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Do farmers in the dark(37)

Do farmers in the dark

前回までかっこいい名前の登場人物が何人も登場する物語を描いていてその途中だったのですが、すみません、本当に毎度の事で申し訳ないのですが、大盛りのご飯を食べて寝てしまう日々の連続で続きがうまく書けず、今回は展示の告知と日記を載せさせて頂きます。すみません、よろしくお願いします!

夏、願い叶う

ああ、今まで生きてて良かった。こんなに素晴らしい出来事が私の、私たち家族の身に起こるとは。

朝起きたらさ、私たちのアパートの前、ほとんど敷地内に清涼飲料水の自動販売機が出来ていたんだよ!玄関から5秒で行ける場所に!

新品の綺麗な綺麗な綺麗な自動販売機。いつも何かが足りないと思っていた。それはいつだって自販機であり、この瞬間をずっと待ち望んでいたんだ。しかしそれは叶わない、あり得ない願いだと思い必死に忘れようとしていたし、実際綺麗さっぱり忘れていたんだ。まさかこんな事があるなんて!本当に驚いたよ。昨日まで全く自販機の気配は無かった。全くだ。朝起きて部屋の外に出ると、突然、全く突然に自販機が我々のアパートに現れたんだ!私は人生について完璧に悟った。人生とはただその場に留まりあくびして食べて寝てぼんやりしてれば何もかもが、全くの何もかもがうまくいくと。そうしていれば強大なる運命の力が味方して、住んでいるアパートにピカピカの自販機を届けてくれると。しかもその自販機は相場より多少安い価格設定だった。ポカリスエットが売っている。水が売っている。甘いコーヒーが売っている。その他見たことあるような、無いようなよく知らないジュースやよく知らないコーヒー、よく知らない茶が売っている。私の潤沢な資金力があれば今すぐにだってそこにラインナップされる全ての飲料を1本ずつ買う事だってできる。今すぐコーヒーをがぶ飲みした後に間髪入れず茶をガブ飲みして、その後一呼吸おいた後によく知らないジュースをがぶ飲みして、もう一本訳の分からんジュースをがぶ飲みした後にまたコーヒーをガブ飲みできる。

私達家族の会話は早速その自動販売機の話題でもちきりだった。

「ねえねえ、自販機見た?」

「聞いてよ!自販機が出来たんだよ!」

「めちゃくちゃ嬉しい!」

「中々いいラインナップだね」

「ピカピカだあ!」

「イェーイ」

「ウォ〜」

「ヤッホー」

そんな中、ハッと恐ろしい事に気づく。私は家族みんなで自販機について話して盛り上がっていると思っていたのだが、聞こえて来る嬉しそうな声たち、それらは全て私自身の声だったんだよ。

いつの間にか私は1人で喋っていたんだな。ついでに喜びの踊りもしていた。その時私は半裸だったよ。

妻と娘は、少し言葉を返してくれたが、どうやらそれぞれ何か他の自販機の話より重要な事をしているようだ。妻は自販機に対して、ゴミ捨て場が狭くなったと少し後ろ向きな感想を言った。私は妻に、おいおい、おまえさんはいつも一緒に出かけると横目でチラチラチラチラ自販機ばかり見てるよな?知っているんだよ?横目でこっそりと自販機を見ているのをね。そしてその値段やラインナップを入念に確認しているんだろう?自販機大好きなんだろう?待ち望んだ自販機が家の前にあるんだよ?やばいよ最高だよね?と捲し立てた。妻は、わたしの事をそんなに自販機大好きな人みたいに言わないでよ!と言って少し怒った。内心ではもっと怒っていたかもしれない。娘は、自販機の事は知ってるよ。父ちゃん今更?ポカリ飲みたいなあ、と言っていた。私はその日も、その翌日も、その翌々日も自販機が出来た嬉しさを家族に話していた。その間ポカリや、水やらを2、3本買った。自販機が出来てしばらくたった今でも、私はその自販機を心の底から愛している。

