長期滞在者
雨が降りだすときの感じが好きだ。さーっと空気がざわざわしたような気がして、ちょっと遅れて匂いがやってくる。夏には湿気の帯が、秋や冬には冷気のかたまりが、雨と一緒に現れる。傘を持っているときには地面を見下ろし、持っていないときには雲に覆われた空を見上げ、降ってきたか……ともう一度、自分に言い聞かせるように、思う。 なかでも特に、熱帯の森にスコールが降るときには、いつもうっとりしてしまう。早朝、調査小…
当番ノート 第41期
舞台後 頂いた花を楽屋に置いてきてしまった その後バーに行き バーの店員さんに花束をもらった 忘れた花を届けられたよう 今日は久しぶりのロミオとジュリエットの娼婦役 いつも演じるのがとても楽しい 辛子色の衣装もお気に入り 髪型 化粧をしながら段々自分じゃなくなっていく 今日舞台を楽しめなかったら引退しようかというアイディアが踊る前に浮かんだ でも今日も舞台で楽しさを見つけた そして二階席まで満員の…
長期滞在者
若い頃、何が面白いのか分からなかった写真たちが、ずっと後になってその仕事のすごさに気付かされたりすることがあります。視覚的なエフェクトであるとか、芸術論か何かの引用や焼き直しのようなものではなく、ただその時々の出来事に居合わせるような写真に心が動きます。「表現する」という言葉の印象とはまるで正反対の感もありますが写真表現の真骨頂とは、みつめることを絶えず積み上げていくことだと、近頃強く思います。 …
当番ノート 第41期
電車を使って大阪から京都に向かうとすれば、選択肢は3つあって、阪急か京阪、それかJRで行くことになる。 このうち、京阪は始発駅の淀屋橋からずっと淀川をまたがずに敷設されているが、阪急とJRは梅田駅(大阪駅)を出て早々に淀川を越える。淀川を挟んで、3路線の線路はきょうだいのように並んで走っている。ちょうど、背骨の両脇に太くて大きい筋肉があるように。 淀川は琵琶湖を水源とし、瀬田川、宇治川と名前を変え…
メニハ ミエヌトモ
秋の季節は嬉しさがこみ上げる。 特に柿が店頭に並び始めると、梅の時期同様にソワソワし始めるのだけれど、 梅の時期と違うのは「見切り品」に柿の袋が置かれるのを待つ、と言う所だ。 そう、私が柿を見てソワソワするのは「柿酢」をつくるため(笑)。 本当は庭に植えられているような柿がベストで、ラッキーな年は 知人から沢山頂いたりするのだが、それが無い時は見切り品の柿をひらすら狙う。 柿酢には、食べられない程…
Mais ou Menos
今日は、病院お疲れ様でした。 まちゃんが新しく薬を飲み始めて、それがまちゃんの体にどんな影響があるのか心配だったけど、今のところ、気力が少しアップしたり、夜まで体力が持つ日があったりと、前よりは、少し体が元気になっているように見えます。 ただ、薬の影響で顔がむくんだり、体に水分が溜まり過ぎたりすることもあるみたいなので、そこが心配ではありますが、自分は見守るくらいしかできないので、見ています。あと…
Do farmers in the dark
表題:ほとんど何もしない生き物達の時代。でも穴に入って日光を浴びだりする こんばんは!自分には2歳と何ヶ月かになる激烈に可愛い娘がいるのですが、今回はその娘と過ごす中で特に退屈な気分の日の事を、主に娘ではなく娘といる自分の様子を、文章にしています。 実際の生活では今回載せたような退屈な日はあまりなくて、ほとんどイライラしていたり、たまに楽しかったり、何か心配して冷や汗をかいたり、恥ず…
当番ノート 第41期
周りで起こる化学反応 小さなことが 当人同士だけではなく 色んなところに影響を及ぼす その小さな変化が 波のように伝わっていく 毎日の気持ちが忙しい 全て整えて 1日1日を過ごせたなら でも それよりも 感情のうねりの日も 穏やかな日も そのままに受け止めて 味わってみる 今しかないこの気持ち それを味わう きっと味わわなかった気持ちは どこかでいつまでも存在する 味わってそれを昇華していく 昨日…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
何かを綺麗だと感じて、それを伝えたいと心に浮かぶ人がいる。美しいと感じることをあなたに伝えたい、と思うことは愛に近いと言ってもいい。 そこまで考えて、ロシアの映像作家、ユーリ・ノルシュテインのアニメーション「霧につつまれたハリネズミ」が自然と思い出される。主人公のハリネズミ、ヨージックが森の仲良しのコグマに会いに霧の中を歩くあいだの出来事を10分ほどで描いたアニメーション。ヨージックとコグマは毎晩…
長期滞在者
カレーを作るときに味見をしながらスパイスを足していくのと同じように、暮らしにも刺激を足すことができるはずだと思う。どんな類の刺激であっても良いわけはなく、それはやはりカレーのように意外性があり、思わず微笑むようなものであってほしい。 最近の私は暮らしにより強い刺激を求めるようになっている。そしてそれだけでなく、より安らかな時間も求めている。 10月1日(月) 絹江ちゃんがカレーを作っていた。良い匂…
当番ノート 第41期
連載の第2回と第3回でそれぞれ自宅から徒歩圏内のまちを紹介してきて、近場について書きすぎるのもどうかしら、と思いつつ、やっぱりどうしても外せないと感じるのが、天神橋筋六丁目から扇町の一帯だ。 大阪は東京と違って、近接する乗り換え可能な駅同士で名前が違うことが多々ある。そして、「まちの名前」として知られている呼称と、駅の名前も必ずしも一致しない。 先に書いた「扇町」という呼称を、大阪の人はあまり使わ…
お直しカフェ
10月は関西にいた。私もだが、祖母があまり元気でないので、祖父母宅に入り浸って編み物でもしようかなと企んでの帰省だったが、急遽祖母は長期入院となり、編み物セット一式とおやつ、水筒にいれたお茶を持参して病院へお見舞いに通う日々となった。 10月17日 今日は祖母宅に寄って、棒針を探し出してから病院へ。足が不自由になってから、これまで祖母の城だった二階の部屋はどこも結構散らかってしまっていて、探すのに…