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Do farmers in the dark(6)

Do farmers in the dark


cover

表題:ほとんど何もしない生き物達の時代。でも穴に入って日光を浴びだりする

 

こんばんは!自分には2歳と何ヶ月かになる激烈に可愛い娘がいるのですが、今回はその娘と過ごす中で特に退屈な気分の日の事を、主に娘ではなく娘といる自分の様子を、文章にしています。

実際の生活では今回載せたような退屈な日はあまりなくて、ほとんどイライラしていたり、たまに楽しかったり、何か心配して冷や汗をかいたり、恥ずかしい失敗ばかりしてとにかくうろたえてばかりです。いずれの状況でもとにかくニヤニヤ顔でわずかにクネクネしている。全然関係無いけど今回の文章は主にエミネム(EMINEM)を聴きながら書きました。ではよろしくお願いします!

そり

 

第1話 吉日、大吉の日

 

夢を見ていた。

僕は白い砂漠の中にあるショッピングモールにいた。とても真っ白な砂の中に、近代的なショップが並んでいる。自分は遠い国の観光地に来ているのだろうか。顔の肌が鰹節(カツオブシ)のように固くめくれた人たちや、細い小枝が重なって内部が空洞になっているような顔の人たちがウロウロしていて、外国には珍しい人たちもいるんだなあと思って、どこか良さそうなお店を探す。

宝石屋かなあ!入り口にエスカレーターがあり、半地下に降りていくような構造のお店に入った。冷たい水色と、ところどころ赤い絨毯が敷いてある少し青白い照明のお店だった。2,3人、客がいた。半地下に降りて僕は宝石を見ていたと思ったが、実際には何も見ていないに等しかった。宝石なんて買えないからね。(なのに何で僕はお店に入るんだろう?)買えないものを見ても悲しいだけなので、興味を持たないような脳の構造になっているんだ。(なのに何で店に入ったんだろう?)心配性な脳は僕をいつも悲しくならないように、落ち込まないようにしてくれている。つまりバカみたいな、魂の無い平坦な人間にしてくれているんだな。

ただぼんやりと宝石が売っているらしいという事を確認する何分かの、もしかしたら30秒くらいの不毛な作業の後に、さっき降りてきた短いエスカレーターを登って店を出ようと思った。濃い青のスーツを着た痩せたパーマの店員がエスカレーターの側にいた。声をかけてくる様子は無いけど気持ちの良い笑顔を作っている。店を出よう。するとエスカレーターに乗る前に、弾丸が天井からやたらとゆっくり滑り落ちてくるのを見た。エスカレーターの先、出口付近の壁面上部から発射され、天井ぞいに、そして壁ぞいに直角に折れエスカレーターに乗ろうとしている自分の頭部をめがけ、弾丸にしてはとてもゆっくりと滑り落ちて来ている。アッあっぶない!僕は素早くエスカレーターを駆け上がって店を出た。

弾丸がスローで助かった。そういえばあのエスカレーターの前にはひときわ大きな宝石がショーケースに飾られてた気がする。この店はのんびり宝石を見ている人をゆっくりした弾丸で殺すシステムを採用しているのだろう。

 

「トウチャン、オッキテ」「トウチャンオッキテヨウ!」

夢が覚めて、娘の声が聞こえた。娘は僕に馬乗りになって早く起きて欲しいと言っていた。時計を見ると朝の7時だった。本当に眠たかったので、

「もうちょっと待ってェ~、もうちょっと待ってェェ~、後10分だけ、後10分だけダカラァァ~!ねエエエエェ?」

と一生懸命お願いして、運良く諦めてもらったような気がする。馬乗りが解けたが、娘はその後も起っきてと言っていた。僕は娘の声を無視して寝た。

 

 

夢を見ていた。

私はホテルにいた。襖(ふすま)があり、畳があり、プライベートは無く、オレンジの灯篭が灯り、ホテルに泊まってるつもりだったけどシェアハウスなのかな?とにかく大名の家の大広間みたいな作り。