しかしその愛する自販機は、私が1番欲しい飲料、蓋付きの微糖コーヒーを売っていなかった。そこが大変残念だった。

でも安心したよ。あまりにうまくいきすぎると心配になっちゃうから。

会釈マシーン、それかまるでマシーンのように会釈をする人

心(こころ)に招き入れる

さて、まさしく快晴の9月23日(日曜日)、たまに吹くヌッタリと、もったりとした温風のまっただ中で私は鶏モモ肉、ただそれだけを買うためだけのために、かの有名な外資系のスーパーマーケット「西友」へ徒歩で向かっていた。アツアツのアッチッチのコンクリートを踏みしめる私の足にギュンギュンにフィットするスニーカーはあまりに確かな品質の台湾か中国か香港かの有名ブランドのスニーカーであり、それらを力強く動かしている私の太ももはカモシカか蝦夷鹿のごとく、はたまた怒り狂った種牡馬か繁殖牝馬のごとく逞しい筋肉をしており、その怒り狂う種牡馬的、繁殖牝馬的太ももとは全く対照的に腰から上、上半身はまるで筋肉がついておらず痩せっぽっち、しかしお腹だけがポヨヨンポッコリぷるぷるとたわわに実っていた。そのたわわなお腹は擦り切れたというほどではないが、多少擦り切れたイミテーションのジーンズにポロロンと乗っかっており、そこにベッタリした汗でねっとりと張り付いた白いTシャツは¥700というまさに心底妥当性のある値段で買ったTシャツだったんだ。その時私は我こそはまさにTシャツを着た痩せた胃下垂のケンタウロスそのもの、という感じだったよ。髪型はスポーツ刈りだったので、それはまさにTシャツを着た痩せたスポーツ刈りの胃下垂のケンタウロスそのものだった。

そしてあたりはグレーの建物4割、人1割、地面2割、青空3割という風情で、あまりの情報量にめまいがするかと思いきや同じ景色を何年も見ているためか全くめまいはせず、いつ天に召されてもいいかのようなあまりにも穏やかな心持ちで歪んだ含み笑いをしながら先程説明した太ももの筋肉をふんだんに使い足音のしない歩法、いわゆる一般社会に潜む忍者の末裔的なニュアンスの歩法で、鶏肉を買うために、できれば小骨の少ない柔らかい鶏もも肉を買うために西友に向かっていた。私はまるで忍者の末裔的かつTシャツを着つつスポーツ刈りをしつつの胃下垂のケンタウロスのようだった。

そんな中ふと気づくと、私はショベルカーという言葉を私の心に招き入れていた。

まさに忍者の末裔的な胃下垂のケンタウロスである私の心は繰り返す。ショベルカーは黄色い、ショベルカーは黄色い、ショベルカーは黄色い。と。

ショベルカーと黄色の繰り返しの中、ふとよからぬ思いが私の心をチラリとかすめる。もしかしてショベルカーはモスグリーンだったでしょうかね?と。

ショベルカーは黄色いという何度も何度も繰り返していたショベルカーと黄色の揺るぎない結びつきが、ズルズルズルリンとある種ちん妙な摩擦音を控えめに、しかし頭蓋コツにしっかりと響くよう出しながらほどけてしまいそうだった。だがやはりモスグリーンの重機は十中八九、ショベルカーでは無い何か別の重機だろう。それゆえその刹那私の心にショベルカーの同類であるブルドーザー、タンクローリー、ダンプカーも舞い込んできて、いったいぜんたいどれがどのような色や形状であるのか全くもう思い出せなくなっていた。心が代表的な重機で満たされた瞬間だったな。そして私の心を満たしてくれた重機たちそのどれもが、全くおぼろげでどんな色、形か分からなかった。

そしてたった今携帯で画像検索をした結果、結局のところショベルカーの色はもっと多彩で黄色が多いけどモスグリーンやオレンジや黒、水色の個体もあるようでした。

ところで心とはいったいどこにあるんだろう?脳かな?それとも全身かな?または周辺50メートル全域?はたまた飛び散って地球上のありとあらゆるものと混ざり合っているのかな?どうか皆さまが湿ったフワフワの土そのもののような穏やかな心でありますように。

上空からやって来てくれた3匹の虫のような天使

12月3日まで展示をしています

新中野にあるgallery café NICCOにて展示をしています。

日曜日は休みですが、最終日の12/3(日)だけギャラリー開いています。

詳細です↓
詳細

木澤洋一作品展

ドローイング、皮を剥かれている浮遊りんご

会期

10/31(火)〜12/3(日)

場所

gallery café NICCO

〒164-0012 東京都中野区本町6丁目26−8

Instagram→https://www.instagram.com/gallery_cafe_nicco/

新中野駅徒歩3分の毎日違うお店が楽しめるギャラリーカフェです。月や日によって営業時間が変わりますので、お手間ですが添付したお店のスケジュール写真を確認頂けたらと思います。

木澤 洋一

木澤 洋一

ふと思いついた事や気持ちいい事や、昼間に倒れてしまいたいような気持ちを絵にしています。

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