とれた左手で腕枕

第18期(2014年12月-2015年1月)

 
 
 
夜中にぼくだけ目が覚めた
 
ぼくの左腕のうえで女の子が眠っている
 
なにか変だなと思って
 
じぶんの左腕に触れたらさ、
 
すごく冷たくて、感覚がなかった
 
ぼくの腕はもうぼくのものじゃないみたいだった
 
知らない人の腕が、ぼくからのびている
 
あれ? と、思う。
 
じゃあこの子、誰の腕を枕にしているんだろう
 
誰でもいいんじゃんね、
 
たまたまきょうは僕だっただけのことだ
 
みょうにけがらわしく思えた
 
 
 
そのとき、彼女が目をあけた
 
彼女はぼくを見つけた
 
ぼくも彼女の目を見ていた
 
ふたりの間に空気も感じないくらいにぴったりと目が合った
 
それでさ、
 
ぼくは世界のなによりも汚い愛想笑いをしたんだあのとき、
 
 
あの日から、ぼくの左腕は本格的にぼくの左腕じゃなくなってしまった
 
 
ぼくはその左腕に言う
 
今年もお世話になりました、という。
 
これ言うとき、いつも思う
 
なんか恥ずかしいだけで、伝えたいことがひとつも伝わらない
 
だからぼくは言い直してみる
 
はじめまして、左腕。
 
さようなら、ぼくの左腕。
 
 
 
左腕の感覚は なくなったのに、
 
ぼくはぜんぜん軽くならない
 
閉じない 今年 がぼくのなかでぐにゃぐにゃうごめいていく、
 
身勝手にあける来年が、
 
あの夜の女の子のまっすぐな眼差しみたいに
 
ぼくをじっと見つめている
 
ぼくは逃げるように歩きます
 
偏ってしまって、
 
少しずつ右にそれながら
 
 
 
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