二人の男が、今日入った白い砂漠の中のショッピングモールの中のあの宝石店からエレベーター前のでかい宝石を盗み出す計画を立てていた。灯篭の薄明かりの中で。オレンジ色だ。闇と、オレンジ色なんだ。一人は天狗のような人だった。一人はダルマのような人だった。僕はなぜか2人と知り合いで、宝石を盗み出す計画を「そうだね。」「そっかあ~」などと言って相槌をうっていたと思う。盗みに関する知識は無いし、盗み以外の全ての事に関する知識が無いので、彼らの話題には、そして彼ら以外の全ての人の話題にも、私は相槌をうつことしか出来ない。

ゆっくりと滑り落ちてくる弾丸の事は話題に出なかったけど、言わなかった。この二人は僕より断然仕事が出来そうなので、スローな弾丸の事は既にご存知だろう。ちなみに僕より仕事が出来ない人には今まで出会った事がないけども。僕がものを知らないだけで、スローな弾丸についてはきっと周知の事実なんだ。しかもこの二人の見た目はまさに一人は天狗、もう一人はまさにダルマなので、仕事が出来そうというレベルでは無く僕なんかより遥か格上の人たちだろう。僕より格下のひとにも今まで出会った事がないけどね。ただ、見た目的には今まで出会った人の中でも最高峰に位置する人たちだ。まさに天狗と、ダルマそのものなんだよ。

翌日、僕は昨日の宝石屋に行った。僕は盗まないけど昨日の二人の話が気になったのか何故か行った。すると今度はエスカレーターを降りたらすぐに、またも僕の上にゆっくりとした弾丸が滑り落ちて来た。何故かそれは昨日とは違い、爆弾に思えたので、パニックになりながらも正確な動きで優しく爆発しないようにスローな弾丸を指で掴んだ。そしてそれを店内のなるべく自分から遠いところを、店内の中で一番端っこを、めがけて放(ほお)ったんだな。昨日と同じく店内には2、3人の客がいた。放る前の一瞬2、3人の客は重体になるかも知れないと思ったけど、それは考えないようにした。

すると昨日もいた濃い青いスーツを着たパーマの店員は慌ててそれをキャッチした!店員はきっとスローな弾丸爆弾をうまく処理してくれるだろう!ヤッタァ!2、3人が重体かもしくは死なずにすんだ。僕は悪人にならずにすんだ!ありがとう !

 

 

 

目が覚めた。時計を見ると5分くらい寝ていたみたい。最近血圧が高いのか割と早く起きれる。嫌だなあ。ここ最近、何年か前から僕はどこも悪くないのによく体の事を心配している。とにかく全力で無理をしないようにしているんだ。布団から立ち上がると娘と妻に挨拶をして、ペットボトルからコップにアイスコーヒーを注いで、舌を刺す複雑な甘みの、若草のようなとってもおいしい….タバコを吸った。

 

 

午後になり私は児童館と呼ばれるとても親切な施設に娘と来ていた。そこは朝から夕方までやってて、絵本とか様々なおもちゃとか色々使わせてくれるんだ。何年か前からだけど特に最近想像力が著しく死んでいるので、娘とどこかに2人で出かけないといけない状況になった場合は他に行きたいところもなく公園か児童館に行ってしまう。

児童館に着くと、とっても親切な年配の女性が出迎えてくれた。金色のスニーカーを履いて、メガネをかけ、白髪だった。金色のスニーカーがとってもかわいいと思ったけど、僕は特にそれについて何の行動も起こさなかった。僕がスニーカーをかわいいと思っただけで、その事で年配の女性にも、僕にも何の影響も見られなかった。僕は他の人と話す時と同じようにニヤニヤ顔で滑舌の悪い聞き取れるか聞き取れないか分からない言葉になっていないような音でただ相槌をうつだけ。年配の女性のスニーカーが金でかわいいという事に対して何かしたり言ったりするのは変だと思った。

 

1階の受付から娘と女性と私で一緒に階段を登り2階に上がった。

 

とにかく親切な人で小さな部屋と大きな部屋があって、おもちゃを倉庫からたくさん出してくれたり、小さな部屋でも大きな部屋でも「エアコンをつけましょうか」「エアコンをつけましょうね」と言ってくれた。

