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2F/当番ノート

高千穂 お籠もり。

当番ノート 第22期

杉田廣貴

お籠もりへ行ってきました。

今回、お籠もり自体は1人で行なったのですが、

映像制作の会社をされている関根さんに映像を撮っていただくことになり、熊本からご一緒しました。

もともと、ALLWAYS三丁目の夕日や、アンビリーバボーなどの映像制作会社に勤務されており、

3年前に独立され、実際にお会いしたのは先々月。

意気投合し、これから一緒に映像をあつかった作品を創りましょうね!と打合せをした際、

高千穂でのお籠もりの事をお話したら、映像を撮りたいと、ご一緒くださいました。

今回の写真も、関根さんが映像の一部を切り取ってくださり、使用しています。

本来はお籠もり禁止の場所です。

撮影も禁止。

そうした場で、一晩を。

緊張感とワクワクでいっぱいになりながら、熊本を出発し、向かう道中は、大雨。

神様からの洗礼?

熊本からでも2時間半はかかる場所。

雨、雨、キリ、雨。

私は基本、雨が大好きなので、全然大丈夫。

浄化してくれてるんだろうなぁとニコニコしながら車を運転。

墨に扱う水もこだわりたくて、途中にある弊立神宮の湧き水をと寄ったんですが、着いたのが19時くらいで、ちょうど暗くなるちょっと前の薄明かりの状態。

この明るさなら、いける!!と、

車を停めに行ったら、霧に覆われた森になってて、

2人で、『ひぐらしの泣く〜』っていうホラー映画をイメージできちゃうほど、恐ろしい感じに仕上がってまして(T===T)

充電してきたという映像機器もまさかの「Goodbye」と出て、バッテリー切れする神業をくらい(あれは怖かった)

ますます怖くなった私たちは、前の見えない霧を越えて水を汲みにいくのは、断念しましょうとなりました。

たぶん、あれ行っちゃったら、2人して神隠しにあってたかも(涙)

気を取り直して、高千穂へ向かう。

さらに霧が濃くなる、高千穂への道のり。

さっきの恐怖心で、どうも自分がドキドキしていて、これをさまそうと、ジブリの音楽家で知られる久石譲さんの「菊次郎の夏」のサントラをかけて、心は一気にトトロに変化!(笑)

ジブリの世界に飛び込むんだ〜なんて、30代の男が運転しながら言う様は、あまりに滑稽だったに違いない(笑)

高千穂に着いた瞬間、今までの霧がウソのような町が出てくる。

ホームワイドや、コスモスドラッグ、ファミリーマート。

私は知っているからいいですが、関根さんは初高千穂で、拍子抜けしてました(笑)

パラダイスに来たみたい、と。

霧を越えてみたら、町が出てくるから、まさにジブリのような世界ですよね。

神社に着き、挨拶をすると、宮司も快く迎えいれてくださり、お酒まで用意くださり、宴会モードな流れ(笑)

しかしながら、今回の目的はお籠もりですので、ご飯を食べて、お籠もりをしましょうと、お酒はお神酒として2杯いただいただけとなりました。

初高千穂の関根さんには高千穂夜神楽や温泉を堪能してもらい、22時くらいにご飯を食べ、運転に疲れた私は、一時休憩。

丑三つ時をこえ、2時よりご神体のある社殿に入り、そこから朝7時まで籠り、書の制作をいたしました。

杉田廣貴

杉田廣貴

さっきまでのラフ感が嘘のように、スイッチが入ったらやる男です。

ただひたすら1枚1枚に精神集中して制作を続けました。

最初の2時間だけ、関根さんも入って映像を撮ってくださったのですが、

息をのむような緊張感だったと仰っていました。

ご神域なのか、1時間だけしか書いてないと思っていたら、2時間経っていたという。

先日の「すべては波である」で書いた【時間も波だ】という体感が。

その後は、1人で制作を続け、ご神体と会話しながら、自分と向き合いながら。

ただただ、制作を続けました。

すごく、あっという間だったというのが今回の感想です。

2時間が1時間くらいに感じてしまうくらいなので、あっという間に朝になりました。

ちょうど1日参りの日で、ご神体を前にして制作している後ろのほうで、参拝にこられた方が朝からやってきていました。

お参りをする方の中で、祝詞をあげる方もいて、背中から祝詞を聞きながら、書を制作する体験は格別でした。

今までの10年の感謝をこめて。

心をこめて、制作をしました。

今回の感想は、あっという間だった。

それだけですみません。

しかし、撮影側の体験は違ったものだったそうです。

音や映像、気候さえも、神演出のように感じてしまう内容だったと。

帰り際、神社の裏山にてインタビューを撮影していた際、私が「雨を感じて書いていた、、、、」と言おうとした瞬間、少しの間、止んでいた雨がまた降り始めたり。

それから帰り道。

行き道も、制作中もずっと曇りか雨だったのが、

先述した弊立神宮にまた寄って、今度はお昼過ぎにお水汲みに行ったんです。

そしたら、晴れ間がさしてきて、

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水を汲み終わって、車に戻る道の途中で、

完全に晴れちゃうっていう。昨日の霧が嘘のような、気持ちいい歓迎をうけました。

途中、天空の島にいると錯覚するような雲と出会ったり、

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極めつけは、

この景色。

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運転中、思わず、車を停めて、写真とりにいきました。

こうした神演出を最後は私も感じとる事ができました。

自然がずっと傍にいて、虫たちも歓迎してくれているような感覚にお籠もり中になったんですが、

最後まで自然が私と一体であるかのように、表情を魅せてくれました。

雨も、虫も、晴れも、雲も、ご神体も、木々も、土も、音も、空気さえも。

いつも私の傍にいてくれる。

私たち人間も自然から生まれてきてる。

いつから別と考えてしまうようになったんでしょうね。

彼らの波が心地よくて。

とても幸せなお籠もりでした。

だから、あっという間だったんだろうな。

近いうちに、

彼らの声とも対話できるように、書を制作するんでなくて、瞑想だけでお籠もりしに伺う約束をしました。

それがまた楽しみで仕方ない私です。

今日はこの辺で。

http://kokisugita.com/

杉田 廣貴

杉田 廣貴

1983年3月生 / 宮崎県出身。鹿児島大学工学部卒。6歳から剣道。22歳から書や言葉を媒体とした表現の世界に入る。『道』を究めることをライフワークとし、アートやデザインは生き方の一つとして考える。NYを中心にアメリカでの個展も行ない、海外での活動も大切にしつつ、2015年より日本国内での活動を本格化している。

Reviewed by
淺野 彩香

「雨も、虫も、晴れも、雲も、ご神体も、木々も、土も、音も、空気さえも。
いつも私の傍にいてくれる。
私たち人間も自然から生まれてきてる。
いつから別と考えてしまうようになったんでしょうね。
彼らの波が心地よくて。とても幸せなお籠もりでした。」

高千穂にてお籠りの様子をコラムにしてくださった、書家の杉田さん。
神様の近くで創作するというのはどのような気持ちになるものなのでしょうか。
よく創作におけるインスピレーションは風のようだと言われたりします。
おそらく西洋ではキリスト教の影響から、神の息吹、風によって人もものも生み出されたという考え方があるからなのでしょうが、確かに言葉が浮かぶとき、何か風のようなものを感じることがあります。
杉田さんのお籠りは、おそらく自然と一体化して行われるものなのでしょう。
風だけでなく、自然と一体化して行われる杉田さんの創作風景をのぞき見られる貴重なコラムです。

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