画家

第38期(2018年4月-5月)

54CE1F6F-BD29-4CC7-A3F1-9628B9FEEE751年間 師を持ち絵の修行をした。
その人は、現代美術家の肩書きを持っている人。
私は、今まで誰からも絵を教わった事がないため、好奇心を持ちながら、その人に弟子入りをした。
仕事を辞めて、無職になったのだ。
勿論、弟子入りするまでに色んな事を悩んだ。
当時の私は、子供を対象とする仕事を慣れない環境の中で働いていた。子供は好きだったが上司とうまくいかずストレスを抱える一方だった。絵は好きだったが、絵で食べていけるわけがない。という気持ちが強く諦めて、ごく一般的に働いていたのだ。
その仕事をして2年目の時、そろそろ限界が来た。楽しさがなくなってしまい、日々過ごしている事に苦痛を感じてしまった。
ふと、数年前に知り合った画家さんの事を思い出した。話をしに行った。何か変わるかなど期待せずに、ただ絵に対してのモヤモヤな部分と、絵の世界について知りたかったから。
3年ぶりぐらいに電話をした。その人は、私の事を覚えてくれていたのだ。会って話をしにいった。その人は画廊喫茶をしながらアーティスト活動をしていた。
その人に会いに初めて画廊喫茶に行くと、とても世界が違って見えた。カランコロンとドアを開けると世の中と違う場所のように思え、流れている時間が違うのだと感じた。アンティークの家具に囲まれ、薄暗い照明、とてもゆっくりとした時間の中で、他のアーティスト仲間たちと、たわいもない話をしている。その人の足元には1匹の大きな黒い犬が寝ており、また当時は冬のため暖炉が炊いてあった。客席とアーティスト仲間たちとの境界線はなく、その人も客席でコーヒーを飲みながら丸い古めいた木のテーブルには絵の具や筆が雑に置いてあった。
私はあまりにも想像と違った世界感に戸惑った。なにせ、そに日は仕事帰りに会いに行ったため私はスーツにビジネスバッグを持っている格好だった。世の中では馴染む格好でも、その場所ではあまりにも違和感があったのだ。
コートを脱いで、ソファに案内されたため座っていると犬が来た。とても優しく私に近づき匂いを嗅ぐと私の横で静かかに寝た。
耳をすませば。等に出てくる世界が実在するのだと辺りを見渡しながら考えていた。壁にはセンス良く飾られた絵。アトリエにも使っているようであちこちに画集や画材がランダムに置かれ、それがオシャレに見えた。
しばらくすると、その人が私のところに来た。
私は言葉で説明する事が苦手だったが、それなりにモヤモヤを話した。
その時の、その人の言った言葉は私を今でも支えてくれている。
(画家は(描く)世界ではトップにいる。漫画家、デザイナー、イラストレーター、設計士など世の中には色んな職業があるが、みんな画家の下にいる。それは世の中に合わせた生き方をしているからだ。画家は、自分が描きたいものを描いて、それで生きている。漫画家やイラストレーターからすれば、それが憧れで、しかも憧れで終わってしまったから今の職業についている。その人たちから見ると画家は尊敬される立場にいる。)
私は、何も考えられなかった。ただその人と話をして楽しかった。