季節は夏で7月だったけど、その日は珍しくとても涼しい日だった。僕はエアコンはつけなくても良かった。でもエアコンがついてても良かった。僕はやはり聞き取れるか聞き取れないかわからない滑舌の悪い言葉でただ相槌を打っていた。

年配女性は娘にもよく話しかけてくれた。

娘は無表情だった。まだ外の人間に慣れていないので、自分と奥さん以外の人間に対してはだいたいしかめっ面だった。

一通り色々な説明をしてくれたりした後に、金のスニーカーの女性はニッコリとしながら1階に降りて行った。まず絵本やおもちゃがたくさんある小さい方の部屋に入った。座敷みたいな感じでちゃぶ台が一つあった。エアコンがついていた。

自分はおもちゃに興味が無く、割とリアルな絵の絵本をたくさん読んでその中に描かれている山や草花や外国の建物を見て割といい気分になりたかったので娘にそれ風の絵本を一緒に読むようにすすめまくったが娘は絵本に全然興味が無かった。

しばらく小さな部屋でプラスチック製のブロックのおもちゃで遊んだ後、もう一つの大きな部屋に行って先ほどの年配女性が倉庫から出してくれた乗り物のおもちゃに乗って遊ぼうとした。娘は乗り物が大好き。こちらの大きな部屋は体育館みたいな感じで、マットとかも端っこに置いてあった。エアコンがよく効いていた。

 

広い体育館みたいな室内の中心に先ほど年配女性が倉庫から綺麗に一列に並べて出してくれた乗り物が4つあった。娘はそこから1つ青いプラ製の2ドアの自動車風の乗り物を選んで乗ろうとした。娘はその乗り物にうまく乗れそうに無かったので手を貸そうとしたけど、娘はそれをとても一生懸命に拒んだ。

えらいなあ。

でもやっぱりその乗り物のおもちゃは難しくて、娘がドアを開けて乗ろうとすると何というか座席と反対に座ってしまうというか、ハンドルに背を向けて座席の方を向いて座席に座ってしまう格好になる。さらに運転席は窮屈だった。

娘もうまく乗れてない事に気付いて、どんどん顔がしかめっ面になってしまい、泣き出してしまった。その後もドアを開けて反対に乗って、ドアを閉めて、泣いて、ドアを開けて降りて、泣いて、ドアを開けて反対に乗って、ドアを閉めて泣くという動作を繰り返していた。

同じ映像を繰り返し見ているようだった。そればかりか1セットの反対に乗り泣いてもう一度反対に乗る動作はどんどん早くなっていき、まるでテープの早送りを見ているような状態になった。娘は反復運動の加速の限界に達した頃、やっと諦めて大声で、隣の墓地の方向を指差しながら号泣していた。とにかくエアコンが涼しくて体育館はひんやりしていた。そろそろ帰る頃だった。

 

すごく単調な1日だった。朝のニュースの占いで今日の運勢は大吉だったよ。つまり僕は、私は、すごく幸運だったんだろう。いったい何が?

 

歯も

カメ、カメ用のお肉、少し裂けている煙か雲と、少しだけ夕暮れ

 

 

第2話 玄関前踊り場にて、ゴミの匂い

 

夢を見ていた。簡単にまとめると限定的なタイムスリップ能力を持った女の人の夢だった。

僕はその夢の中で女の人の視点だった。その女の人は出産の翌日、世界の破滅的なものが何故か起こるんだけども、数秒前にそれを回避するため何故かタイムスリップ能力を発揮し、タイムスリップ先は妊娠中に夕方帰宅中マイカーで家に向かっているとバックミラー越しに後ろを車で走っていた両親が事故に遭って死んでいるのを目撃したという瞬間で、すでに経験した事からか何故か両親を置き去りにし平常心で水色の少し暗い夕方の空とメタリックな青い湖の脇の舗装されてない道を通って自宅に帰りドアを開けると、またタイムスリップしているのか女の人はすでに子供を出産していて居間の前に垂れているのれんかすだれに隠れて顔の見えない夫がタオルにくるまれた赤ちゃんを抱っこしていて、そして見なれないドアが玄関のドアの隣にあるのでそれを開けるとまたタイムスリップしているのかバックミラー越しに両親が事故死しているのを帰宅途中のマイカーのバックミラーで見てまたメタリックな湖の脇道を通って…..

