗子…
長期滞在者
日常に少しずつ忍び寄る感染症の恐怖。 何気ない日用品が買えなかったり、たくさんのニュースが流れてきて、とても強い風を毎日全身で受け止めているような気がする。 実家に帰ることもだんだんためらわれてきたし、海外にいる友人たちの様子も気になるけれど、まずはじっと家で耐えて過ごそう。 台風がきちんと過ぎ去るように、この事態もきっと収束していくはずだから。 それにしても・・・今月は寒暖差が激しすぎて、体がく…