わたしの

第25期(2016年2月-3月)

 

 

[男1は動きをとめる]

 

いまね、ぜんぜん違うこと考えてる

がまんしてんの?

うん

ははっ、 なに考えてんの?

え? なんだろ、ウクライナ情勢

なにそれー?

なるべく関係ないこと考えないとダメっぽいんだもん

社会派じゃん

こういうの社会派って言うんだっけ

たぶんね

この分だと朝になるころには、どっかのコメンテーターくらいにはなってるぜきっと

かもねー

 

[届くところにある缶ビールを手にとる男1]

 

自分だけずるいよー

飲む?

うん

 

[ビールを口に含み、女1に口移ししてやる]

 

まだ考えてるの?

なにを?

なんだっけ、世界情勢みたいなやつ

ああ、忘れてた

 

[動き始める、男1]

 

あーだめだ。やっぱだめ。

 

[動きをとめる、男1]

 

だめだ、世界情勢よか〈女1〉のほうが強いわ。目え閉じてても出てきちゃう。

もういいってべつにがまんしなくて。

ごめん。だって〈女1〉やわらかいんだもん

 

 

なんか急に思い出した。

あの人の声も顔も思い出せるけど、

なんなら大きさとか匂いとかもなんとなくおぼえてるんだけど、

名前が思い出せない

まあ別に興味もないけど

てゆーか、あいつ誰だよ

 

私のこと、なんて呼んでたっけ

わたしがあの人のこと思い出せないのとおんなじで、

わたしのことを思い出せない人は

世界にいったい何人くらいいるんだろう

なんだか胸が崩れそうになる

 

わたしのこと、なんて呼んだっけ

 

わたしは、なんて呼ばれたいんだっけ

 

 

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