 

「トウチャン!立ッツ!」「トウチャン!タァッツゥ〜〜!」

夢が覚め、娘(2歳と何ヶ月かになる、筋肉がとても発達している)がしかめっ面で立っていた。今日は一瞬で立ち上がって起きれた。娘に「おはよう」と言った。その後すぐに何故か僕はさらに続けて「おはようおはようおはよう」と連続で3回くらい言った。やっぱりここ最近自分は血圧が高くなっているようで、どんどんすぐに朝起きれるようになっている。体に気をつけて昼まで寝れるように生活を改善しなければいけない。

 

まだ9月なのにこの日はとても涼しくて曇っていた。特にする事はなかった。

朝は特に何もせず、かといって完全に何もしないわけでもなく、何もしてないような事をして時間をやり過ごした。

 

昼頃になり娘はシャボン玉で遊びたいと言った。

風呂場に置いてあるシャボン玉セットを持って、私の住んでいる都内のおもちゃみたいに安全で小さくて狭い町の中にあるボロボロのおもちゃみたいなアパートの部屋の前のドアの前の踊り場で、娘とシャボン玉をして遊んだ。2階に住んでいて、ドアの前は下に降りる階段があり踊り場になっているので、シャボン玉をしたい時はいつもそこでしている。

シャボン玉セットは内容が充実していて、銃のような形になっており引き金を引くとたくさんシャボン玉が出るおもちゃと、普通に息で吹いて膨らませる先が輪っかになっているプラスチックの棒が3本と、液体と息で吹く先が輪っかになっている棒が一体型になりさらにアイスクリームの形をしているおもちゃと、あとはシャボン玉の液体が4つもあった。とても充実しているので、シャボン玉はいつでもやり放題なんだ。

シャボン玉遊びはとても退屈だった。退屈なのは割と好きで、とっても安心して落ち着くから天国に住んでいるみたいな、死後の世界にいるような気持ちになる。それか幽霊みたいな気持ちか。

とにかくシャボン玉遊びは単調だった。

なるべく大きく膨らませて、すぐ落ちてしまわないように上の方に飛ばして、シャボン玉のメタリックな虹色の具合を見て、シャボン玉がどこからどこに移動するか見る事で目の前にある別のアパートと自分のアパートの間の空間の気流を目で追っている気分になる、という事をずっと繰り返している。その間にタバコを吸ったり吸わなかったりもする。

娘も集中してシャボン玉をしているようだ。たまに折りたたみ椅子に座って僕がシャボン玉を膨らませるのを見ていたりもする。

 

曇り空に木々の緑がとても映えていた。アパートのまわりには4本の目立つ木があって、全部違う種類の木だ。将来的に万が一だけど介護される時は木に介護されたいと思った。木に介護、または看護されるのはなかなかに良い考えだと思ったけど、そういう事を考えるのもそれを良い考えだと思うのも、毎日安全なところに住み安全なところに行き天国に住んでいると勘違いしているようなくそ野郎の考える事だと思った。つまり僕は多分くそ野郎だった。

 

周辺のアパートの屋根にはカラスがいた。5つの屋根が見えるが、その5つの屋根に1匹ずつカラスがいた。空は曇っていて僕はシャボン玉を膨らませていた。娘は既にシャボン玉をやっていなくて黄色いライオンの顔のデザインになっているリュックサックを背負い緑の折りたたみ椅子に座って電源が永遠に入らない壊れたスマートホンを見ていた。

 

2時間くらい経って、娘は僕を階段前の踊り場に座らせ、娘も隣に座った。どうやら2人で一緒にアパートの前の道路を眺めたいらしい。仲良くぴったりと横にくっついて座って、道路を見た。

娘はニコニコしていた。僕はニヤニヤしていた。

たぶん自分が娘に何か言ったと思う。娘が突然とても上手な日本語で

 

「トウチャン、クチクサイネェェ」

 

