みんな偽物の音で出発するくせに

第11期(2013年10月-11月)

 
 
頬んとこが
 
ぴって冷たかった
 
ほてってるから、なおさら
 
 
いつもの線の終電に まにあわなくて
 
中央線に乗り込んだ
 
電車には線路っていうわずらわしいものがあるからさ、
 
あたりまえだけど私を最寄り駅まで運んでくれなかった。夜
 
 
少し遠いけど
 
歩いて帰ろう
 
 
雨だとわかってから
 
これは降りだすかもしれないと思ったときから、
 
ずっと雨は、降ってはこない
 
いまにも降りだしますよと言って私を牽制しているみたいだ
 

よーいどんっ!
 
って言ったらスタートねって言う
 
いぢわるなお兄さんみたいだ
 
 
あの、スターターの持っているピストルが、
 
もしも本物のピストルだったら、
 
空に当たるな
 
空、死んじゃうかな
 
 
くだらないか。
 
 
それなら、こんなのはどうだ
 
夜空に光る星たちはさ、
 
世界中のよーいどんから飛び出た銃弾ですよっていう
 
だってほら。星の大きさもここから見ると銃弾くらいなものだし
 
 
 
今日は飲んでしまった
 
 
 
「飲んでしまった」だって
 
飲みたくて飲んだくせに
 
お酒のむといつも後悔している気がする
 
後悔したくて飲んでるのかな
 
そうだなきっと、そうだ
 
ふてくされていたいんだよ私は結局。
 
不良の中学生みたいなものか
 
 
いいから早く降るならふれよ
 
 
気持ち悪くなってきた
 
 
でも、きょうの私は強気だ
 
せっかく飲んだんだから虚勢ぐらいはらせろよ
 
って、
 
いま私は強い
 
強い今日はすごく強い強い
 
強い強い
 
って、思って。

うわほんとに気持ち悪いって思ってたら涙が出てきた
 
とまって両膝に手を置いてアスファルトにむかってさ
吐いたゲロの中から愛引っ張りだしてまた飲み込んでやるし、さよならの四文字のどの音のせいでさよならはいつも予想以上に悲しいんだろうとか思ったり涙とゲロ混ざったらすんごいしょっぱいんだろうなとかほんと、どーでもいい!
どしゃぶりの中で
 
狂ったみたいに
 
狂ったバージョンのショーシャンクみたいに
 
思い切り叫びたかった
 
 

 
 
雨がやんだみたい
 
 
 
 
 
 
   降 っ て よ
 
 
 
 
 
 
 
降らないならさ
 
 
降りますみたいなふうにしないでよ
 
 
 
  
星でもなんでも見えてればさ
 
 
いや別に星なんて好きでも嫌いでもなくて
 
 
ただそれが見えてれば、ああ今は晴れてるんだっていう
 
 
そーゆー指標みたいなためだけにあるんだ
 
 
そう思うと笑えてくる
 
たとえばカップルが何組も何組も草原に寝転んで
 
星空に夢うかべてるとこにさ、
 
私は傘さしてそこに一人でいるのね
 
傘は、お気に入りのやつで
 
けど、その傘とても素敵ですねなんて一度も誰にも言われたことない傘で
 
私はその寝転んだカップル達のとこをすり抜けるように歩いてく
 
でも私はカップルたちが何をしてるのか知らなくて
 
何が楽しいのかわからなくて
 
それでもみんなが空を見てるってことに気付いた
 
私も傘を下にして空を見上げて
 
 
星だ
 

 
雨、降ってないや
 
ってことに気づいてただそれだけ
 
 
 
ははっ。
 
 
 
 
私はいつも被害者だ
 
 
加害者なんかいないのにいつだって被害者だ
 
 
 
 
 
よーいどっん!
 
 
 
 
勇気を出して
 
けっこう真面目に叫んでみた
 
 
 
って言ったらスタートねって、
 
 
 
今度は心の中で
 
  
わたしは私に優しく言った
 
  
 
 
 
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