やんじゃえばいい夜

第4期(2012年8月-9月)

 
 
夢の中で爪切りをなくした
 
 
別に大切にしていたわけでもないし、

大切な人からの贈り物でもなくて。

それなのに夢の中の私はたいそう不安がって

身振りなんか考えずに落ち込んでいた
 
 
喉が乾いて目が覚めた

夢を引きずって不安定な私は

また目を閉じる、真夜中に。
 
 
真っ暗になった私だけの世界で、

主人公もヒロインもぜんぶぜんぶ私の世界で。考える
 
 
夜が嫌いだ

毎日必ず夜がやってくることに、

私は納得していない。

夜は嫌いだ

わがもの顔でやってくる夜が大嫌いだ

バイト先のスーパーに来る、いつでも被害者面してるおばさんみたいだ。

毎日降り続くんじゃないかってくらいな梅雨の雨みたいだ。

夏は日が長いからまだいいじゃんとか そういうことじゃなくて、

それでもしぶとく毎日夜はやってくることが嫌なんだよ。

夜も雨みたいに いつかやんじゃえばいい、と思う。
 
 
目を開けると、

枕元のラックの所定の場所に、あっけなく爪切りは、居た。

私の爪は伸びていなかった。

この爪切りをなにかしらに使いたいと思った。

なんでだかそう思った。
 
 
パジャマ代わりにしているTシャツの袖から

ほつれた糸が一本出ていることに気がついた。

それを爪切りで切り落とすことにした。

左肘を頭の前くらいまであげるようにして、

爪切りで糸を切った
 
 
爪を切る時の威勢のいいクチンとした音は鳴らず、

無音で糸は切れた

切りたかった場所より少し手前で切れてしまって、

残された糸は、なんだかまぬけだ。
 
 
爪を切るために開発された

爪を切るしか能のない爪切りのことを、

私は羨ましく思うし、

うとましく思います。
 
 
私も何かのために開発された、

それしか使い道の無い何かになりたかった
 
 
学校に行ったり、

アルバイトをしたり(レジを打ったり愛想笑いをしたり)

漠然と不安になったり

誰かに嫌われたり

違う誰かに優しくされたり

あの人に優しくされたかったり

そういうんじゃなくて もっときっぱりしたやつがよかったよ。
 
 
残り少ない夏休みの間に、

なんか少しでも納得できるようになれるかな。

夏休みの宿題がいまさらひとつ出来てしまった

左脇のまぬけな糸と一緒にがんばってみよう
 
 
今日の夜がやんだら、

爪切りを使えるくらい

私の爪が伸びてるといいな