と言った。まだ文章とかそんなにたくさんの事が上手く話せないのに。すごく文章だった。とても上手に発音できていた。娘はとてもニッコリしていた。

僕の口の中は昔からいつもゴミの匂いだった。親知らずは割れたり欠けたりして、前歯は半透明に透けていた。透けた前歯と他のすべての歯にも、褐色の汚れがあった。僕は口のゴミの匂いについては今後も対処するつもりは無いので、娘が少し大きくなっても出来ればニッコリと口が臭いと言ってくれると嬉しいと思った。もしくは僕と話さないか、遠く離れて遠距離で話すか、暮らすかだ。

 

一緒に道路を見て30分くらい経った。そろそろ家に入ろうかと言って、ドアを開け家に戻った。

妻は夕食の準備をしていた。しめじ入りのつくねを作ると。とっても美味しそうだなあ〜。

娘は何かに疲れたのか寝ていた。僕も一緒に横になった。

 

いつの間にか自分も寝ていて、起きたら真っ暗だった。時計を見たら深夜2時だった。

しめじ入りのつくねがすごく気になったので妻にしめじは?しめじはしめじは?しめじは?

と何度も聞いたけど、寝起きだからか全く滑舌が悪すぎて、妻は全く聞き取れない様子だった。

それと妻が僕に作ると言い作ろうとして実際に作っていたのは、しめじ入りのつくねではなくて、エノキ入りのつくねだった。僕はエノキをしめじと勘違いしていたんだ。最初から白くて細くて束になっているものをちゃんと思い描いていたんだけど、それをしめじと呼ぶと勘違いしていた。今日は頭の中でエノキの画像が、しめじというタグに間違って紐付けされていたんだ。しめじがつくねの中に入ってるわけないよね。

 

うなぎ

うなぎ

 

 

第3話 変わっちゃったなあ

 

夢を見ていた。

半地下の採光窓が着いているコンクリートの現代風建築のなかで、僕は僕の属している団体の会合に参加している。食事会だ。

 

ざわついて、みんながみんな好きな話をしている。ニヤニヤ顔でね。だいたい卑猥な話だろう。

 

そこで僕は数あるテーブルの中で僕の向かいに座っていた同団体の知り合いに気分の悪いことを言われ、とても立腹してしまった。立腹は収まらず、憤慨し、頭をひっぱたいたあげく、雑巾みたいに相手の体を絞って皮を剥いでしまったんだ。この時まで忘れていたけど、人間はみんないつかどこかで薄いビニールのような皮を買っていて、それを筋肉の上に纏っているんだったっけ。(夢の中ではそういう記憶設定で僕は夢の中で瞬時に作られた記憶を思い出したようだった。)

その後僕はやってしまった!と凄く怖くなって、とても後悔して、すぐにその場を逃げ半地下の広い部屋から地上のバルコニーに上がって、(曇り空だ)

深い青緑の用水路のプールのそばでタバコを吸って、(この建物の周りには山々がありとても景色がいい。曇り空だ)皮を剥いでしまった同団体の知り合いがどうなったのか、皮を剥いでしまったので、彼の皮は本当に安く見えたけど、ぐしゃぐしゃのビニールのようだったけど、死んでいるんではとか、どんな状態なのか本当に恐ろしくて怖かった。

 

恐る恐るもとの半地下の会場へ戻ろうとすると、途中のホールに彼は居た。どうやら医者に助けられたようだ。

だけど全然元の姿とは違って、彼の姿は、鍵盤の数が4つくらいしかない何となく人の形をした木琴のような姿になってしまった。あまりにも木製で、ヤスリがけしてワックスかワニスを塗った木製だった。頭部はつるつるの球で、体は簡単な細い棒を球でジョイントしていくタイプの骨組みで腕や手があり(手も球だ)、人型をしている。木琴は腰あたりについてて、その下に足はなく簡単な台と車輪がついていた。もうしゃべる事も表情を作る事も不可能になり、4つの鍵盤を叩く事しか出来ないだろう。

そこで僕は改めて取り返しのつかない事をしてしまったと思い、本当に恐ろしくてもうどうしようもなくなってしまった…….

