画家③

第38期(2018年4月-5月)

私の絵が初めて価値を生み出した時の話。
絵の修行で、成長する方法の1つとして私は(似顔絵)を描く事を指示されていた。
先生の考えた(ecoart)でダンボールにその人の雰囲気を描く絵だ。
先生の元で修行をして間もなくして、このecoartの練習を始めた。これはとても難しかった。今まで絵を誰にも習ったことのない者からしたら、未知の世界で何をどう描けば良いのか分からず、ただ真似をして吸収するしかなかった。
描いては修正され怒られる。もう師弟関係になってからは、初めの優しい先生はいない。完成を引き継ぐ者として見られ、とても厳しかった。
画廊喫茶には色んなお客様がくる。
この日も、ある夫婦が来てくれた。ここに来たのは初めてで、とても気に入ってくれたようだ。
30代ぐらいの奥様が、似顔絵の案内を見て依頼をしてくれた。といっても先生の描く似顔絵の依頼なため私はそれを後ろから見ているだけ。
ところが、その奥様は私が真剣に絵を見ているため興味を持ってくれた。話た結果、練習用に先生が描いている横で私も描くことになった。
練習ようなため怒られないように、今まで言われて来た事を思い出しながら描いた。
自分でもお金にならない絵に仕上がった。先生の表情を見ても同じ意見だと感じた。
先生の絵が仕上がると、奥様は感動していた。私は絵が好きなため、早くその感動を伝えられるようになりたいと思っていた。
これで帰ると思っていたが、奥様は私の絵にも興味を示してくれた。(絵をみせて?)。私はとても見せるのが嫌だった。見せると失礼になるような出来だったからだ。
先生の顔を伺うと、(見せなさい。)と言っているかのような頷きをしたため、私は奥様へ見せた。
(描いてくれたのでお金を払います。)と言ってくれた。私は(まだ修行中なため、お金はもらえないんです)と伝えた。先生も何も言わなかった。ただ他のお客様と話しているだけだった。すると奥様は、(じゃあこれと交換してくれない?)と1つのオレンジをテーブルに置いた。
私はびっくりしたが先生は(交換してもらいなさい)といったので、絵をお金をもらう時と同じように包み奥様へ渡した。奥様は(有難う!将来を楽しみにしているわ)といって受け取ってくれた。
私の描いた絵に初めて価値が生まれた時だった。自分の描いた絵に価値が生まれたことなど無かったため、とても衝撃的な経験だった。(プロとして絵を描く)とは、こういう事なんだ。と未熟ながら感じた日だった。
その次の日から、私は先生の指示でストリートで描いてこい。と言われたため描く事になる。5FC5D5FF-A951-4EE0-A08F-CC0C593D717C