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2F/当番ノート

世の中お金じゃないけど、お金じゃないですか。

当番ノート 第32期

※「じゃない」のイントネーションに注意

みなさんはより安い物を選びたいですか?

そりゃ同じ何かを買うなら、より安いものを手に入れたいと思うし「格安」とか「お得」とかそんな言葉に目がいってしまう。お金は出来るだけ使いたくないし、無料より安いものはないってよく言うし。私もそこまで裕福なお家ではなかったので、というより母から「うちはビンボーだからね」と教え込まれて育った故(多分母の戦略にまんまとのってた)、節約・節制が当たり前だと思って生きてきた。今もほとんどの時は私もそう思う。しかしここ最近、お金は大事だからこそ大事なものにきちんと使いたいと思うようになった。

雇用形態を問わずも(バイトも社員も)会社に属して働いていると何となく感覚が薄れてしまう可能性もあるし、逆に仕事で日々感じている人もいるかもしれない。例えば飲食店だと、家賃がいくらで出てくる料理の原価はいくらくらいで、すなわち滞在時間1時間に対して大体どれくらいお金を使えばお店として利益が生まれるのか。細かく正確な数字を出したいのではなく、その事をふと考えるきっかけがあった日から、居酒屋なら「お酒飲んでなんぼだなぁ」とかカフェだったら「打ち合わせささっと終わらせて1〜2時間くらいでお店を出よう」とかなんとなくお店のちょうどいい程度を見計らうようになった。”お客なんだからそんなこと考えなくていい”と思う方もいるだろうけれど、単純にそのお店をまた利用したいと思うのであれば、少なくとも私はそうしたいと思う。

この事を自分の身に置き換えて考えてみた。私が作る音楽や、それらを披露し共有するライブという体験。広い意味でのこの体験というのは、その原価に値するものが目に見えづらいと感じる。簡単に言えば「音楽っていくらくらいかかっているの?」とか「ライブって数時間なのに何千円もとるの高くない?」と疑問に思う人も少なくないのではないかと感じる。先ほど述べた通り、具体的な数字の話をしたいのではない(と言いながら具体的数字の話もいつか出来たら面白いかなぁ)。それこそ相場なんてものに振り回されている感じが一番大きい気もするが、音楽やライブが好きな人間の1人として声を大にして一つ伝えたいことがある。

まず”音楽”はその音源(CDやデータ)自体の価格だけではない事を知ってほしい。音楽自体は聞いているその場の空間や聞く人それぞれの感情に変化を与え、それをも越えてその後の人生に大きく影響を与えることだってある。特に”ライブ”はその影響力がとても大きくて、その日の経験や記憶がそれ以降の日々を支えてくれたり、見える世界を輝かしいものに変えてくれる力を持っている。私は幾度とそういう場面に出会ってきた。前回の話にも出たAIさんのライブもその一つ。

そして約8年前、今では世界で活躍しているONE OK ROCKのライブに初めて行った時の衝撃を今も忘れられないでいる。まだライブハウス(キャパ2000人程度)でのライブで、縁あって見に行くことになった。ほとんど曲も知らない状況だったが、ライブ終えて帰る頃には着ているTシャツがビショビショになるほどに汗をかいていた。演奏はもちろん、何より印象的だったのはメッセージ性の強い楽曲とヴォーカルの歌。いわゆるROCKの”うるさくてただ騒がしいもの”というイメージを覆してくれた。心に響く歌と音。自然と体が動いて、全力で彼らの音楽を体感したあの空間を、今でも鮮明に覚えている。彼らは全ての音に全力で、ライブは本当に”LIVE”だった。本当に、替えのシャツを持っていくべきだった(ぞれだけが悔い)。

彼らの作品に「人生×僕=(人生かけて僕は…)」というアルバムがある。あるインタビューでタイトルに込めた意味を語っていた。それは、彼らは人生をかけて音楽をやっているという事、そしてこれからも「生きろ」というメッセージを音楽を通して伝えていくという意思表明の一枚だった。音楽は娯楽と捉えられがちでそれも間違いではないけれど、モノを作る人はいつだって全力だし、人生をかけている。その熱が直で届くのがライブであるし、小さな画面でゆーちゅーぶ見るんじゃ絶対に届かないんだよこの熱は。(ゆーちゅーぶ見るけども)

世の中はお金じゃないと思う。だって、こうやって心を動かし感動を生み出しているのはどんな時も人のパワーだから。でも、その”感動”をいつまでもこの世に残していく為に、自身の大事だと思うものや続いていって欲しいものには、きちんとお金を使っていきたい。

音楽やライブを通して、日々がちょっとでも変わったという経験をしたことがある人が、これを読んでいる人の中にもきっといるんじゃないかなと信じたい。

そして、今までライブや、いわゆる生演奏を聞いたことがない人が聞きに行くきっかけになってくれたら最高に嬉しい。

まだの方、5/10(水)夜にいいライブがあるって噂ですよ。




●5.10(水)@渋谷 LastWaltz
【”ハダカ”になってもいいですか?】
出演:粟生田水葉
18:30open/19:00start/charge2800円(+1Drink)
※各SNSにてご予約受付中

粟生田水葉

粟生田水葉

粟生田水葉(アワウダミズハ)

1987年生まれ。東京都出身。

うたを作って歌っています。
たまにちょっと踊ります。
美味しいものと人が大好きです。

Reviewed by
猫田 耳子

占い師は恋とお金についての話をすればいい、だってその二つについて悩んでない人などいないから…なんて皮肉な話もあるほどに、恋とお金について語る人はあまりに多い。
「お金で買えないものはない」なんて大きな声を出し、強く批判を浴びた人が少し前にいたけれど、わたしは彼のこと嫌いにはなれなかったなあ…だってちゃんと今の社会の波に乗っかろうとしていただけじゃないね?

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