 

「トウチャン、オキテ----!ト--ウチャン!」

 

 

目が覚めた。今日は娘とどこかに出かける予定だった。妻が作ってくれた焼きオニギリをテレビを見ながらみんなで頂いて、準備をして、以前はお気に入りだったけど今は気に入ってないくすんだ赤紫の編み編みのピッタリした帽子を被って娘と出かけた。

 

何年も前から想像力が死んでいるので、何となく船に乗りたいと思った。それが一番いいと思った。

何年も前から記憶力もほとんど死んでいた。網膜からの情報については、見た画像は脳を透過し、もし透過してなければズタボロに圧縮され容量を軽くした後に間違ったフォルダに間違ったファイル名で保存されていた。耳もたぶん遠いと思う!相手に何回か聞き返さないと何を話しているか分からないんだ。滑舌も悪かった。でも自分以外のみんなも大体そんな感じなのかな?

 

都内の、港区のどっかからお台場まで水上バスが出ていたのでそれに乗る事にした。とても短い距離だと思う。特にお台場に用事は無かった。水上バスに乗りたいと思った。とても簡単な事だった。

簡単で安全な事しか出来ない。想像力が死んでいたんだ。さっきから自分は想像力がとか何かかっこいい言い方をしているけど単に引っ込み思案でなおかつ真心がないだけだと思う。

 

とにかく電車を乗り継いで船着場に向かった。乗り物を持っていないんだ。徒歩か、電車しかない。

娘は電車が大好き。とても上手に電車に乗っていた。エレベーターを見つけるのも得意なので、エレベーターを見つける度に教えてくれた。

電車の中にはいつもとても親切な人がいる。席を譲ってくれる人がいたり、娘に声をかけてくれる人達がいるんだ。自分と娘の都合で立っていないといけない事が多いので断るしかないけど、とにかくほとんどの人が親切だった。国とか区のシステムや法律が、社会や色んな会社が、公共機関が、人々が、子供や自分にとにかくやさしくて親切だった。子供を連れている事によって殴られたりした事は一度も無かった。なので特に腕力をつけたりとか、凶器を隠し持ったりだとか、勉強したりだとか、何か軍団(ぐんだん)を作ったり軍団(ぐんだん)に入ったりしなくても、引っ込み思案でも生活出来ていた。

 

船着場に着いた。大きな船が出るところを横目に見ながら小さな船(水上バス)に乗車券を買って乗った。

2階にデッキがあったのでデッキで海と景色を見ていた。娘はほどほどに楽しそうだった。僕は楽しかった。曇っていた。風が寒かった。

 

15分か20分くらいでお台場に着いた。お台場では主に駅を探していた。駅を見つけたらまた電車を乗り継いで帰った。

自分たちが住む町に着いた。何故かもう夕方だった。アパートに向かう帰り道、娘は急に道に立っている白髪の赤ら顔の警備員さんを指差した。僕はその警備員さんを見たが何を警備しているのか素人には分からなかった。すると突然、

 

「カワッチャッタネェ」「カワッチャッタナァ」

 

と娘は言った。その後はありとあらゆるものが変わっていた。

教会の鉄門、垣根の葉っぱ、ただの壁、空とかほとんどの人やものに

「カワッチャッタ、ネェ」「カワッチャッタ、ナァァ」

と言っていた。僕はそれがとても面白かったんだよ。

 

曇り

ナンに黒い筒を刺してナンを焼いていて、その煙で空が燻されていると思うけど、とにかく自分は緊急で脇の下に手を入れて脇を締めて圧迫しないといけない。できればナンも食べたい

 

 

第4話 風邪をひいてしまった!

 

夢を見てたんだけど、とにかく心底尊敬している友人がその友人の奥さんを殺害する予定を立てていたのでとても恐ろしくて、友人の奥さんはとてもやさしくてチャーミングな人だったので僕は本当にやめて欲しかったけどその友人の事を心底尊敬し畏れを抱いている僕は友人から殺害の計画を打ち明けられた時に僅かに顔をしかめる事しかできず(理由は分からないけど僕はメッシュのチョッキを着てトランシーバーを持っていたなあ。友人は普通の服装だった。公園にいて暗い夕暮れだった)、なんだかんだ埃っぽい5階立ての暗い建物でたくさんの食べ物が出るパーティの準備をしたり忙しくて時間は刻々と過ぎていき、なんとその友人の奥さんと僕は一緒にパーティの準備をしていて、どうしようどうしようと思っていると、

 

目が覚めた。娘が立っていた。「トウチャンオハヨ〜」と言った。2歳と何ヶ月かになる娘は近くで見ると大きかった。遠くで見ると小さかった。ぼくは「おはようございます!」と言った気がするよ。

今日は満を持して、ムンクの絵を上野にある美術館に見に行く日だった。様々な刺激溢れる娯楽の中でわざわざムンクの絵を楽しみに見に行くというのは感性のねじ曲がった矮小な価値観の臆病者の短足の背骨(ハイコツ)の曲がった丸メガネがする事かもしれなかった。しかし娘もムンクは知っていた。有名なムンクの叫びのポーズをよくしてた気がする。

すると突然悪寒が走った。しまったあ!風邪を引いてしまったあ!

喉が少しだけ痛い気がする。体がだるかった。多分この感じだと熱が36度はあると思う。ちなみに僕の平熱は35度です。体が少し熱かった。

 

私と娘は準備をして電車に乗りムンクを見に行った。

ムンクの展覧会はすごい人だった。今日は土曜日だった。自分の圧倒的な能力不足によってなぜか土曜日しか行けなかったんだ。入場するまでに何分か待った。待っている間、娘は何枚も貼ってあるムンクの叫びのポスターを見て「ムンク」「ムンク」と言っていた。風邪をひいている中すでに娘を抱っこしてだいぶ歩いたので満身創痍だった。ついに入場してムンクを見た。体が熱くてひどく汗をかいていた(36度3分くらいの熱だと思う)。肝心のムンクの絵は遠目に早足で見て回り、何だかかっこいいという事を確認した。色と、形があって、何となくかっこいいい。それぐらいの事しか感じられなかったし近くでも見たが近くで見ても遠くで見てもそれ以上分からなかった。でも何となくかっこいい絵というのは全世界的にほとんど指で数える程度しか無いのかもしれない。有名なムンクの叫びも見る事が出来て、娘はそれをとても見たがっていたのに実際見るとそんなに楽しそうにしなかった。踊ったり、大声を出したりしなかったんだ。僕は娘を抱っこしながらとにかく素早く人を避けたりしながら絵を横目で見て出口を目指していた。

 

ムンクの展示の滞在時間は10分くらいだった。何か急いでしまいすごく勿体無かった。

帰りにお腹が減ったので上野駅前の地下にあるレストランに行った。ここも混んでいて10分ほど待って向かい合わせの2名席に座った。娘とレストランに行くのは2回目だったけど、何か不思議だった。娘も不思議そうだった。何も言わなくても店員さんは娘用の高い椅子を持ってきてくれた。娘にはお子様ランチと、僕はステーキを頼んだ。娘は初めてエビフライを食べ、満足そうだった。

食べ終わって店を出ようとすると、娘は食器を片付けなくていいのかと身振り手振りと短い単語で伝えてきた。僕はレストランは皿を片付けなくていいんだ。店員のお兄さんが後で片付けてくれるんだと伝えて娘は理解した様子だったがやっぱり少し不思議そうだった。確かに不思議だった。2人でご飯を食べてお皿を置いて、娘用に出してもらった高い椅子を置いて、お金を支払い帰るのは何だか孤独な気分だった。あろう事か何かコインを渡されてそのコインで店のカウンター横にあるガチャポンを子供が1回だけ出来るようになっていた。娘はガチャポンを帰り際にやって、すごく満足そうだった。とんでもなく笑っていた。何か狸か狐の消しゴムみたいなのがガチャポンの丸いケースの中に入っていた。優しい店員さんは娘にバイバイと言っていた。誰もが知らない人だった。すごく孤独な気がした。普段お母ちゃんといる時はたくさんの公園で出会ったりする同年代の友達と一緒にお弁当を食べたり遊んでこんな感じではないだろう。

とにかく今日は不思議で孤独で退屈だった。それはつまり何もストレスがなくて良かったという事だけど、風邪は少しひどくなったような気がする。今日は曇りだった。

 

屋外

 

第5話 またお会いしましょうね

 

朝起きると、妻が僕に「何で昨日の夜チーン!て言ってたの?」と言ってきた。

「チーン!ていうのは何かの音じゃなくて自分が声に出して言っていたの?」と聞いた。

そしたらそうだとの事。電子レンジ風に少し高い声でチーン!と言い、その時妻はチーンとは何か僕に聞いたらしいんだけど、その時僕は〜〜〜だからチーン!と言ってトイレに行ったらしい。そしてその〜〜〜がよく聞き取れなくて気になったので今僕に何でチーン!なのか聞いているとの事。全く覚えて無かったので覚えてないと言った。何だか面白いけど怖いなあ。

その後外に1人で出かける用事があったので、着替えて準備して娘にバイバイをした。すると娘は

 

「マタオアイシマショウネェー」

 

と言った。何だかびっくりして家を出た。

 

球

黒い小袋を落としながら同時に小さいボールを蹴る練習をしている。いつもわずかに上手くいかなくて、ずっとやらされている

 

第6話 楽しいキャッチボール

 

ある日の夕方、アパートの部屋の中で妻と娘と僕で何となくおもちゃのゴムボールをポーンと投げる、時間を潰すような遊びをしていると、最終的に妻と僕だけがとても速い球でキャッチボールをしていた。妻はキャッチボールがすごい楽しいと言って笑いながら涙をぽろぽろ流していた。涙を流すほど笑って爆笑していた。ただのキャッチボールで!僕もそれが面白くてすごく笑った。みんなが笑っているからか娘も笑ってくれていた。でも何だかすごく悲しくなって、でもやっぱり面白くて、やっぱり悲しかった。

 

心臓

一方で私はというと、コリコリした貝みたいな、センマイのようなものに包まれながら、隕石に胸を強打されたところなんだ

 

 

見て頂いてありがとうございました!次回はまた来月第二水曜日に何か更新したいと思います。宜しくお願いします。

 

 

木澤 洋一

木澤 洋一

ふと思いついた事や気持ちいい事や、昼間に倒れてしまいたいような気持ちを絵にしています。

Reviewed by
kie_oku

木澤さんの文章は、時間と言葉がどちらもぐんにゃり歪んだ状態で組み立てられている。
ひとつめ、時間(リズムとスピード感)の問題。
木澤さんの話し言葉と書き言葉が入り乱れる書き方は、突然アクセルを踏んだかと思えばギャッとブレーキをすることもあって、なんとも予想がつかない。
視点の切り替えも容赦なくて、例えばサファリパークみたいに車の中から夢の世界を眺めているのかと思いきや、いつのまにか夢の外から全体を俯瞰していた、みたいなことを平気でやってのける。
読む側としては、いつどこに連れていかれるかわからない心地よい不安とワクワクを同時に抱きながら読み進めることになる。

ふたつめ、言葉の問題。
木澤さんの文章には、誰にでもわかる言葉が、聞いたことのない組み合わせでちりばめられている。

・「スロー」な「弾丸」
・「カメ用のお肉」
・「出産」と「タイムスリップ」
・「シャボン玉」と「幽霊」

こんな言葉の並びに、生きていてはじめて出会った。
言葉って使い古されていく中でなんとなく背負ってきたイメージがあるはずだけど(弾丸は速いとか冷たいとか鋭いとか怖いとか)、他の言葉との組み合わせがおかしなことになると、まったく新しいイメージの可能性が開けてくるんだって気づく。
弾丸って、かつてスローだったことってあったっけ?
シャボン玉みたいな幽霊っているんだっけ?

ときどき挿入される絵が、浮遊するイメージをよけいふわふわな状態のままにさせる。
娘さんの声が遠くから耳元に響く。
彼女の声だって、夢から醒めさせてくれるようで、また別の夢へ引き込むちょっとした合図にすぎない。
着地しそうでどこにも着地しない、不穏なお散歩みたいなお話。

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